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安全に“男性自身”を元気にする漢方
心因性の勃起不全に優れた効果
洋の東西を問わず、いつの時代も男性機能を回復させる薬や食品は話題になってきた。日本に最初に登場した勃起不全(ED)治療薬、バイアグラ(一般名:クエン酸シルデナフィル)の場合、米国からの並行輸入が社会問題にまでなり、政府は薬価適用外という異例の形で製造承認した。この4月には、同じ治療薬のレビトラ(塩酸バルデナフィル)が製造承認され、市場は拡大を続けているようだ。
現代はストレス社会といわれ、疲労や運動不足なども関連して、EDが増えているとされる。実際、ED治療薬の輸入代行サービスをうたうホームページも多い。ED治療薬はEDに悩む男性にとって正に救いの神ではあるが、心筋梗塞や頭痛、ほてりといったさまざまな副作用があり、かつ胸痛や狭心症などによく使われる硝酸薬を使っている人は使用できないなど、服用できる人に制限もある。
現在発売されているED治療薬は、すべてPDE-5(ホスホジエステラーゼ-タイプ5)阻害薬である。陰茎組織にあるPDE-5と呼ばれる酵素は、勃起に関与する生体内物質を分解する作用がある。PDE-5阻害薬はこの酵素の働きをブロックし、結果的に勃起反応を長くし、かつ強化する。
一方、漢方では、勃起障害などの精力減退は、生命のエネルギー源とされる「腎気」が衰えるために起こると考えられている。腎気は幼少期から次第に体内で増加していって、青年期にピークに達し、その後、加齢とともに減少していく。中年期以降は「腎虚」と呼ばれる状態になる。「腎虚」になると、疲労感、頻尿、排尿困難、性欲低下、冷え、しびれなどの症状が出やすくなるといわれている。
「腎虚」の状態を改善することによって、これまで腎気の衰えのためにうまくいかなかった興奮の伝達がスムーズになると予想されている。勃起を促す脳や神経の働きが活発になるため、勃起障害の中で最も多い心因性の勃起障害に対して、漢方は優れた効果が期待できる。
減少した腎気を補うため、漢方では具体的には、補腎剤と呼ばれる「牛車腎気丸(ごじゃじんきがん)」、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」、「六味丸(ろくみがん)」などを使う。牛車腎気丸は疲れやすく、冷えや下肢のしびれが強い人に対して用いる。八味地黄丸は、胃腸が丈夫で、比較的体力がある人の高血圧や糖尿病を緩和し、下半身の機能低下にも有効である。六味丸は、古い書物に「性的衰弱で陰痿、遺精、耳鳴りを訴え、根気無きもの」に効くとあり、牛車腎気丸、八味地黄丸と同じように排尿障害など、下半身の病気に効果がある。
性欲の衰えを感じ始めたら補腎剤を飲んで、いつまでも若々しく生活したいものである。
(天野 宏=医療ジャーナリスト)