現在地 HOME > 掲示板 > IT5 > 225.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
カリフォルニア州アナハイム発――米国防総省の先進技術研究機関である国防高等研究計画庁(DARPA)は、SFまがいのプロジェクトの数々で知られている。しかし2200人が参加し3日間に及ぶ『DARPAテック』会議の初日の9日(米国時間)、同庁が行なった発表はまぎれもなく現実的な話だった。いつも通りの「絵に描いた餅」のような構想――自らを組み立てメンテナンスも行なう衛星、指令に従って形状を変えるジェット機など――のほかに、ティクリートやバグダッドといった都市部で戦う兵士の支援という新たな目標も発表された。
DARPAのプログラムの責任者らは、イラクでの戦闘を――そしてジェシカ・リンチ上等兵の名も――繰り返し引き合いに出し、イラクの市街地で反乱勢力が使う、狙撃、路肩爆弾、ロケット弾から米兵を守るために考案された作戦をいくつか発表した。
しかしDARPAが示したのは、現在直面している脅威の短期的な解決策にとどまらなかった。米軍が、これまでとは事情が異なる市街戦でも、従来の戦場で戦うのと同じように優位に立てる構想を披露したのだ。
DARPAの戦略技術局(TTO)の副責任者、ゲリー・グレアム氏は「開けた場所で戦っているときは、空は空軍が、また陸地は陸軍が確実に制している」と語る。「今度は市街地を制圧しなければならない」
しかし米軍は、まずは、いかに敵の狙撃兵に狙い撃ちされないようにするかを考えなければならない。2ヵ月という、猛烈な速さで進められた開発プロジェクトを経て、DARPAは『ブーメラン』という新システムを考え出した。これは大型軍用車『ハンビー』に搭載されたセンサー群で、狙撃兵が射撃してくるおおよその位置を割り出せるようになっている。現在、このアンテナ様の装置が50組、イラクに向かっている途中だ。
ブーメランの仕組みはこうだ。まず、1組にまとめられた5つの音響モニターが、ライフルの銃口からの爆発音と、発砲で生じる衝撃波を捉える。そしてその2つの音――衝撃波は超音速だが、爆発音は音速で伝わる――を比較して、だいたいの発砲位置を特定する。すると、時計の文字盤上の数字と同じ配置のライトを備える携帯端末が、兵士に基本的な方向を教える。
次の段階では、ハンビー部隊の中でブーメランのセンサー群をネットワーク化する。受信装置を連携させれば、狙撃兵やロケット弾を発射する反乱軍兵の位置をより厳密に突き止められるはずだ。それによりブーメランは、どのビルから発砲されるかを割り出すことができるのだ。コードネーム『十字線』(Crosshairs)というこの新構想では、狙撃兵が潜伏拠点にしている窓も特定できる可能性がある。DARPAは、来月にも十字線計画を公表することになっている。
ホテル『アナハイム・マリオット』の格納庫程もの広さのある宴会場をいくつか会場にしているDARPAテックでは、このほかに発表された研究プロジェクトも明らかにイラクを念頭に置いていた。
米軍の狙撃兵の活動範囲をネットワーク化する計画も提案された。これにより、各狙撃兵は連携して単一のゲリラ隊に集中できる。さらに、テンポラリー・バリアについての説明もあった。急速に広がり、かつ急激に固まる泡でできたバリアで、市内の通りを遮断する際に使えると見られている。
「最近は、いつもニュースを見るたびに、これまでとは戦術が変わったことに気づかされる。もう、従来のように広大で開けた場所で戦うということはないのだ」と、DARPAの『特別プロジェクト局』(SPO)のポール・ベンダ氏は語る。「都市部で発生する問題への新たな対応策を確立できないかぎり、米国は戦略的な優位性を保てないだろう」
しかし今のところ、こういった都市部で発生する問題のいくつかが、DARPAを足踏みさせているのは明らかだ。攻撃される前に自爆テロ実行者の位置を特定することは、依然としてきわめて困難だ。この問題への取り組み方について、ベンダ氏はいくつか考えを持っていた――榴散弾が詰まった爆弾ベルトの位置を突き止められる、低出力のマイクロ波もたぶん一案だろう。しかしベンダ氏は、防衛関連企業、政府系機関の研究者、大学の研究者などの聴衆に意見を求めた。
「爆弾を特定する方法を考え出せるだろうか?」とベンダ氏は尋ねた。
DARPAがこうした質問をしているという事実が、防衛政策のシンクタンク『グローバル・セキュリティー』の責任者であるジョン・パイク氏にとっては新鮮な変化だ。
「ベトナム戦争以降では、DARPAが現行の作戦でこれほど注目されたことはなかったが、これは驚くことではない」とパイク氏は電子メールに書いている。「長期戦に陥ったのは、ベトナム戦争以来これが初めてだからだ」
さらにパイク氏はこう書いている。「これは米軍がやらざるを得ないことなのだ。彼らはこの1年間、市街戦を戦ってきた。米軍は市街戦を好まない。自軍に被害が出るからだ」
しかしDARPAは、近い将来の新しい任務だけでなく、かなり先のことも視野に入れている。
市街地のビルとビルの間やビル内部では、兵士たちは待ち伏せされやすい。DARPAは透過性の無線周波数を使って、ビルに入らずに内部の詳細図が作れるようにしたいと考えている。また、反乱勢力は地元の市民にうまく溶け込むことができる。そのためDARPAでは、20キロメートル以上の上空に浮かぶ巨大な飛行船に搭載して市内全体を見渡せる偵察システムを考えている。そのほか、狙撃兵は米軍隊を屋根の上から攻撃できるため、DARPAは現在、兵士がビル側面をつたって降りるだけでなく、登ることもできるよう、外骨格のように身体を包み込む戦闘服と、ヤモリの手のような粘着パッドを研究している。
「『スパイダーマン』のように、ビルの側面をすばやく登っていけるようになりたい。粘着性のクモの巣をズボンの尻ポケットに入れているという人がいたら、話を聞いてみたい」と、グレアム氏は冗談交じりに語った。
[日本語版:近藤尚子/高森郁哉]
[2004年3月11日 2:00am PT]
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20040312302.html