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皇太子殿下 44歳の誕生日に際しての会見  [毎日新聞]
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投稿者 あっしら 日時 2004 年 2 月 23 日 16:23:59:Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: 皇太子さま:23日は44歳の誕生日  [毎日新聞]【自衛隊イラク派兵で踏み込んだ発言】 投稿者 あっしら 日時 2004 年 2 月 23 日 16:18:20)


1)この1年間で印象に残った出来事についてお聞かせ下さい。

 この1年を振り返ってみますと、国内にあっては昨年の夏の豪雨や台風によって多くの方々が亡くなられたことに心が痛みます。それに加えて昨年は異常気象により作柄がよくなく、農家の方々は大変なご苦労をされたと思います。また、海外で発生したBSEの問題やSARSの問題、国内でも今も発生が見られる鳥インフルエンザなどは感染の予防や食の安全という問題について新たな問題を投げかけましたし、ことに鳥インフルエンザなどはそのような病気が存在することに、正直驚きました。早くこれらの問題が解決することを心から願っております。

 一方、海外ではイラクの情勢が混迷を深めてきており、多くのイラク国民やイラクの復興に携わっておられる方々が犠牲になっていることは大変、悲しい
ことです。ことに昨年11月にはイラクの復興に尽力しておられた外務省の奥さん、奥さんは私がオックスフォードに留学していた同じ時期にオクスフォードに留学しておられました。そして井上さんのおふた方が亡くなられたことは本当に残念で、ここに改めて哀悼の意を表します。イラクに一日も早く平和が訪れることを心から祈るとともに、イラク復興支援に当たられる自衛隊のみなさんには厳しい状況の中でくれぐれも体に気をつけて、イラクの国民のためになるお仕事をしていただきたいと思います。

 北朝鮮による拉致被害者の問題もよい方向に解決することを心から願っております。


 2)皇太子妃殿下は現在ご静養中ですが、皇族方が長期間公務を休まれるのは異例のことです。殿下は一連の経過をどう受け止められ、原因はどこにあるとお考えですか。夫としてどのように妃殿下を支えていらっしゃるか、解決策としてご夫妻でお考えの事や望まれている事をお聞かせ下さい。両陛下とはどのようなお話をされましたでしょうか。


 雅子には昨年12月以来、公務を休むことなり、国民のみなさんにはご心配をいただいております。みなさんから寄せられた多くのお見舞いやご好意に心から感謝を致します。雅子には結婚により、それまでとはまったく異なる環境に入りました。新しい生活の中で外からは分からないのですが、東宮御所での生活の成り立ちに伴う様々な苦労があったと思います。そのような環境に自分を適応させようと努力していましたし、また公務にも勤めてきました。もちろん、天皇、皇后両陛下が一番重いお立場にあられるわけですが、皇太子妃という特別な立場から来るプレッシャーもとても大きなものだったと思います。


 私から見ても雅子は本当によくやってきていると思います。そのような中で一昨年のニュージーランド、オーストラリア訪問の前の記者会見の折にも触れましたけれども、世継ぎ問題についても様々な形で大きなプレッシャーがかかっていました。幸い子供が生まれてそれからは2カ月で公務に復帰しましたが、公務と育児の両立、それからメディアからの子供を巡る様々な要望に応えようと努力していた中で、疲労が蓄積していったのではないかと思います。

 子供が生まれてからは公務を少し軽減しましたが、疲れが蓄積していても外では見せずに頑張っており、私も心配でした。世継ぎ問題のプレッシャーも、またかかってきたことも大きかったと思います。帯状疱疹を未然に防ぐことができなかったことはとても残念ですが、帯状疱疹という病気になってそれまでたまっていた疲れが出ているように思います。今はともかくすべてを忘れてゆっくりと休んでほしい気持ちです。

 そうですけれども、なかなか思うようにいかないのが現状であります。雅子がゆっくり休めるよう宮内庁はもとより、マスコミのみなさんにもご協力いただければ幸いです。

 雅子が公務に復帰するのにはまだしばらく時間がかかるのかもしれませんが、私としては側にいて励まして、相談に乗って体調がよくなるようにしてあげればと思っています。また、皇太子妃というこの立場を健康で果たすことが必要なわけですから、そういった意味からも今後の公務の内容やあり方も検討する必要があると思います。

 世継ぎ問題についてはその重要性を十分、認識していますので周囲からプレッシャーがかかることなく静かに過ごせることを望んでおります。

 さらにもう少し自由に外に出たり、いろいろなことが出来るようになるとよいと思います。

 両陛下には、雅子の病気についてお見舞いいただくなどいろいろご心配をいただき、ありがたく思っております。

3)敬宮愛子さまの最近のご成長ぶりを、殿下の子育てへのかかわり方、大切にされている事も交えお聞かせ下さい。幼稚園入園や、皇族である事を踏まえ
た教育など、小学校入学ごろまでの方針をどうお考えでしょうか。両殿下は以前から「同世代との子供たちとのふれあい」を重視されていますが、愛子さま
のためにも二人目のお子さまが必要とお考えかどうかもお聞かせ下さい。


