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イベリア半島「百鬼昼行図」 その5:米西同盟の仕掛け人?オプス・デイ (2)米国中枢部に食い込む「バチカン=オプス・デイ」
http://www.asyura2.com/0401/war46/msg/556.html
投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2004 年 1 月 13 日 09:03:09:SO0fHq1bYvRzo
 

イベリア半島「百鬼昼行図」


私がこのアメリカ・イギリス・スペインの「3馬鹿連合」の裏を洗う作業を始めたときには、オプス・デイについてここまで調べる気はありませんでした。このカルト集団のことは以前から知っていましたが、せいぜいフランコ政権で幅を利かせた半秘密組織、中南米でゴソゴソと悪事をたくらむクソ坊主の集まり、という程度にしか考えていませんでした。ところが、イラクに進出する予定の非政府組織NGOの中にこの集団の系統のものが混じっていることを発見したのがきっかけで、詳しく資料を集めてみますと、もう収拾がつかなくなるくらいさまざまな事実が明らかになってきました。

というよりも、スペイン語圏ではすでに多くの人が指摘していたことなのでしょうが、それが英訳されて世界に公表されたり、さらに日本語になって紹介されたりした数があまりにも少なかったのでしょう。英語で書かれた資料も数多いのですが、やはりアメリカにある反対派カトリック団体のものが多いようです。

近年、プロテスタント系原理主義やユダヤ・シオニズムは注目されていますが、カトリック系原理主義のことは多くの人の視野にはあまり入ってきていないようで、それらの情報を翻訳して広める作業を地道に進める人間が必要ではなかい、と思います。

ただ、私の特に優れているわけではないスペイン語や英語の能力でそれが適切にできるかどうか、はなはだ心もとなく、本当はもう少し適任の人がいてくれたら、と思いまが、当面は何とか孤軍奮闘するしかないかもしれません。その間、私の分かりにくい訳に悩まされたり、なかなか調査が進まず明確な結論も見通しも出せないことにいらだつ人もいらっしゃるかもしれませんが、ご容赦願います。

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前回は、フランコ独裁時代のスペインで生まれたカトリック系カルト組織「オプス・デイ」が、その後バチカンの権力を事実上牛耳り、南米各国の政変や内政にいかに深く関与してきたのか、について書きました。

今回は、主に1980年代の中央アメリカ諸国の政変・紛争の中での役割、アメリカ合衆国の中での勢力と政治中枢部への接近の過程、FBIやCIAとの関係、などについていくつかの資料を挙げて分析してみたいと思います。


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イベリア半島「百鬼昼行図」 その5:米西同盟の仕掛け人?オプス・デイ
(2)米国中枢部に食い込む「バチカン=オプス・デイ」


前回までの投稿でも明らかな通り、オプス・デイは1960年代初期からCIAと手を組んで中南米の左翼勢力つぶしに全力を挙げていたのだが、その間に着々とアメリカの権力中枢への侵入を実践していたようだ。

以下でご紹介するURLの中で、日本語版や英語版のものは基本的にその内容を紹介するにとどめるので、各自でその情報内容をお確かめいただきたい。


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アメリカとバチカンの間には、第2次大戦後も長い間正式な国交が無かった。トルーマン時代には多少のコネクションはあったが、それも途絶え、1951年から1968年まで公式な接触は全く無かった。その後ニクソンは「私的な代表者」という名目でヘンリー・カボット・ロッジをバチカンに派遣する。カーターは同様に、後にニューヨーク市長となるロバート・F・ワグナーを送り込んだ。そしてレーガンの時代、1984年にアメリカとバチカンは正式の国交を結び、アメリカはウイリアム・A・ウイルソンを大使大使として派遣(84−85)。2代目はフランク・シェークスピア(86−89)、現在はジム・ニコルソン(01−)である。

