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袖幕の風
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投稿者 愚民党 日時 2004 年 1 月 26 日 08:36:10:ogcGl0q1DMbpk
 

1


舞台を立ち上げ更地にする人間はつねに劇場をその頭脳と身体に宿している。

これを舞台生成者における職人性という。

袖幕から仕掛けのために動く黒い人間が見ると、舞台があり、その向こうに観客席がある。そして

黒い幕がある。黒幕は現実を遮断し覆い隠すためにあり、舞台と観客の至福な応答関係を構築

するために天井からぶら下がっている。幕は観客席と舞台の境界を形成する緞帳のことではない。

舞台が表であるとするなら、その裏での進行を観客から覆い隠すためにある。

 白塗りをする暗黒舞踏にとっては、劇場の黒幕を養生することから出発する。劇場ホ−ルの袖幕

は30万円から50万円はする。劇場ホ−ルのスッタフはいつでも、しろうとのカモを待ち構えている。

白く汚すなら弁償である。そして舞台床に引くリノリュ−ムも同様である。劇場ホ−ルは白塗り暗黒

舞踏にはリノリュ−ムを使用させてはくれない。舞踏団は50万円のリノリュ−ムを用意しなくてはな

らない。リノリュ−ムを貼るときは必ずビニ−ルテ−プである。市販されているアクリル・テ−プは、は

がすとき接着剤がリノリュ−ムに残る。劇場スタッフはアクリル・テ−プを貼っていても、けして注意は

してくれない。むしろ喜んでいる。リノリュ−ムの買い替えを、しろうとのカモに押し付けることができる

から。ゆえに舞台生成者に党派性が必要であることが明白となる。武器に無知な即時的な人間は、

この世界で生き延びていくことはできない。

 黒幕を養生するときは、安全ピン・ガムテ−プなど使用してはならない。バネがついたクリップを

使う。これでとめる。劇場ホ−ルスッタフは袖幕に穴があくことを嫌う。また劇場ホ−ルの黒幕は

高級なので、黒ガムテ−プを使用すると幕表面の布繊維細胞を傷めてしまう。

ダンスは白塗りをしないので袖幕の養生は必要としないが、暗黒舞踏にとってリノニュ−ムと幕に

関する無知の涙であってはならない。

スロヴェニア・ジリ自由劇場での公演袖幕には和紙が
天から吊られている。これで袖幕を養生できる。

とりふね舞踏舎主宰・三上宥紀夫氏のアイデアである。

和紙をつかわない公演のときは遊行舎の黒幕を全部

つかい袖幕を養生してきた。白塗りで汚さぬよう。

楽屋の床からイス、そしてトイレのドアのノブ、通路は

全部、新聞紙で養生する。袖の床も新聞紙で養生する。

バレ−・モダンダンス・日本舞踊公演ではありえない。

主に女性出演者がやる。男性は舞台つくり。

染めあがった布地を舞踏舎からもらい、衣裳は出演者

自身が縫う。男性も自分で縫いつくる。

ダンスと違い、暗黒舞踏は手作りの汗を重要視する。

衣裳は稽古でどんどん汗を吸わせる。

ゆえに舞踏は真新しい衣裳を着たダンス・バレ−と

違い、よそよそしさがない。

時間の遺伝子に帰還する表現体だからである。

公演が終了すると養生新聞紙をまるめたゴミ袋が

山となる。そして楽屋を徹底的に清掃をするのも

男性が舞台をばらしている時、女性出演者の仕事

となる。

ジリ自由劇場のスッタフは大量の新聞紙がまるまった

ゴミ袋を置いて行ってもいいと言ってくれた。握手をした。

熱い手だった。

 
 

 
2002年3月スロヴェニア・ジリ自由
劇場。舞台裏に大黒にも一面に、

和紙がつるされている。

それが舞台美術へと置換される。

三上宥紀夫氏のひらめきには

驚嘆する。音響はリヴュリア−ナ

大学生のロックさん。照明は舞台

監督の寅川さん。なんでもやる、

とりふね舞踏舎の伝統である。

スロヴェニア首都青年劇場での
舞台稽古。袖幕から舞台裏大黒

まで全面に和紙が吊られ、

黒幕を養生している。

そして、むしろがぶら下がり

縄文の時間が降臨する。

舞台奥にはスロヴェニア出演者

の若者たちが。

空間は三上宥紀夫氏の故郷青森

へと変容する。

遺伝子の通低回路が開く。

照明は池亀誠一郎氏。

音響は尾崎弘之氏。

舞台監督は寅川英司氏。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~kayaman5/sode01.htm

