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「はっきり申し上げて、僕は今の政治に不満です」。内閣府の政府広報誌「時の動き」三月号に、小泉政権を批判する一文が載った。官僚の内部告発か、それとも…。正体は、バーチャル(仮想)政党「老人党」の提案者で精神科医、なだいなだ氏(74)のインタビュー記事だ。同氏は「政府も老人党を無視できないということだろう」とニンマリ。 (立尾良二)
掲載されたのは「時の動き」の人物紹介コーナー「もうひとつの生き方」。
記事は冒頭から「老人党をご存じでしょうか」と“党”PRで始まる。政府・与党が自身の広報誌で、バーチャルとはいえ他党を宣伝するとは異例だ。
「これ以上老人はバカにされ続けないぞ」−
「“数”を通して“スジ”を通さない。だから国民が政治から離れていくのです」−
なだ氏の分かりやすい政権批判の言葉が並ぶ。さらに「民主主義には言葉が力になる可能性があるし、理屈が力になる可能性がなくてはなりません。老人党はその手段です」と断言。キャッチフレーズだけで実態が伴わない小泉純一郎首相の軽い言葉や、見せかけの改革をやゆしている。
なだ氏は、政府広報誌をどうみているか。
「取材依頼のときに『老人党の話をしていいの』と尋ねたら、『はい、どうぞ』というので、内閣府も懐が深いんだなと思った」と笑う。「取材は熱心だったよ。人間、面と向き合って話せば分かり合える。もちろん老人党のホームページを見ているのは編集の人たちで、大臣や官僚トップたちは見ていないだろうけどね」と屈託がない。
記事では、老人党のPRや政権批判に続いて、精神科医兼作家になった経緯や、人生の楽しみ方などが見開き二ページにわたって紹介されている。
■アドレスだけは勘弁してください
「話した分量の割に老人党の行数は少なかったが、それは予期していた。政府広報誌で、担当者は精いっぱいやってくれたという感じだね。保健所の方から『老人党に参加した老人が元気になったそうですね』と、よく講演を依頼される。それと同じで、健康法と間違われても老人党が評判になればいい。広報誌に取り上げられたのは、政府も老人党の存在を認めている証拠だ」
なだ氏は、誌面の末尾に老人党のホームページのアドレスを入れてほしいと頼んだという。「それだけは勘弁してほしいと断られた」と明かす。
「時の動き」とは、どんな雑誌か。
内閣府政府広報室の小山内忠彦参事官補佐は「政府の重要施策を分かりやすく解説し、情報提供する月刊誌」と説明する。
戦後、米国は、上意下達が当たり前だった日本政府の広報態勢を民主化。一九五四(昭和二十九)年に広報研究会が発足。五七(同三十二)年、総理府(当時)が同研究会に「旬刊公報」の編集業務を委託したのが始まり。雑誌名は「解説政府の窓」から「時の動き」に変わり、現在は社団法人日本広報協会(会長・石原信雄元内閣官房副長官)が業務を請け負うが、編集責任は内閣府にある。
発行部数は約三万部。全国の公立図書館に配布され、政府刊行物サービスセンターなどで一部百八十円で販売されている。
二〇〇二(平成十四)年に誌面を大幅改編し、小山内氏は「柔らかい人物紹介コーナーを新設し、一般の人にも親しみやすくした」という。「もうひとつの生き方」は、現役時代から二足のわらじの人や、定年後に新分野で活躍している人を取り上げている。これまでに元プロ野球選手で会社社長の国松彰氏、元検事でさわやか福祉財団理事長の堀田力氏らが登場した。
■「3分の2以上別の内容です」
小山内氏は、なだ氏の起用について「昨年六月ごろの人選で、作家兼精神科医ということだった。老人党を広報するつもりはなかった。結果として強調したかもしれないが、誌面の三分の二以上は別の内容」と“弁明”する。
なだ氏の政権批判については、「政府広報誌でこんな批判をされたのは初めて」という。「言い過ぎかなという感じもあり、できれば別の表現にしてほしかったが、やむを得ない。手を加えては先生(なだ氏)に失礼。許容範囲の判断は難しい」と苦しげだ。
老人党は昨年の総選挙で、政権交代に向けて野党への投票を呼びかけ、民主党が躍進した。「老人党のことをよく知っていたら、インタビューを依頼したかどうか…」と本音も漏れる。
ただ、老人党は単純に民主党支持かというと、そういうわけでもない。
なだ氏は「政権交代を繰り返すことによって、老人や弱者の声に耳を傾ける国民本位の政権づくりを目指す」と説明する。四月には、東京大学の自主ゼミが老人党をテーマに討論を予定するなど話題に事欠かない。自民党広報本部長の八代英太元郵政相はどうみているか。
「政治は暮らしのすべてを扱う。不満があればどんどん発言してほしい。力をもっている老人党に大いに期待している。政治はやがて変わるかもしれない。ただ、議会制民主主義だから最後は多数決になるのは当然だ」と余裕の表情。
「時の動き」の政権批判掲載については「わが身をつねってもらい、いいことだ。自民党は賛成も反対も全部取り入れて、流れをつくる大人の政党。賛成意見より、反対意見にこそ真の提言がある。老人党からの批判、大いに結構。ぜひ自民党のサポーターになってほしい」と意に介さない。
■反小泉派に利用される可能性も
自民、民主の二大政党に対し、第三極を自称する環境政党「みどりの会議」は、老人党との連携を深めようとしている。
同会議代表委員の中村敦夫参院議員は、政府広報誌について「自民党のずるいところで、珍しいことではない。表面的に対立しながら、こっそり相手の政策を取り込み、対立軸をなくすのが自民党の手法だ。自民党は何でも食っちゃう。権力維持のためならタブーはない」とみる。
なだ氏の政権批判も「自民党内の反小泉派にとっては願ったりだ。今の自民党政権はダメだけど、次の自民党政権ならいいよとね。インチキ構造改革で利権がなくなる人たちは、小泉政権をつぶそうと思っている」と、自民党に利用されている可能性を指摘する。
しかし、一方で「老人党も自分たちの主張が伝わるならば、敵の懐に入って大いに利用すればいい」と評価もする。
<老人党> 精神科医で作家のなだいなだ氏(74)が2003年、医療費の負担増や年金カットなど「老人をバカにするのもいいかげんにしなさい」とインターネット上に旗揚げしたバーチャル(仮想)政党。政権交代を二度三度繰り返して政治を変えることを目標に、選挙で弱者に厳しい政治家を落とそうと呼びかけている。公式ホームページの掲示板や口コミで、国の政策、政治家の言動、行政などについて意見交換するのが主たる活動で、党首や党本部、党費はない。誰でも自由に党員を名乗れる。関連図書に「老人党宣言」(筑摩書房)。
老人党ホームページはwww.6410.jp
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040316/mng_____tokuho__000.shtml