【ワシントン和田浩明】米国が推進している大量破壊兵器やその運搬手段の拡散防止構想（ＰＳＩ）に関連し、北朝鮮による物資の入手阻止で中国が米国に協力した事例があることを米政府高官が２１日明らかにした。中国は公式には同構想への参加に慎重な姿勢を示しており、水面下での協力が判明したのは初めて。拡散阻止で恒常的な協力体制作りを目指す米国は、２月中旬にも担当者を北京に派遣、中国側への働きかけを強化するという。

　同構想には世界１６カ国が参加しているが、アジアからは日本とシンガポールだけで、北朝鮮に隣接する韓国と中国は参加していない。同構想の主な対象の一つは北朝鮮であるため、実効性を高めるには中国や韓国、さらにロシアの協力が必須とされる。同高官も「海上輸送路を押さえても、陸や空の輸送が可能。大量破壊兵器の拡散を防ぐには、情報共有や実際の阻止活動での協調が大切」と重要性を強調した。

　問題の阻止活動については、時期や対象物資などへの言及を避けながら「いくつかの事例がある」と明言。これまでの米中協力は歓迎しながら「その場その場のものだった」と指摘し、恒常的な協力体制を確立するため中国側への働きかけを継続する姿勢を示した。

　北朝鮮の核問題解決を目指す６カ国協議でも他の参加国との仲介役を果たしている中国が、この分野で米側に協力した理由は「協議参加国のうち北朝鮮を除けば、中国を含めたすべてが核のない朝鮮半島を求めているからだ」と説明した。

　昨年５月にブッシュ米大統領の提案で始まった拡散防止構想には、今月になってマレーシアも参加の意思を表明した。昨年１２月に大量破壊兵器を全面廃棄する意向を表明したリビアは、同構想により米情報当局が主導した昨年１０月の貨物船臨検で、兵器用ウラン濃縮のための遠心分離機部品の密輸入を阻止されたことが明らかになっている。

　同構想に基づく活動には、公海上での臨検が含まれる可能性もあり、国際法上の問題を指摘する声もある。このため、米政府は同構想参加国や支持国と２国間協定を結び、加盟国の領海での臨検を可能にするほか、海事関連条約の改正も目指す考えだ。

　【ことば】大量破壊兵器拡散防止構想（ＰＳＩ）　テロ支援国家やテロ組織への大量破壊兵器や核関連物質、その運搬手段となるミサイルの拡散を防ぐため、疑わしい貨物を積載した航空機や船舶への臨検などを行う国際的な枠組み。ブッシュ米大統領が昨年５月提唱した。現在、日米英豪仏など１６カ国が参加し、オーストラリアや欧州で計４回の国際臨検演習を実施した。

［毎日新聞１月２２日］ ( 2004-01-22-15:00 )

http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20040122k0000e030063000c.html

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