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2

次に制作の諸問題がある。

革命運動でいえば総務局であろう。照明・舞台屋をめざす若い女性は群れとしているが、制作をめざす

女性はいない。瞬時な神経と頭脳を全面展開するがゆえに、神経はボロボロとなり廃人となるのが制作

の仕事といわれている。金銭を統括するがゆえに出演者からは恨まれ、スタッフからは恨まれ、また観客

応対が悪いと苦情が殺到する。見返りがない仕事であるがゆえに、党派性がないとできない。

東京の演劇界は制作会社に任せているところが多い。ゆえに雇われ人思想が東京の舞台戦線では謳歌

している。

 東京の舞踏界がひとりの党派に追い詰められてきたのは、制作が皆無だったからである。

大駱駝鑑はキャラメルア−ツという制作会社があり、新船洋子氏というすぐれたプロデュ−サ−がいる。

吉祥寺にはすぐ劇場に転化する稽古場を保持している。ゆえに泥の芸能の集団性を獲得し若い人材が

実践において鍛えられ育っている。大駱駝鑑とはひとり一党であるという芸能の党派性の呼び声である。

舞台制作者にとって見なくてはならないのは、舞台のあらさがしではなく、まずその組織である。

 宣伝は最低四ヶ月は必要とする。制作者はまず舞台が赤字になる前提から出発する。

赤字を少しでも減らすためには、ともかく宣伝でしかない。行為には必ず結果が生まれる。無為には

無為しか産まれない。公演チラシは千枚をまいてひとりの観客である。500人の観客を目標とするなら

仮チラシも含めて5万枚はまかなくてはならないのが鉄則である。鉄砲から革命は産まれないが選挙に

おいては宣伝チラシは紙の弾丸であるといわれている。

 万有引力は劇団新聞を公演チラシ用としておりこみしている。それは公演チラシとは選挙の党派宣伝

と同義であるイデオロギ−宣伝戦争であることを納得しているからである。公演チラシこそ党派新聞で

ある。ゆえにそれは街頭で配布され、他党派の公演パンフレットにおりこんでいく。ここで制作者にとって

謙虚の美学はおめでたい人間として通用しない。どこまでもずうずうしく、他党派から嫌われる人間であら

ねばならない。

 劇場におりこみに行く場合は二週間前から劇団あるいは舞踏団に電話を入れる。予約をとるためである。

人気のある劇団はすぐ「いっぱいになりました」と言われてしまう。ゆえに早くから電話をしていく必要がある。

おりこみの武器は紙をあつかう指サックが必要となる。セックス用の指サックではない。

ひとり1500枚までは可能であるが、2000枚を越えたら、手助けを探す必要がある。

応対してくれるのは党派の制作である。そこでその組織を分析することが可能となる。

劇団・舞踏団公演におりこみに行くのは、その党派の制作構造と出会うためである、組織の強さと弱さは

制作に集約されている。ダンス発表公演の制作はほとんど手伝いであり、制作システムは確立していない

からおりこみに行っても、口を出してはならない。行政主催の公演では制作は公務員であるから、言われた

通りにするのが肝心である。

 おりこみに行ったら必ず、まとまったおりこみチラシをもらってくる必要がある。

今後のおりこみ計画を練るデ−タとなり、現在進行形の舞台戦線がつかめる。

制作が若い女性である場合、めんどうとなる可能性がある。ビニ−ル袋に公演チラシを1枚1枚入

れたり、時間がかかりやっかいになることもある。

 制作ひとりでも余力があれば大学での学生公演を重視する。学生公演のおりこみをした帰りには

学生食堂に無断でポスタ−を貼り、チラシを貼ってくる。

 

 

http://www5b.biglobe.ne.jp/~kayaman5/sode02.htm

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3
                           

 