詳しくは次のアメリカの「カトリック・エクスチェンジ、01年8月25日」のサイト(英語)を見てもらいたい。ただしこれはアメリカの「正統的」カトリックの立場で書かれており、もちろんオプス・デイについては全く触れられていない。

http://www.catholicexchange.com/vm/index.asp?art_id=8969


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次に、アメリカのカトリック系団体と思われるThe MGR Fondation「第9章:オプス・デイ−CIAコネクションの可能性」(英語)の一部をご紹介する。ここでは、1973−76年のCIA長官ウイリアム・E・コルビーがオプス・デイの関係者であったことが示唆されている。(部分訳のみ)

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【翻訳・引用開始】
「第9章:オプス・デイ−CIAコネクションの可能性」
【前略】

引退したCIA長官、ウイリアム・E・コルビー(1973−1976)は、ニクソンによって指名されたのだが、「強固なカトリック」であった。彼の個人的なプロフィールはオプス・デイの操作パターンにぴったりである。彼は1950年代にローマでの重要なCIA要員だった。オプス・デイのリクルートにはもってこいの場所と時である。

コルビー氏は、長官という特権的な地位を利用してCIAの機能の土台を切り崩すために非常に熱心に働いた。合衆国に敵対する組織の計画だけが、オプス・デイがそうであるように、彼がこの機構(CIA)の土台を侵食した方法にふさわしいのかもしれない。

コルビー氏は、退職してローマ・カトリックへの忠誠を捨てた後、非常に疑わしい状況の元で、カヌーの事故で死んだ。

【後略、翻訳・引用終わり】

The MGR Foundation : Section 09 Possible Opus dei – CIA Connection
http://www.mdep.org/sect09.html

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ウイリアム・コルビー(William Colby)はベトナム戦争当時にCIAサイゴン支局で勇名をはせ、1973−76年にニクソンとカーターの元でCIA長官を務め、次の長官となるジョージ・ブッシュ(父)といっしょに数々のスキャンダルのもみ消しと隠蔽を図って、レーガン政権でのCIAの位置と役割の確立に多大の貢献をした。突然のボート事故で死亡したのは1996年のことであり、その原因についてはさまざまな憶測が飛んでいるようだが、これについてはYahooアメリカ版の検索で十分に調べられる。例えば、
http://www.btinternet.com/~nlpwessex/Documents/WATcolby.htm

オプス・デイとの関係にしても他の情報源から確認できる。同様に「Colby, Opus Dei, CIA」で検索していただければいくらでも出てくるだろう。

なお上記の資料には、あまり明確な根拠が挙げられているとは言いがたいのだが、バチカン−ミハエル・ゴルバチョフ、バチカン−ジョージ・ブッシュ(父)との関係、従ってソ連崩壊の「仕掛け人」としてのバチカン=オプス・デイの役割も示唆されている。またこれに関連して、次に挙げる資料から、オプス・デイ−FBI−KGBコネクションの可能性も推測されうる。ただこの件については、私としてももう少し多くの資料にあたってみないと何ともはっきりしたことは申し上げられない。


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オプス・デイとFBIの関連では、やはりアメリカ国内からの情報にいくらでも例が挙がるのだが、2001年6月まで長官を務めたルイス・フリーフ(Luis Freeh)、および、2001年3月にスパイ容疑(十数年間にわたってKGBのスパイを努めた容疑)で逮捕されたロバート・フィリップ・ハンセン(Robert Philip Hanssen)が、オプス・デイのメンバーであった。

ハンセンの件に関しては参考として次の資料(日本語)をお読みいただきたい。

フジテレビ編集「奇跡体験」より「史上最大のスパイ」
http://www.fujitv.co.jp/jp/unb/contents/p226_3.html

またオプス・デイと上記2名のFBI高官との関係の資料は非常に数多くあるが、

アメリカのカトリック団体のサイトThe MGR Foundation
Section 19 – The United States of America Is Betrayed by FBI Special Agent Robert Philip Hanssen – A Member of Opus Dei Are There Other Angels To It?
http://www.mdep.org/sect19.html

