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政府、焦燥の8日間…「一喜一憂せず」が合言葉に
日本人人質事件の発覚から8日間――日本政府は、様々な情報にほんろうされ続けた。「24時間以内に人質解放」との武装グループの声明、それを打ち消すような報道に期待と焦りが交錯。さらに、ファルージャ情勢の悪化という懸念材料も加わった。
急転直下の事件解決に至るまで、日本政府はどう動いたか。
■発端8日午後6時50分=事件が飛び込んできたのは、8日の夕方だ。小泉首相は午後6時50分ごろ、国会近くのホテルで報道関係者と会食する直前だった。
「事実関係を把握し、人質解放に全力を尽くしてほしい」――首相は直ちに秘書官に指示すると、約2時間、平静を装って懇談を続けた。
首相官邸は慌ただしく動き始めた。午後9時過ぎ、福田官房長官、川口外相、石破防衛長官らが集まった。仮公邸に戻った首相と電話で連絡を取り、〈1〉自衛隊は撤退しない〈2〉人質解放に全力を尽くす――との方針を決定した。
午後10時20分、首相官邸での緊急記者会見。福田官房長官は冒頭、「政府は、人質になられた方が一刻も早く無事に解放されるよう全力を尽くす」とだけ述べた。自衛隊については、記者団の質問に答えて、「自衛隊はイラクの人々のために人道復興支援している。撤退する理由はない」と強調した。
実は、外務省が用意した記者会見の冒頭発言の案文には、「自衛隊は撤退させない」という一節が含まれていた。福田長官の判断で質問に答える形で方針を表明したのだった。
「撤退する理由はない」という表現について、政府筋は後日、こう言った。
「武装グループの要求には全く正当性がないことを、極力強調したかった」
■展開11日午前3時=事態が大きく動いたのは、人質解放に関する「サラヤ・ムジャヒディン(戦士隊)」の声明がカタールの衛星テレビで放映された10日午後10時(日本時間11日午前3時)のことだ。
「人質は3人とも無事だ。今夜か、明日の朝までに解放されるだろう」
放送の約1時間後、「解放声明」を具体的に裏付ける情報が日本政府に飛び込んできた。バグダッドに滞在する大木正充イラク担当大使と上村司臨時代理大使が「アラブ人脈」を通じて、イラク統治評議会のイヤド・アラウィ前内務相から得た極秘情報だった。
外務省の主な中東専門家を動員し、情報収集した成果だった。外務省地下1階にあるオペレーション・ルームに笑顔が広がった。11日朝、十数人の記者団に取り囲まれた川口外相は、「解放を裏付けるものはあるのか」との質問に対し、静かにこう答えた。
「複数のソースから得ています」
同じ情報は与党幹部にも伝えられた。自民党の安倍幹事長は同日午前、人質解放の時期について「時差を逆算すると(日本時間の)昼ごろではないか」と自信ありげだった。政府は11日夕のバグダッド発アンマン行きの民間機の数席分の座席を予約し、解放に備えた。
だが、「24時間以内の解放」の期限である12日午前3時を過ぎても3人は姿を見せない。
外務省幹部は語る。
「アラブの天気は変わりやすい。晴れていても、突然、曇って雨が降ることもある。それを覚悟し、傘を持参するかどうか判断するしかない」
11日には、イラク中部の有力部族ドレイミ族の一員が、武装グループは「24時間以内の解放」を否定したとテレビ局に語った。イラク・イスラム聖職者協会が反論した。情報は一層、錯そうした。
■決着15日昼過ぎ=事件は長期化の様相を示し始めた。
カタール発の情報に振り回された外務省内では、「(衛星テレビ)アル・ジャジーラの報道には一喜一憂しない」が合言葉になった。
「私が人質を解放させて見せますよ」
日本側には自信たっぷりに公言する、イラク人の仲介者の“売り込み”が相次いだという。ある政府高官は、「『おれが、おれが』の動きが、事態を複雑化させている」と困惑を隠さなかった。
15日昼過ぎ。バグダッドにいる上村司イラク臨時代理大使の携帯電話が鳴った。有力なイラク人の情報源。待ちわびていた朗報だった。
「3人が間もなくバグダッドで解放される」
上村氏は、指定された市内のモスクに駆けつけ、人質と面会した。
外務省幹部は15日夜、こう語った。
「実は、いつでも急転直下の解放があり得ることは分かっていた。それが今日なのか、何日か後なのかが分からなかった」
スンニ派に影響力を持つ「イラク・イスラム聖職者協会」などを通じた「水面下のパイプ」が維持されていたのだった。
小泉首相が14日夜、首相官邸で記者団に対し、「はっきりした情報はないが、身は安全だという情報が多い」と語ったのも、この筋を通じてもたらされた情報によるものだった。
川口外相は15日深夜、外務省を離れる際、笑顔を見せずにこう強調した。
「まだ2人残ってますから、対策本部はまだ閉めません。まだ半分です」
(読売新聞)[4月16日8時50分更新]