 次に舞台生成者の組織諸問題がある。

遊行舎もとりふね舞踏舎も寺山修司・天井桟敷、そして土方巽・暗黒舞踏の流れを汲んでいる。

60年代にその源をみる。

演出家と主宰者は同義であり、ここで制作で働く人間、そして舞台で観客と拮抗する演者という3人がいれば

公演は打てる、これが60年代からの舞台生成者の組織論であろう。最終赤字は演出家であり主宰者が背負

う構造である。

 60年代すでに宝塚歌劇団や東宝演劇そして各新劇劇団においては制作部が確立されていた。

戦前から蓄積されたリアリズム俳優術という技術をもって、俳優座・文学座・民芸・青年座などの俳優は日本映

画の最盛期に出演し、ギャラを劇団に投入し、それが新劇劇団の資本となる。

テレビ放映の出現はドラマ放映のため俳優を必要とする。時代劇には歌舞伎俳優が活用される。

各新劇劇団と歌舞伎俳優に資本がテレビ局から流れる。日本共産党が大衆文化運動として組織した戦前プロ

レタリア演劇運動の蓄積の上に労働者演劇鑑賞会が全国各地で組織され、各新劇劇団が作品を提供する。

60年代の全国上演をなしとげ勤労者を劇場へと組織していたのは各新劇劇団だったのであり、アンダ−グラ

ンド劇団はたんにマスメディアが興味半分にとりあげられていたに過ぎない。

 現在の日本における全国上演の構図は労働者演劇鑑賞会が発展的解消として成立している、各地の市民

演劇鑑賞会が各新劇劇団の作品を買い会員に向けて上演するというシステムがあり、各自治体行政としての

芸術文化振興財団が作品を買い上げ、おのれの箱で上演するシステムがある。さらには制作会社が文化庁

の芸術振興基金をとりながら上演するシステムがある。日本の上演構造は60年代からのシステムによって

確立されている。

 そこで舞台生成者の組織論が登場する。

まず出演者になぜノルマが必要なのか?

