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拝啓 小泉首相殿30 教育の基本に返りましょうよ[阿部政雄]
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投稿者 なるほど 日時 2004 年 2 月 06 日 00:09:14:dfhdU2/i2Qkk2
 

日本アラブ通信 編集長
                           日本ペンクラブ国際委員
                       元東海大学国際学科講師(中東)
 
                                 阿部政雄


                            2004年2月5日

拝啓 小泉首相殿30 教育の基本に返りましょうよ
             (女子高生の手紙の件について思う)

 宮崎県の高校三年生今村歩さん(18)が「暴力の連鎖を断ち切るために平和的な
解決が必要」と知人らに呼び掛け、メールなどを通じて集まった五千三百五十八人分
の署名を添えて二日、内閣府に提出したそうですね。本当にご苦労さまとお礼を言い
たいところです。

 こうした、平和的解決を求める真摯な高校生の努力に対して、貴方は、原文を読み
もしないで、「自衛隊の平和貢献を教えることがいい勉強になる。その辺を学校の先
生もよく生徒さんに話さないと」と発言し、河村建夫文部科学相も「法的根拠がある
のだから、事実に基づいて教えていただくことが大事だ」との考えを示したと新聞で
知りました。

 しかし、率直に言って、貴方は首相として、五千人を超す署名を集めたこうした女
子高校生の平和を願う努力に対して、すくなくとも、その手紙をよく読んで、そのど
こが間違っているのか、懇切に説明すべきでなかったでしょうか。文部科学大臣にし
ても同様で、せっかくの機会だから、若い人たちに、自衛隊派遣が日本のためにもイ
ラクのためにもなるという納得のいくような説明をすべき責任があると思います。

 小泉首相は、派兵が平和につながるとおっしゃているが[武力を使わないで平和的
解決を]という主張こそ、平和国家を唱導している日本の国是にそった真っ当な意見
で、現にサマワの人たちでも、自衛隊より日本のNGOの人たちや企業に来て貰いた
がっています。

 それに、今度の衆議院における強引な派兵承認強行の裏には、「始めに派兵ありき」
があったことが国会答弁の中で指摘されているではないですか。サマワの実情を報告
するための先遣隊の調査日程もたった一日半という杜撰さで、これでは日本中の高校
生を納得させることができないので、読もうともしないで、威丈高になって「自衛隊
派遣の意義を学校で教えるべきだ」と開き直っているに過ぎないと思っています。要
するに高校生を納得させる自信がないからですね。

 小泉さんたちは、国の最高法規である憲法などまるで無視して、アメリカの占領政
策の手助けをするため、膨大な国費を使って重装備をした軍隊を送ったのだと、アラ
ブ・イスラム諸国から思われているのが実情だと、小生は思います。

 こうしたことがいいかどうか、真剣に討論した方が真の平和教育になるでしょう。

 最近読んだメールを紹介します。

 地球村通信2月号からの文です。

> ●イラクのための平和的な代替案!
>
> イラクの復興はイラク人の手で! 日当250円は、彼らの生活を支えます。
> 一方、自衛隊員の経費は、危険手当一日3万円、食費一日3万円、装備など消耗
> 品一日1万円、合計毎日7万円。7万円はイラク人280名分の日当です。
>
> 自衛隊員1000名で、28万人のイラク人の雇用が確保できるのです。
> その方がはるかに復旧も早いし、イラクの経済復興にもつながります。
> 国連にも喜ばれ、国際協力にもなり、日本の評価も大きく向上します。
> 日本の信頼、安全も向上します。
> 自衛隊を送るよりも、この方がはるかに平和的・効果的ではないでしょうか。
> この代替案、どう思いますか。

 もちろん、この案に大賛成です。

 これだけ読めば、自衛隊員の方々は凄く優遇されているように見えますが、今のイ
ラクの治安情勢では、それこそ[明日の命を誰が知る]といった不安の中に貴方はお
得意の[丸投げ]をされてしまったのですよ。