に纏められている。いずれにせよ、上記2名だけがFBI内部のオプス・デイ・メンバーとは考えにくい。先ほどCIAの元長官コルビーがオプス・デイの関係者であったことを述べたが、すでにCIAの中にはしっかりと人脈が作られているのだ。これは次に挙げる資料を見ていただければご納得いただけるだろう。FBIについても事情は変わらないのではないか。ひょっとすると、9.11の件でのCIAとFBIの不可解な行動にも一役かんでいるのかもしれない。先ほどの資料The MGR Foundation Section 19でもそのことは示唆されている。

なお、オプス・デイ=バチカンと、ブッシュ親子、モサドなどとの奇妙な関係についての資料もあるのだが、これはオプス・デイの世界戦略と関連して、他の資料ともつき合わせてある程度以上の信憑性を確認した上で、次回の投稿でご紹介したい。


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ここで、現在のバチカン・アメリカ関係の重要人物と思われる者をリストアップして、それぞれの簡単なプロフィールを書いてみよう。ソースは、スペインの月刊電子情報誌「El Otro País de Este Mundo、2003年第5号(5−6月)」より「教皇はバチカンでの無数のスキャンダルに取り囲まれて合衆国を訪れた」(ホセ・エバリスト・ビジャマヨール及びアルフレド・ディスフェイト:スペイン語)である。

El Otro País de Este Mundo 
El Papa visitó Estado Unidos rodeado de incontables escándalos en el Vaticano
http://www.nodo50.org/elotropais/n6/papa.htm

この資料は次の点について述べている。
ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が2003年に予定していた5回目のアメリカ公式訪問(これは実現しなかったが)に関連して、
1:バチカン=オプス・デイがスキャンダルまみれであること。特に、一般信者から「神の名において」多くの金額を詐欺同然で巻き上げていること(この20年間で300人以上の僧侶や尼僧、教会関係者が起訴されている)、および、CIAと組んだ中南米に対する政治工作とカトリック内反対派に対する弾圧が強調されている。
2:そのようなスキャンダルの尻拭いのためにブッシュにカネを払ってもらうように交渉することが訪米の目的であること。
3:アメリカでのバチカン=オプス・デイ人脈、特にCIAとのつながり。

ただ、この「幻の訪米計画」については今のところ他の有力な資料が見つからないため、それに関する部分は信頼性の確認ができない。それでもこの文章には、もしも03年に教皇訪米が実現したとすればそれに尽力したであろう人物たち、つまり現在アメリカ=バチカン・コネクションの中枢にいると思われる者たちが多数登場している。列挙してみよう。各人への説明はすべてこの資料による。