劇団あるいは舞踏団に公演準備金としての資金が皆無だからである。ゆえに事前に出演者から前売りチケ

ットを渡し、その枚数分のお金を制作に納めてもらう。これで制作は公演準備金をつくる。

衣裳の布を買ったり、小道具を買ったり、さらには舞台をつくるための消耗品を東急ハウンズあるいは金物屋

から買う。さらには劇場に入ってからスッタフの食料費支払いが発生する。仕込み2日、公演本番3日として、

スッタフ食料費だけで6万円〜10万円はかかる。東京の劇場に入ると照明屋は若い女性見習を6人は連れて

くる。弁当を食べてもらうためには、ウ−ロン茶などをボトルで用意しなくてはならない。黒幕が足りなければ布

を買ってくる。黒ガムテ−プは10本用意する。1本500円として5000円。白ガムテ−プは5本、2500円。

養生ビニ−ルテ−プ1本350円を5本。仕掛けつり込みがあると細引きという黒い加工綿ロ−プをひとまき

東急ハウンズから買ってくる。2万円近くする。ドライアイスを使用するとレンタル代・氷代が発生する。

 台本制作費から東京の稽古場代、小道具代そして舞台消耗品代、スッタフ食料費だけで30万円〜40万円

はかかる。ゆえに公演準備金としてのノルマは必要なのである。

スッタフ支払は公演本番における現金収入が基金となる。出演者のノルマは幕をあげるまでに消えている。

当日券と出演者がまいた前売り扱い当日清算券さらに制作が郵送したこれまでアンケ−トに記入してくれた

観客に郵送するダイレクトメ−ルに入れた前売り扱い当日清算券さらに電話予約が、現金収入の基礎となる。

出演者の受け付け預かり前売り券は出演者に封筒に入れて返す。

 現金収入が少ないと劇場費払いのみとなる。小劇場でも35万〜40万である。そしてスッタフ支払は赤字

となり、主宰者の背に重くのしかかる。ゆえに制作は赤字を前提として出発する。

人材と資本がない劇団と舞踏団では制作の主軸は演出・主宰者である。ゆえに彼には常に危機感がある。

宣伝チラシをつくり新聞社へのアプロ−チ、出演者とスッタフからさまざまな電話が彼のところに押し寄せる。

そして公演が終了してからも最終支払まで重い責任から解放されることはない。チラシに制作と名前が掲載

されようと、厳密にはその制作を担う人間は制作補助にしか過ぎない。

 ゆえに劇団ではできるだけ主宰者の荷をへらすため、制作の仕事に没頭する。制作の仕事は現実社会へ

の接近としてのリアリズムの闘争である。制作を思想の執行として中軸に置いていない劇団・舞踏団はやが

て党派を解体させ市民社会に消えていく。反新劇として成立した60年代アンダ−グランド演劇は築地小劇場

以来の日本国家権力との緊張した日本プロレタリア演劇運動からの人材育成・組織生成の歴史を無視した。

彼らが関心あったのは西洋かぶれした新劇の舞台に対する嫌悪の感情である。そこから土俗なるものへと

幻想の国家へと向かった。それはもうひとつの劇場として現出せることに成功した。

 しかし歴史とはいまだ解かれぬ人間の組織として地底深く惰眠をむさぼっている。寡黙な昼下がりの老人

のように。そして西洋かぶれした赤毛の舞台裏には天皇絶対主義国家権力から組織を維持した制作人間

が存在していたのである。日本プロレタリア演劇運動の形状として。それが60年安保闘争で右翼過激派か

ら釘がついた棍棒で打たれ、血だらけになった新劇俳優と舞台裏人間のデモ隊であった。まさに血は立った

まま眠っていたのである。国会議事堂前の道路に血だらけになったおのれの屈辱をバネにして、60年代、

各新劇の劇団は全国上演の組織戦に党派として出発したのである。

 人材も資本もない劇団・舞踏団の制作人間が注目するのは舞台ではない。党派としての組織である。

それが赤字を減らし公演を打てるための過程としての夜と夜の夜なのだろう。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~kayaman5/sode03.html