 おかげさまで愛子もすくすくと育っております。多くの方々に子供の成長を温かく見守っていただいていることに大変ありがたく思っております。愛子も最近はとても活発に走ったり、飛び跳ねたり、また言葉も少しずつ増えてきました。いつの間にか使い方を覚えたのかと思うようなかわいらしい表現をすることもあります。私自身、昨年もお話しましたように子供に食事を与えたり、散歩に連れていったり、一緒に遊んだり、お風呂に入れたりすることなどを通して、子供との一体感を感じています。子供も自然と、母親に求めることと、父親に求めることとが異なってきているようで、その点でも父親として出来ることをやっていきたいと考えています。

 どうも母親は側にいてくれるもので、父親は遊んでくれるものとの認識が子供にはあるようで、私の場合は少し遊んであげるとそれで満足してくれるのですけれども、雅子の場合ですと、かなり長く一緒にいてほしい様子で、この辺りにも母親の大変さというのを感じます。

 相変わらず寝かしつけは母親の仕事となっています。愛子も成長とともにいろいろな事がわかるようになってきましたので、成長に合わせた育児が必要になってきていると思います。そういう意味で毎日を楽しく過ごせるように配慮することはもちろんですが、周りから自分が認められているということをわかるようにしてあげることが大切で、それは一つの安心感につながっていくと思います。

 またこのような場所にいますと、どうしても周囲から隔絶され、様々な刺激が少なくなりがちです。普通、子供は例えば親と一緒に買い物に行くなどの日常的な営みの中で自然と他の子供と出会ったり、様々なものを見て、また様々な刺激を受けながら育っていくものではないでしょうか。このような場所にいながら、そういう環境をどうやって作っていくか、というのが大きな課題です。

 昨年も公園に子供を連れていったのも、その一つの試みでしたが、どうしても毎回、取材の対象になってしまうなどなかなか自然な形では難しいように思いました。いずれにせよ、同世代の子供たちとの触れ合いは今、特に大切なものではないかと思っていますので、東宮御所内でそのような機会も作っていますけれども、愛子もそのような友達と遊ぶ機会をとても楽しんでいる様子です。

 一方、子供を外の空気に触れさせることも大切で、今後も公園をはじめとして外に連れて行くことは子供の成長過程で必要なことだと考えています。愛子の成長過程を知りたいと思う国民のみなさんの期待にも応える必要がありますが、出る度に取材の対象になっては子供もかわいそうです。なるべく自然に子供が振る舞える機会を増やせるよう温かく見守り、取材の面でも協力をしていただければ幸いに思います。

 二人目の子供については、今は何はともあれ雅子が回復することを最優先に考えるべきではないでしょうか。今後の教育については現在、いろいろと検討しているところです。いずれにせよ、子供にとって後になって振り返って、「この学校で学んで本当によかった」というふうにしてあげたいですね。


 4)天皇陛下は昨年古希を迎えられましたが、殿下は、陛下のご年齢やご病気についてはどう受け止め、ご負担の軽減にはどのようなご意見をお持ちですか。秋篠宮さまは昨年の会見で、陛下とのコミュニケーションを大事にして円滑な意思疎通を図りたいとの思いを示されましたが、殿下は陛下をお支えするにあたり、具体的にどのように考え、行動されるお考えでしょうか。


 天皇陛下には昨年、古希を迎えられたことを心からお祝い致します。昨年は手術を受けられ、私も心配申しあげましたが、お元気そうなご様子を何よりと思っています。しかし、陛下のご年齢を考えますと、ご公務のご負担を軽減することはとても大切なことだと思います。一方でご公務には、陛下でなければなされないご公務もおありになりますので、この辺りは周囲がよく陛下とご相談しつつ、陛下のお気持ちに沿って事を進めていくことが大切ではないでしょうか。

 陛下との関係ですけれども、今後も皇太子という立場でもって陛下をお支えしていきたいと思っていますが、親子であっても天皇と皇太子という関係は特別なものがあります。ですからお互いのコミュニケーションを大切にするということは、これは当然のことだと思っております。


 5)殿下が皇太子になられてから15年が過ぎました。この15年を踏まえ、公務について、ご自身のお考えや個性に照らし重視したい事、関心がある分野を具体的にお聞かせください。研究など私的に取り組まれたい事もお話しいただければ幸いです。


 15年間皇太子として、公務を通して日本や世界を見ることができ、また多くの方々と出会ってそして様々なことを学ぶことができたことを、大変うれしく思っています。この15年を見てみますと、世界はもとより日本も大きく変わって来ています。公務というものは私はその時代時代によって変わって来るものだと考えます。国際化の中での日本が変わっていくのに伴って、新たに私たちが始めるべき公務もあると思います。前の時代からの公務も大切にしなければいけないものもありますが、その辺りを整理して今の時代にあったような形で新たに私たちで出来る公務も考えていくことができればと思っています。