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● フランク・シェイクスピア
アメリカ人。オプス・デイ。1986−89年の、第2代駐バチカン・アメリカ大使。極端なカトリック信徒でマルタ騎士団の騎士。
リチャード・ニクソンの情報メディア関連の顧問。ヘリテッジ・ファウンデーション(共和党の保守革命のプランを立てている)の一員。CBSの元会長。元駐ポルトガル大使。
ベトナムへの軍事侵略の熱狂的な支持者で、ユーゴスラビアやリビアへのアメリカの直接攻撃も支持。ニクソンにディレクターとして指名され合衆国情報局(USIA)の一員にもなった。スペインには国際問題会議(INCI)に自分の部局を持っている。
元バチカン外務省顧問のアンヘル・ビーニャスによると、シェイクスピアは情報の専門家としてしばしば彼の同朋であるジョン・P・フォウリーと会合を持ち、法王庁とCIAローマ支局の間の連絡員であるホアキン・ナバロ・バジュスと一緒に、新聞記者と会合を行う、という。
● ジョン・パトリック・フォウリー
アメリカ人。大司教。オプス・デイ。バチカン・テレビおよび法王庁広報委員会の代表。以前は法王庁のラテンアメリカ担当顧問でもあった。
フィラデルフィア生まれ。枢機卿クロールの力で司祭になってアメリカ・カトリック新右翼のメンバーになり、16年前、ヴォイティーワによって大司教に推された。彼が主催する法王庁広報委員会には、他の枢機卿、アルフォンソ・ロペス・トゥルヒーヨ、エウヘニオ・アラウホ、そしてラテンアメリカ司教会議議長だったダリオ・カステリョンがいる。
● ジョセフ・ラッツインジャー
アメリカ人。枢機卿。オプス・デイ。信仰の教理(異端審問)修道会の責任者。
● ウイリアム・バウム
アメリカ人。枢機卿。オプス・デイ。カトリック教育協会の会長で信仰の教理修道会のメンバー。
● ウイリアム・マーフィー
アメリカ人。司教。CIA。バチカン銀行として知られる宗教活動会議(IOP)の元総裁マルチンクスの弁護人。(マルチンクスは18年前にイタリアの司法当局の追放要請を受けて解任。アンブリシアーノ銀行の不正な倒産事件に直接関わっていた。)
● ジョン・オコーナー
アメリカ人。2000年に死亡したニューヨークの大司教。バチカンとCIAの関係作りに尽力した。ベトナム戦争当時のアメリカ軍従軍司祭。
●ジェイムス・ヒッキー
アメリカ人。ワシントンの大司教。アメリカ司教区会議の代表者。
● バーナード・ロウ
アメリカ人。バチカン内の極右カトリック。司教。
● 以下の者は、ローマのアメリカ大使館の秘書官でCIA駐在員。
ピーター・マーフィー、フランク・A・ラタンズィ、ルイス・ニグロおよびダグラス・レオニング。
●アルフォンソ・ロペス・トゥルヒーヨ
コロンビアの枢機卿。オプス・デイ。ローマの法王庁家族委員会の会長。元メデリンの大司教でラテンアメリカ司教会議の書記。「解放の神学」への敵対者。
バチカンは、共産主義に対して戦うために、彼に枢機卿の位を授けた。
● ホアキン・ナバロ・バジュス
オプス・デイ。バチカン法王庁広報担当責任者。
● セバスティアーノ・バッジオ
枢機卿。オプス・デイ。法王庁のラテンアメリカ担当の長(この地域に起こる事件に関する法王庁の最初の情報源)。
● ハビエル・エチェベリア
オプス・デイ。法王庁高官でアメリカのシークレット・サービスやバチカン内のアメリカ・ロビーに影響力を持つ。
● ロジェール・ヴェクマン
ベルギーの主任司祭。ロペス・トゥルヒーヨの側近。70年代にCIAから5百万ドルを受け取りチリの反共主義組織に渡した。
● マリオ・パレデス
チリ人。ニューヨークにあるヒスパノ・カトリック・センターのメンバー。
● ウンベルト・ベルリ
ニカラグア人。コントラ(ニカラグアの反共勢力)によって作られたプエブラ・インスティテゥートのメンバー。
● ラディオ・マルティー
キューバ系アメリカ人全国基金の代表者。

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また、この資料には以下のような事実も書かれている。

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『1982年の10月にレーガン大統領は信心深いバーノン・ウォルターズ将軍を、ヨハネ・パウロ2世と対話するために派遣した。当然のことだが、ラテンアメリカの状況は、ウォルターズにとって教皇との議論のポイントの一つであった。同時に、アメリカの司祭たちが、核兵器に反対する教会の文書を発行するという悪事を働いたことについて教皇を説得しようと努めた。5ヵ月後、ヨハネ・パウロ2世は、中南米の8日間の訪問の途中でニカラグアを訪ねた。マナグアでの大観衆の前で、教皇は「人民の教会【解放の神学を唱える:訳者】」を馬鹿げており危険だと攻撃した。それは、教会の唯一最大の任務が、彼によれば無神論者の、サンディニスタ【ニカラグアの左翼勢力:訳者】に敵対することである、ということを民衆に説得するためであった。』

『多くのことによって、ホワイトハウスとアメリカ・カトリック新右翼が、教皇の新たな訪問に対してどのような関心を持っているのか、が明らかになる。しかし言うまでも無く、最も重要なものは、アメリカ司教区会議の内部で反対派のカトリック勢力が大きく成長していることである。彼らが、ホワイトハウスとペンタゴンの対外政策、核兵器、外国への軍事侵略、そして、ペルー、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジェラス、アルゼンチン、エクアドル、ニカラグアといったラテンアメリカの極右民主主義への援助を、おおっぴらに非難しているからだ。』