 それもこれも、貴方がブッシュ大統領の別荘に呼ばれて舞い上がってしまい[何で
も協力]を表明、ついに、国民はおろか、国会でさえ、十分納得のいく責任ある説明
をせず、言ってみれば、急いで、急いで、日本の将来に重大な禍根を残しかねない自
衛隊の派遣を強行してしまったのです。

 戦中派として、[15、16、17と私の人生暗かった]時代に生きた旧制中学の
3年、4年、5年生として、[あと2年の命]、[あと1年]そして終戦の年には、
あのアメリカのB29による焦土作戦の大空襲、艦載機による機銃掃射の脅怖などを
味わいました。それだけに、愛する家族をあとにサマワに派遣された自衛隊隊員の精
神的苦痛がどんなに激しいものになっていくのか、痛いほど判ります。

 貴方は口癖のように[自衛隊は戦争のために行くのではない]とおっしゃいますが、
それなら、息子さんの孝太郎さんを派遣して現地体験をさせてみたら如何がですか。

 まあ、こんな皮肉を書いていても少しも建設的でないので、小泉さんに勧めたい教
育の基本になるような文章をご紹介します。

 「教育は、
  人格の完成を目指し、
  平和的国家及び社会の形成者として、
  真理と正義を愛し、
  個人の価値をたっとび、
  勤労と責任を重んじ、
  自主的精神に充ちた
  心身ともに健康な国民の
  育成を期して行なわなければならない。」
  (教育基本法の第1条、目的より)

また、
 「われらは、
  個人の尊厳を重んじ、
  真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、
  普遍的にして、しかも個性ゆたかな文化の創造を
  目指す教育を普及徹底しなければならない。」
  (教育基本法の前文より)

 小泉さん、これで行きましょうよ。この文章は何もアメリカから戦後押し付けられ
たというわけでない、まごうかたなき、日本人が日本人のために作った教育方針です。

 この文章を25年ほど前に初めて目黒の教育研究所で読んだとき、小生はとっさ
に、これは新渡戸稲造博士が書いたのだという印象を持ちました。

 色々文献を辿っているうちに知ったのは、果たせるかなこの文章を書いたのは、
「この基本法の生みの親たる教育刷新委員会の委員38名中、新渡戸先生と浅からぬ
関係にあったと推定出来る方々は、8人を下らないようである。安部能成(委員長)、
南原繁(副委員長)、関口泰、天野貞裕、森戸辰男、河井道、上代たの、田島道治の
諸氏である・・・・。」という教育基本法制定当時の文部省の学校教育局長であった
日高第四郎氏の言にあるように、この基本法の直の生みの親は、文学における漱石山
脈と並び称せられる、教育における新渡戸山脈に連なる人々だったのです。

 [一切、合切、丸投げ方式]の小泉さんは読んでいらっしゃらないでしょうが、実
はこれが現在の教育基本法の第一条と前文なのです。

 河村文部科学大臣なら、もちろん読んでいられると思います。

 こんな立派な教育の方針があるのですから、これをもっと学校でも活かして行きま
しょうよ。

 女子高生の訴えを読みもしないで、あんなことを記者会見でしゃべるなど、[貴方
はほんとに冷たい人やなあ]とつくづく思いました。つまり冷血漢という印象です。
いや、冷血漢よりも冷血動物というのが率直な感想です。[少年倶楽部]で読んだ江
戸川乱歩作『怪人20面相』の話しを以前の手紙で書きましたが、小泉さんの仮面
(マスク)を一枚一枚はがしていったら、最期に現われるのは、人の血をすすって生
き延びていく大きな鷲鼻をつけた蛭(ひる)だったなんて。猟奇小説みたいですが、
それが現実だったら正に[日本の悲劇]です。これは小生の単なる妄想であることを
願います。

阿部拝

http://www1.jca.apc.org/aml/200402/37707.html

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