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4

次に街頭宣伝における諸問題がある。

観客はよほど劇場に足をはこぶのが好きでないと、次は来ないのが常識。

アンケ−トに住所を記名してくれるのは、ほとんど出演者のお客であり、その出演者が次回の公演に出演

しなければ、たとえDMを郵送しても劇場には来ないことはあたりまえとなる。

ゆえに舞台生成者は公演ごとに新しい観客を宣伝によって組織しなければならない。

観客を魅了する看板女優・看板男優を劇団が形成できないかぎり、劇団にお客さんはつかない。

ある観客がある舞台俳優に魅了される場合、1次要素は俳優の音声振動である。次に舞台に立つ身体

である。俳優とお客の恋を劇場に誕生させる力こそ芸能集団のカリスマである。

歌舞伎はこうした構図を江戸時代以来今日に継承させている。

 寺山修司・演劇実験室●天井桟敷を引き継いだ万有引力には魔術的演出家であり音楽家のJ.A.シ

−ザ−さんという天才がいる。観客はシ−ザ−さんと恋をするために劇場に足を運ぶ。

暗黒宝塚歌劇団・月蝕歌劇団には高取英さんというマンガから純文学まで狩猟する天才がいる。そして

月蝕歌劇団の女優軍は演劇少女、アニメ少年たちを魅了して、女優にはファンクラブがある。

 人材も資本もない劇団・舞踏団はただしくしくと宣伝し、名前を浸透させるしか方法はない。

 そして街頭宣伝である。

街頭でのチラシまきはひとりでやるのが鉄則である。

東京の劇場で公演するときは、必ず上野駅・東京文化会館前で公演チラシを街頭配布する。

そこは首都、美術館・博物館都市の入り口である。ほぼ北関東の人間が休みにやってくる。

全国に1枚でも波及させるのは、東京でここしかないであろう。

2000枚ははける。

 東京、中野・阿佐ヶ谷の小劇場で公演するときは、その近辺の居住郵便・新聞受けに全戸配布する。

中野・高円寺・阿佐ヶ谷には演劇人やダンサ−たちがアパ−トに住んでいるので、彼・彼女たちの郵便・

新聞受けに公演チラシを入れ、話題性を獲得する。

 中劇場公演であっても余裕があれば、「劇場の外から劇場を攻める」宣伝戦として劇場の周りの地域に

公演チラシを配布することは重要である。

 街頭チラシまきの方法。

1、まず腰をひくくとる。バランスを安定させると同時に視点が通行者の手元にいく。

2、通行者の手のひらに公演チラシを渡すためには、下から通行者の親指と人差し指のあいだに

  ごく自然に風のように挟み込む。リズムある流れである。上半身はおじぎをする形をとり、同時に

  「こんにちわ〜」と声をかける。通行者が受け取ってくれたときは「おまちしております」

  偉そうに立っていても、通行者はチラシを受け取ってはくれない。

  とにかく前から来る通行者はチラシ宣伝者の行為を見ている。腰をひくくとっていれば、嫌悪感を与える

  ことはない。通行者の自尊心こそ重要である。

3、ひとりの通行者に渡し上半身をあげたときは、次のタ−ゲットを測定し、通行の流れをみる。

4、劇団・舞踏団の事務所がある根拠地では、駅頭チラシまき宣伝は有効である。

  3年も同じ場所でやっていると、顔を売ることができる。

  行政には、また日常活動しているな、という劇団組織の強さを印象付けることが可能となる。

  そしていつか商店街には遊行寺で働く寺男として認定される。

5、特に根拠地での駅頭チラシまき宣伝で重要なことがある。

  政党の政治宣伝に果敢に介入し、劇団チラシをまくことである。

  政党の音声マイク演説が街頭の祭り性を高揚させ、通行者はよく劇団のチラシを受け取ってくれる。

  政党の宣伝チラシだと思ったら、たかが芝居屋のチラシで通行人の話題性を獲得できる。

  衆議院選挙・参議院選挙などは積極的に駅頭宣伝に介入する。そこでひとり劇団チラシをまく。

  「こんにちわ〜」「おまちしております」と元気よく通行者に声をかける。

  政党は共産党以外に選挙が終われば街頭宣伝はしない。

  選挙の祭りを集約するのは舞台生成者のワ−クショップ参加者を募集するチラシ宣伝である。

  そこにおいては日常的宣伝する劇団の執念と根性が政党以上にがんばっていると、

  駅頭周辺に浸透する。これが劇団党派の泥の芸能である。

  これはひとりでやるのが鉄則である。

6、駅頭宣伝では時間帯が重要である。根拠地において話題性を獲得するためには

  早朝5時の始発から開始する。ほぼ1時間半でよい。そしておのれのバイトに向かう。

  深夜終電の時間、夜11時半から1時である。

  これで「よくがんばっている」という話題性が根拠地に浸透する。

  アパ−トに帰り焼酎を飲んで、インタ−ネットをやって寝る。

7、根拠地での公演のとき、事前にこのような駅頭宣伝をやっておけば、全国新聞の地域版に

  劇団公演を掲載してくれる可能性が準備される。稽古が開始されると、数々の準備で制作ひとり

  では、なかなか駅頭宣伝ができなくなる。新聞に公演案内記事が掲載されたとき、事前の仮チラシでの

  駅頭宣伝が立ちあがってくる。

8、人材と資金がない劇団・舞踏団にとって、その仮チラシをどこで印刷するかの命題がある。

  自分の場合は鎌倉市に住んでいるので、近くの玉縄公民館である。ここではインクを買えば無料で

  印刷機を使用させてくれる。市民センタ−や公民館には必ず印刷機がある。

  印刷紙は市販のコピ−紙をつかう。ドッラクストア−が安い。また自分は鎌倉芸能クラブという団体を

  でっちあげ鎌倉NPOに参加している。大船駅の近くのNPO事務所でも印刷機を使用できる。

  ここでは1枚につき50銭の印刷機使用料がかかる。

  玉縄公民館ではインク二本で6000円を印刷機をあつかっている商会から購入しなくてはならないが

  後払いなので、不払いにしておけばよい。

  チケットもここで印刷し公民館から切断機をかり、つくるわけである。

9、舞台生成者にとって根拠地における展開は、どの場所で何がつかえるのか、またそこが駄目になった

  ら、次はどこがつかえるのかを、自転車で回りながらふだんから捕獲しておく必要がある。

  とくに民衆かぶきの場合、近所の日本舞踊をやっている先生と親密になっておくことは重要である。

  着物・扇子等いろいろもらえる。

10、人材と資本のない劇団・舞踏団にとって、それにかわるものは根拠地展開である。

                               (2002)

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