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以上のように、バチカン=アメリカ・コネクションは具体的にはオプス・デイとCIAによって形作られており、それが1980年代レーガン時代に中南米の反共政策をテコにして明確な姿を見せ始めたこと、アメリカ国内の反対は勢力を押さえることがアメリカ政府とバチカン=オプス・デイの共通の利害であり、それを通してオプス・デイがアメリカ国内に勢力を拡大していこうとしていること、などが明らかになる。またオプス・デイの大物トゥルヒーヨがコロンビアの枢機卿であり元メデリンの大司教なら、コロンビアの内紛やCIAによる麻薬密輸などにも関わっている可能性すらあるのではないか。


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次に見ていただきたいものは、エルサルバドルの作家ラファエル・コリンドレス・セルバのホームページより「ヤンキーの介入、CIAとオプス・デイ」(ラファエル・コリンドレス・セルバ著:スペイン語)である。この文章中に、1999年に亡くなった作家で元エルサルバドル教育担当相のカルロス・ロバト博士の書いた文章が引用されている。ロバトはカトリック信徒かつ「伝統的な」左翼とみえて、いくつかの言葉の使い方に多少古めかしいところもあるが、事実関係を読み取っていただきたい。

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【訳出・引用開始】
「ヤンキーの介入、CIAとオプス・デイ」(ラファエル・コリンドレス・セルバ)
【途中まで略:カルロス・ロバトの文章が引用されている個所から訳出】

『神学の立場から言うと、神が望むものと望まないものを明確に断定することはできない。神の計画をはっきりと知っていると言うのは、神秘主義よりもバチカンとの関係に対してのほうがより適切であるようだ。明らかに、イエス・キリストは「汝の敵を愛せ」と説教したが、しかしその敵が、エルサルバドルやグアテマラの軍隊、エルサルバドルやグアテマラやアルゼンチンやペルーなどの権力者集団といった兄弟殺しどもであるなら、恐らくキリスト教の神は、その崇高な無差別の愛でそのような行為を認める、などということは欲しないだろう。それゆえ同時に、それがCIAとの素朴な関係である、というようなことはなおさらである。疑いなく、バチカンは、「神は我等にあり(Gott mit uns)」と言ったナチズムと同様に、そのようなものに傾いているのだろう。例を挙げると、常に災厄を受けつづけるエルサルバドルでは、元従軍司祭でこの国の大司教であるサエンス・ラカィエに加えて、カトリック大学のイエズス会員たちの殺害の後から、国家警察の主任司祭であったトルエーリャなどの司祭たちが現在の教会を支配している。彼らはこの国の全国紙に国家警察の仕事への賞賛の記事を今でも書き続けている。その国家警察は「和平協定」によって廃止された。無実のエルサルバドル国民の大量虐殺に重大な役割を果たしたことを、お偉方や極右大統領のクリスティアーニまでが認めざるを得なくなったためである。』

『良心のある者なら、抑圧者や抑圧と共にいることについて倫理的な疑問を深く考える。バチカンとオプス・デイは別のことを考える。エルサルバドルで野蛮な弾圧を行った軍隊付きの高位聖職者である者を、この国の教会のトップに据えているのだ。それは、解放の神学が拒否しバチカンとオプス・デイが祝福した、現代のパリサイ人【偽善者を指す:訳者】の側に立つという選択である。』

『バチカン、CIAを媒介としてアメリカ政府、オプス・デイ、そして「ネオリベラル【経済グローバリゼーションを指すと思われる:訳者】」のそれぞれの間に、緊密な関係があることは何ら不思議ではない。とりわけ左翼と対決する政策ではそうである。それは、他の状況(人口抑制政策や離婚や市場経済のある側面など)と矛盾が起こったとしても、政治的・経済的な権力への関心から、そうなるのである。』

『このことは、バチカン、オプス・デイと「ネオリベラル」といった保守派と反動派の同盟の例であり、まるで「スパイのマニュアル」があらかじめ準備されていたかのようである。我々はそのような同盟をスペインで見ることができる。右翼フランコ主義者の首相であるアスナール、オプス・デイ、ネオリベラルとバチカンの同盟である。』

