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夏の参院選を前にして、自民党の最大スポンサーである日本歯科医師連盟（日歯連）が「火薬庫」になっている。東京地検特捜部が政治資金規正法違反容疑で家宅捜索に踏み切ってから１カ月余。「歯科マネー」の不透明な会計処理は以前から疑問視されており、特捜部もその解明に照準を合わせている模様だ。事件の背景を探ると、政治力をカネで買おうとする業界団体の体質が浮かび上がる。【松下英志、鮎川耕史、末次省三】
■参院選前 自民にも危機感
東京都千代田区の新歯科医師会館で１１〜１２日に開かれた日本歯科医師会（日歯）の代議員会は、冒頭から荒れ模様となった。
「いろいろ申し上げたいが捜査中ですのでコメントは差し控えたい。先生方にはご理解頂きたい」。日歯連会長を兼ね、自宅も捜索された臼田貞夫会長がこうあいさつした直後、出席者の一人が「捜査の途中であるから、などで済む問題ではない」と発言。質疑では「末端会員に連盟を脱退する動きがある。組織存続のため会長から説明を頂きたい」「このままずるずるいくと（参院）選挙が戦えない」などの声が相次いだ。
参院選を「負けたら党は終わり」（青木幹雄参院幹事長）と位置づける自民党も、捜査の行方に神経をとがらせる。事件が発展した場合、スキャンダルとしての失点と同時に同党の組織選挙に影響を与える「ダブルパンチ」に見舞われる。
野党は「自民党と業界の不明朗な関係がクローズアップされている」（民主党幹部）と批判。自民党内にも「根深いものが出てくれば選挙は戦えない」（若手議員）との危機感がある。他の有力団体の動きも連鎖的に鈍る可能性や、団体頼みの組織選挙に批判が高まることも予想され、自民党の本音は「事件が発展しないことを祈る」（幹部）という一点に尽きる。
■巨額マネー
家宅捜索の容疑は０１〜０２年、自民党の吉田幸弘前衆院議員（愛知３区、昨年１１月落選）の資金管理団体などへの寄付金２０００万円が政治資金収支報告書に記載されていない虚偽記載の疑い。
背景には日歯連の豊富な資金力がある。８０年代以降、自民党一党支持を強める中で、８３年参院選に拘束名簿式の比例代表制が導入された。日歯連は組織内候補の当選には「自民党の名簿登載で高順位を得るのが得策」（元役員）と判断。名簿順位を左右するとみられた党友・党員の獲得に力を入れ（別表参照）、選挙のため８４年に会費を２万５０００円から一気に３万５０００円に引き上げた（昨年３万３０００円に減額）。
近年の年収は１７億円以上。使途の中心は自民党への献金だ。
■選挙のたび借り入れ
こうした選挙対応と資金拡大は会計処理の不透明さにつながった。日歯連は会費を増額しても単年度では選挙費用を賄いきれず、参院選ごとに金融機関から巨額資金を借り入れ（同表参照）、次の参院選までの会費収入で返済していた。
このうち、９５年参院選の１６億円と９８年の８億円は収支報告書に記載がなく、虚偽記載だった疑いがある。関係者によると、借入金は獲得した党友・党員の年会費・党費肩代わりに充てられていた。
この借入金は、各都道府県歯科医師連盟の推薦者が集まる評議員会では了承を得たものの「オープンにすると獲得した党友・党員数が分かり、他陣営の目標にされ名簿登載順位に影響を与える」（日歯連元役員）ことなどを理由に、外部には伏せられたという。
さらに、献金先の議員名や金額は評議員会でも説明がなく、内部で度々問題視されてきた。臼田氏自身、会長就任前年の９９年、不透明さを評議員会で批判。説明がなかった事情を、当時の役員は「政治家と地元歯連の双方から『うち（の議員）にはなぜ献金が出てないのか』という苦情が必ず出る」と語る。
会長周辺も、副会長が会長による指名で決まるなど身内で固められ、「チェック機能がない」（評議員）のが実態とされる。
■「器の中だけで」
「捜索を受けたのに選挙まっしぐらというのはいかがなものか」。家宅捜索から３日後の２月５日、日歯連の理事会では、新人の元厚生労働官僚を組織内候補として臨む今夏の参院選への慎重論も出た。
「問題の本質は公益法人と政治団体を峻別（しゅんべつ）しなかったこと。来るところまで来た」（会員の歯科医）。日歯連は最近まで事実上、強制加入だった。「歯科界の代表を国会に」を大義名分に、個々の意思に関係なく会費が徴収され、献金と不透明な会計処理が続いてきた。９８年に鹿児島県の歯科医らが訴訟を起こし、０２年にようやく入退会は個人の自由になった。
「私たちは歯科医師会という器の中でしか物事を考えなかった。自民党や政治家への献金も当たり前と思っていた。その意識が国民と違っていたんでしょうか」。最近まで役員だった歯科医は、事件の意味をそう受け止めている。
◇ことば 日本歯科医師連盟（日歯連）
歯科医９万２０００人余のうち６万４０００人余が加入し１０１年の歴史を持つ公益社団法人・日本歯科医師会（日歯）の政治団体。０２年会員数は５万１６０９人。１９５０年、参院選に立候補した日歯役員を支援するため政治活動を行う結社として届け出たのが始まり。２度の解散を経て５４年１２月、日本歯科医師政治連盟の名で改めて届け出て、６２年から日歯会長が会長職を兼任、９４年に現名称に改称した。
［毎日新聞３月１３日］ ( 2004-03-13-23:29 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20040314k0000m040080000c.html
★ 関連書き込み
トマトンさん： 「参・予算委 「日歯連」から小泉首相らに対する献金が明らかに（日本テレビ）」
http://www.asyura2.com/0401/senkyo2/msg/716.html
あっしら：「【大新聞は政府・与党機関紙なのか】この献金問題を声高に取り上げないド腐れマスコミ」
http://www.asyura2.com/0401/senkyo2/msg/719.html
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。