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十年来の課題
夫婦別姓を認める民法改正案をめぐって、自民党法務部会は約二年ぶりに議論を再開しましたが、今回もまた国会提出は見送ることになりました。法務省の法制審議会が一九九一年に別姓の議論を始めてから十三年。九六年には法案要綱が答申され、何度も国会提出が予定されました。しかし、法案が国会に出されたことはありません。自民党内に強硬な反対派がいるためです。
自民党法務部会で議論されたのは、同党内の別姓容認派の案です。結婚して姓を変更することにより、仕事を続ける上で支障をきたすなどの理由を家庭裁判所が許可した夫婦に限り、それぞれ自分の姓を名乗ることができるという内容です。
同姓か別姓かは夫婦の自由意思で決める「選択的夫婦別姓制度」を認めた法制審の法案要綱に比べると、極めて限定的です。法務省が二〇〇二年に提案した「例外的夫婦別姓制度」(原則は同姓、別姓は例外)も党内の反発で提出断念となった経緯から、容認派は“例外”をさらに強めた「家裁許可制」で国会提出・成立をめざしたものです。しかしそれさえも、自民党法務部会は許しませんでした。
世論は、別姓支持の流れが広がっています。〇一年の内閣府調査で賛否が逆転。反対29・9%にたいし、賛成が42・1%と多数になりました。二十代、三十代の若い世代をみると、賛成52%、反対13%と賛成が反対の四倍に達しています。「姓を変えると実績が途切れ、研究者にとっては死活問題」「互いに長男、長女であるため家、親、姓の問題で結婚に踏み切れない」など具体的意見も多数寄せられています。
自民の「崩壊論」
世論の流れに抵抗する自民党反対派の理由は、「家族の一体感が損なわれる」「子どもに悪い影響を与える」などに代表される“家族制度崩壊論”です。
しかし、先の世論調査では、別姓になっても「家族の一体感(きずな)には影響がない」と答えた人が52%で過半数。前内閣法制局長官の大森政輔氏は「夫婦の氏が異なることがあること自体が制度として確立されれば、親子の間で氏が異なることも、そんなに奇異なことではなくなる」(「読売」〇二年二月二十二付)とのべています。
さらに今回、反対派の主張には、夫婦別姓にすると「国家解体につながる」というものまであらわれました。
自民党は現在、結党五十周年にあたる二〇〇五年めざし、独自の改憲案づくりを急いでいます。六月にまとめる草案のたたき台には、新たに憲法前文に「愛国心」とともに、日本の伝統・文化・国柄などを盛り込む考えを打ち出しました。憲法改悪を推進する流れにのって、戦前の天皇を中心にした「家」制度のような一体感を求める復古的な空気があるとすれば、見逃せません。
国際的には、日本のように同姓を強いるのは「主要な先進諸国では見られない」(内閣府男女共同参画会議)という状況になっています。
日本共産党
80年代から提案
日本共産党は、男女平等と子どもの権利の確立を前進させる立場から、一九八七年以来、希望すれば別姓を選択できるよう民法改正を提案。九七年には民法改正案大綱を発表し、その実現に努力してきました。
また、野党共同による議員立法で、選択的夫婦別姓制度の導入、非嫡出子の相続分の差別をなくすなどを盛り込んだ民法改正案が国会に繰り返し提出されています。しかし、与党の反対で具体的な審議はほとんどされないまま廃案になってきました。
自民党は頑迷な態度を改めて国会に法案を提出すべきです。江刺尚子記者
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-03-23/02_01.html