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政府が導入予定のミサイル防衛(MD)システムをめぐり、日米両政府は25日、北朝鮮などから日米に向け発射された弾道ミサイルに対し、自衛隊と米軍が個別にとらえたレーダー情報をリアルタイムで共有し、迎撃ミサイルで撃ち落とすための情報通信網を構築する検討に入った。この一環として米国はMD用精密地上レーダーの日本への配備を打診している。米海軍長官がMDの運用能力を促進するためイージス艦の日本海配備を表明しているが、日米の情報分野での一体化が進むことで、憲法で禁じている集団的自衛権行使の問題が議論となりそうだ。
日米関係者によると、検討中の情報通信網は、米軍の早期警戒衛星やイージス艦レーダーによる弾道ミサイルの探知・追尾情報が、瞬時に航空自衛隊の航空指令所に伝達される。海上自衛隊のイージス艦や空自の地上配備レーダーがとらえた同様の情報も、在日米軍を経由して米本土に送られる。
伝達方法は、既に日米のイージス艦が備える「リンク16」と呼ばれるデータリンク(情報共有)機能などを活用。日米双方の指揮所で、飛来する弾道ミサイルの軌道が自動車のカーナビのような地図画面に映し出される。米側はさらに高度な通信網の開発を進めているという。
MDシステムは、日本以外を狙った弾道ミサイルを日本が迎撃すれば、集団的自衛権の行使に抵触する可能性がある。日米間の情報共有について、政府は「一般情報を提供するのは可能」との見解を示しているが、一体化した場合の憲法上の線引きはますます難しくなりそうだ。
また米国は、米本土を狙った大陸間弾道弾(ICBM)の探知・追尾が可能な地上配備型の「GBRレーダー」を日本に配備することも計画。日本海側に展開する意向で、既に日本海への配備計画を明らかにしたイージス艦のレーダー情報とともに、データは米本土にある迎撃ミサイル発射の管制システムに送られる。
ただGBRレーダーは強力な電波による電波障害や人体への影響も懸念され、設置場所の選定は難航が予想されるため、政府は慎重に検討している。【宮下正己】
◇集団的自衛権行使に抵触も
【解説】ミサイル防衛(MD)システムで日米両政府が検討している情報共有のための通信網は、世界的なMD網に日本を組み込ませようとする米国の狙いが色濃く反映されている。情報分野に限らず、将来的に米国からMDの運用全般においても一体化が求められ、日本が憲法で禁じる集団的自衛権の行使を迫られる可能性が出てくる。
日米のMDシステムを巡っては、01年の日米防衛首脳会談の際、当時の中谷元防衛庁長官が「日本は主体的に運用するシステムを持つ考えである」と発言。これに対し、国防総省の担当者が日本の主体的な運用方針に不快感を示したエピソードがある。
軍事関係者によると、レーガン政権時代の84年から約824億ドル(約9兆円)を投じてMDシステムを開発してきた米国は、本土と国外駐留軍の防衛に主眼を置き、「自分たちのシステム」との思いが強い。自国に向けられた弾道ミサイルの早期撃破などのため、同盟国などを組み入れた世界的なMD網の構築を考えている。米側が日本にMD導入、情報提供を求めているのは、こうした狙いの一環といえる。北朝鮮などから弾道ミサイルが発射された場合、日本のMDシステムに米本土防衛のための「センサー役」を担わせようというわけだ。
一方、米軍への情報提供について、政府は国会答弁などで「日本が『撃て』ということは憲法上できないが、一般情報ならば提供しても問題はない」と繰り返し、指揮統制が互いに独立していれば集団的自衛権の行使にはあたらないとの見解を取っている。だが、瞬時に迎撃すべきか判断しなければならない弾道ミサイルに対し、相手に「撃て」などと言う余裕はなく、探知から迎撃までの一体化した運用が必然的に求められる可能性は高い。【宮下正己】
[毎日新聞3月25日] ( 2004-03-25-15:00 )
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20040325k0000e010063000c.html