 もう一度、長い目で本当に皇太子として、今どのような公務を、そしてどのような形で果たしていくべきか、宮内庁も含めて真剣に考えていただきたいと思います。

 天皇、皇后両陛下が皇太子時代に、第1回から関わっておられる身体障害者スポーツ大会は、現在では知的障害者も加わった障害者スポーツとして大きく花開いていますが、これはまさに両陛下が皇太子、そして皇太子妃時代に新たに公務を通して育てられたものだと思います。

 次に私が今、関心を持っているテーマや研究についてお話してみたいと思います。私は今後、地球環境の問題がとても大切になって来ると思います。昨年、「第3回世界水フォーラム」が京都市を中心として開催され、世界における様々な水問題が討議されました。私も名誉総裁として、この催しに関わることができましたが、水に関する問題が実に多岐に渡っている事に驚かされました。中でも、世界では約11億人が安全な水を飲むことが出来ない、そして約24億人が下水道施設を持っていないこと、劣悪な水環境のために8秒に1人、子供の命が失われているという事実には「水は安全」と思われがちな日本において、おおいに考えさせられるものがありました。恐らく「水フォーラム」を通して我が国でも多くの人々が世界における水問題について、認識を深めたことでしょうし、私自身、公務としてこのようなフォーラムに関係することができたことを大変うれしく思っています。

 「水フォーラム」などの催しを契機として、水の問題が少しでも解決の方向に向かうことを願っております。21世紀は水の世紀とも言われますけれども、今は私としては今後、日本、そして世界における水をめぐる様々な問題について理解を深めていきたいと思っていますし、この問題に今後とも何らかの形で関わり事ができれば幸いだと思います。

 ところで、「水フォーラム」の折にも水上交通の問題が取り上げられ、私たちもそのセッションに出席しましたけれども、私は今後ともこの水上交通の研究を通しても水の問題への理解を深めていきたいと考えています。

 具体的には「水フォーラム」の折の記念講演の折に、お話しましたけれども、瀬戸内海と京都とを結ぶ淀川の中世の水上交通や、イギリスで研究していたテムズ川の水上交通の問題を今後さらに深めていきたいと思います。

 私は個人的に「道」というものを小さい時から関心を持っております。ここでいう「道」には、「水の道」や、それから「陸の道」があるわけですけれども、私の研究テーマは、学習院大学時代は、日本の中世の瀬戸内海の海上交通でしたし、イギリスへの留学中は主として18世紀のテムズ川の水上交通についてでありました。

 目下のところ、いま私が勤めております学習院大学資料館にあります牛車の絵図の成立過程についての研究を進めていますが、こちらは牛車ですから当然、陸上交通という観点からも興味があるテーマです。広い意味でこの洋の東西を問わずに海、湖、河川の交通、あるいは陸上の交通がその国の歴史、文化、あるいは人々の暮らしとどう関わってきたかというテーマに今大きな魅力を感じています。それとともにそのような歴史の道を船やあるいは実際に歩いてたどることが少しでもできればと思っております。

 最後になりますけれども、公務については雅子についても体調が回復したならば、何か今までの経験を生かした形で取り組めるようなテーマが見つかって、関わっていけるようになるとよいと思っております。


 関連質問)44歳は、昭和天皇が終戦の御前会議を開いた年なんだという感慨があります。時代は随分変わりました。天皇、皇族に「私なし」とか、「公を先にし、私は後に」というのが一つのモラールにとしてあって、その後、時代、世代が変わる中で、価値観も変わってきました。殿下は(昭和天皇が御前会議を開いた)そういうご年齢なられたという感慨がおわりかどうか、「私と公」の考え方について、どのようにお考えでしょうか。


 そうですね、やっぱり44歳ということで私もいつの間にか40、不惑の年を迎えて、そして今44歳になったという気がいたします。昭和天皇は本当にいろいろご苦労もおわりだったと思いますし、激動の時代を生きられたと思いますし、そういう面で大変なご苦労がおありになったと思います。その当時の世界の情勢、そして日本の情勢というものを考えて見ますと、今私が置かれている状況とは本当に比べ物にならない、ある意味で今そういう時代でないということが、一つ幸せなことであるわけですけれども、そういう意味で昭和天皇がご苦労されたということはよく私も身にしみて感じますし、改めて44歳でそういうことをなさっておられたという事実、やはり深い感慨を覚えます。


 「公と私」という問題ですけれども、やはり時代というものも変わって来ていますし、公というものの捉え方、そして「私」というものの捉え方というものは、その時代時代で変わってきているわけですけれども、いずれにしても国民の幸福を一番だれよりも先に自分たちのことよりも先に願って、国民の幸福を祈りながら仕事をするというこれが皇族の一番大切なことではないかと思っております。直接の答えになってはいないかもいれないですけれども。私は今、「公と私」ということについてそのように捉えています。

(毎日新聞2004年2月23日から)

http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/koushitsu/art/040221204958172159.html

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