『今世紀【20世紀:訳者】の初期には、ローマ教会は(ナチズムとファシズムの)最も反動的な政治権力に対して適応するような機関を持っていなかった。特に第2次世界大戦の前はそうである。その時にはバチカンの、特に秘書官のパセルリそしてピオ17世の、ナチズムに対するすりより方は顕著であった。そしてその空白が今はオプス・デイによって埋められているのである。その創始者のホセ・マリア・エスクリバー・デ・バラゲーはヒトラーを賞賛し、間違いなくそのことは(もっと言えば、まさにそれゆえに)ヴォイティーワ【ヨハネ・パウロ2世:訳者】によって神聖なるものとされるのである。』

『オプス・デイは、バチカン内にCIAやペンタゴンに相当する組織を作っている。「ペンタゴン」のように攻撃力を組織する。8万人の子分と1500人の僧侶を有し、1997年1月に「共和国【バチカン:訳者】」でOrazio de la Rocca【「岩の祈り」とでも訳すべきか?その内容はよく分からない:訳者】を書いた。特に教会のヒエラルキーで高位を占める戦略の中でメンバーを獲得し、70人の枢機卿と、リマやエルサルバドルを含め、ある人に言わせると、過半数の司教を握っている。極右翼の重要人物としては、コロンビアの枢機卿ロペス・トゥルヒーヨがいる。同様にバルセロナの枢機卿リカール・マリア・カルラスがいるが、彼はヴォイティーワの後継者の第1候補、次の教皇となるべきオプス・デイである。オプス・デイとヴォイティーワは詳細にいたるまでその道を整えている。世界のカトリック界の主導権がスペイン=ポーランドのカトリックによって維持されるようにである。バチカンの諸機構は、教皇の私的秘書官スタニスラフ・ヅィーヴィッツからスポークスマンのホアキン・ナバロまで、オプス・デイによって支配されている。そして、アメリカとのコネクションであるジョン・パトリック・フォウリーから、レーガンの元顧問で現在の「家族のためのヨハネ・パウロ2世協会」の副会長であるカール・A・アンダーソンにいたるまで、そうである。』

『まず最初に、先ほども言ったように、現在の教皇位はレーガンとオプス・デイのつながりで作られた明確な政治的計画と共に続いている。つまり、東側諸国を不安定にし解放の神学を清算することである。レーガンの意志により、エルサルバドルは超大国がぶつかり合う境界線と変わった。そして一方でちょうど分水嶺のように解放の神学と反動的カトリック主義が分離・対決する場に変わったことは当然である。そのゆえに第一にはエルサルバドルのカトリック大学の僧侶たちを殺害する必要があった。特にオプス・デイの忌み嫌う敵であったエジャクリア【カトリック大学学長:訳者】は。カトリック大学のイエズス会士たちはこの大陸でまた国際的にも解放の神学に欠かすことのできない存在になっていてのだ。エルサルバドル人なら誰でも知っている。僧侶たちは正規軍の暗殺隊にではなく、この国の地方軍人によって殺されたことを。裁判は終了して2名の軍の将校が罪に問われた。そして当然ながら殺人の委託者は軍の本部と共和国の大統領府であるとされた。今日までほったらかしにされている要素は、それらの殺人におけるオプス・デイの影響である。ヴォイティーワに権力の座を与えたヨハネ・パウロ1世の謎の死において、と同じように。エジャクリアやモンテスやその他の殺人は、オプス・デイにとって、エルサルバドルの教会の主導権を手に入れる道から障害物を取り除いてくれたものだった。バチカンからは新たな司教の辞令が飛んだ。グレゴリオ・ロサとリベラ・ダマスの交代として、エルサルバドル軍の一員で最近将軍に指名されたサエンス・ラカィェである。』

【後略、訳出・引用終わり】

“La Interbensión Yankee, la CIA y el Opus Dei” (Rafael Colindres Selva : 2000, San Salvador)
ただし引用部分は ”El Vargas Losa Senor y sus escribidores” (Carlos Lobato : 1999, San Salvador)の一部。
http://www.geocities.com/racozel/opinion/opusdei.html

エルサルバドルの内戦の経過は次のサイト(日本語)に詳しい。カトリック大学襲撃、イエズス会士虐殺事件は1989年11月。
http://www10.plala.or.jp/shosuzki/chronology/mesoam/salvador/salvad2.htm

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ある事件の本当の「仕掛け人」はそれで最も得をした人間であるのかもしれない。前回の投稿で見ていただいた他の中南米諸国での動乱や政変劇と全く同様だが、オプス・デイの姿は明らかに見えるにも関わらず直接関与する現場がつかめない。しかし必ずそれらの変化を通して勢力を拡大している。これだけ各国で同様のことが続いている限り、単なる「偶然の火事場泥棒」の類とは思えないのだ。

またカルロス・ロバトによれば、次の教皇の第1候補がスペイン人、それも、何と!私が住むバルセロナの枢機卿リカール・マリア・カルラス(Ricard Maria Carles)だ、というのだ。私も何回か顔を見たことがあるカタルーニャ人だ。これは黙って見過ごすわけにはいかない。前回の投稿で、ペルーの枢機卿J.L.シプリアニが有力候補の一人である、という情報をお伝えしたが、いずれにせよオプス・デイによる世界のカトリック界の全面乗っ取り計画が着々と進行しているのだろう。


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最後に、一つの疑問が残る。これほどアメリカ中枢部とバチカン=オプス・デイが密着してきたのなら、そしてオプス・デイがスペイン政府の中枢部をも占めているのなら、どうしてバチカンがアメリカのイラク侵略に反対しスペインがアメリカの覇権主義に積極的に支持を与えているのか。

もちろん現在アメリカを引きずっているのは、バチカン=オプス・デイと縁の深いCIAやFBIや伝統的保守主義者ではなく、むしろ彼らとは決して相容れないであろうネオコン=シオニスト主導のペンタゴンとプロテスタント系原理主義者たちなのだが、それにしてもバチカンとスペイン政府の正反対の言動は何を表しているのだろうか。

先ほど引用したThe MGR Fondation「第9章:オプス・デイ−CIAコネクションの可能性」の中の訳出していない個所に、この点について「いくつかの世界戦略を持つ団体が絡んでいる場合に、事態が進むにつれて同盟が崩れ敵対関係にもなりうる」という説明をしているのだが、しかしこれでは上記の疑問に答えることにはならない。

単純にバチカン=オプス・デイのご都合主義的ダブルスタンダードととらえることもできるし、あるいはオプス・デイ内部の分裂や、そもそもオプス・デイという組織が言うほど大きな力も戦略も持っていない団体だ、ということも考えられる。

しかし私は、この問いの答えは、このカルト組織が持つ(と推測される)世界戦略とは何か、という問題を取り上げることと、ヨーロッパ社会とスペイン政府の中のオプス・デイ人脈のあり方を検討することによって、与えられるのではないか、と思っている。

そこで次回は、『(3)アスナール政権=オプス・デイ政権、「3馬鹿軍団」の裏には?』 と題して、主にいま述べた点について纏めて投稿する予定だ。(「3馬鹿軍団」とはアメリカ・イギリス・スペインの「3馬鹿連合」、つまり、ブッシュ・ブレア・アスナール「BBA3馬鹿軍団」のことである。)

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イベリア半島「百鬼昼行図」過去ログ

その1:イラク人の血に群がる蝿ども(1)RepsolとCepsa
http://www.asyura2.com/0311/war44/msg/1021.html
 
その2:イラク人の血に群がる蝿ども (2)その他の企業
(何と!あのレアル・マドリッドの会長の名前も!)
http://www.asyura2.com/0311/war45/msg/112.html

その3:「米西同盟の経緯=フランコの呪縛」
http://www.asyura2.com/0311/war45/msg/585.html

 その4:米西同盟の仕掛け人?オプス・デイ
(1) バチカンを牛耳り中南米を操る悪魔的カルト集団
http://www.asyura2.com/0401/war46/msg/126.html

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