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http://www.asahi.com/health/medical/TKY200408040198.html
赤ちゃんのへその緒から採れるさい帯血を冷凍保存し、将来子どもが白血病になった場合に治療に使えるよう保管しておくビジネスが急成長している。さい帯血移植には出産時に多くの人から集め、発病して治療が必要な人に提供できるよう一時保存する公的バンクがある。バンク側は「善意で提供され、必要な人に無料で配分する社会全体での支え合いが崩れかねない」と懸念する。
国内では97年に非血縁者間のさい帯血移植が始まり、「日本さい帯血バンクネットワーク」(東京都)が、国の支援を受けて99年に公的バンクとして発足した。
民間企業による「私的保管」も同じころ始まった。他人への提供を前提にした公的バンクと異なり、「あなたの赤ちゃんのためにお預かりします」などと呼びかけ、子どもが将来発病したときに備えて保管する。「ステムセル研究所」(東京都港区)は99年に開業。初年の受付数は129件だったが、4年目には1000件を超えた。
02年ごろには茨城県つくば市、神戸市の企業も加わった。新たに横浜市の企業も開業を準備中。3社が保管するさい帯血の総数は計6000件にのぼり、公的バンクの保管数1万9000件の3分の1に迫る勢いだ。
私的保存には10年契約で20万〜30万円かかる。3歳と1歳の子どものさい帯血を預ける埼玉県の会社役員(41)は「万が一のとき助かるなら。保険のようなもの」と話す。
こうした私的保存に、公的バンク側は批判的だ。同ネットワークは2年前、私的保存に関する「警告文」を発表。将来、移植に使える状態で保存されているのか、採取時に細菌が入らないよう手順が徹底されているのかなど注意が必要とした。
移植専門医でつくる日本造血細胞移植学会の小寺良尚理事長も「公的バンクの指針に沿って採取、保管されたさい帯血でないと移植手術は引き受けられない」と指摘する。
また、現在さい帯血の提供数が逼迫(ひっぱく)しているわけではないが、私的保存が広がることで、将来公的バンクへの提供数が減るのではとの懸念も出ている。厚生労働省の専門家会議は02年に「ドナー(提供者)が将来、少なくなる」と指摘している。小寺理事長も「有償の保管ビジネスは、公平公正であるべき移植医療を損ないかねない」と心配する。
同ネットワークは「そもそも移植が必要になる確率は10万人に1人と低い。広く利用される公的バンクに協力してもらいたい」と話す。
こうした批判に対してステムセル研究所は「公的バンクとのすみ分けは可能で、安全性に問題はない。将来、預けた人が必要ないと判断した場合は公的バンクに提供するなど連携することも考えられる」としている。
厚労省臓器移植対策室は「私的保存は、公的な医療では想定していなかった」と戸惑いをみせるが、「さい帯血移植は薬事法などの対象外で、ビジネスを規制できない。なにかトラブルが起こったともまだ聞いていない」として様子見だ。
〈厚生科学審議会造血幹細胞移植委員会委員長の斎藤英彦・名古屋医療センター院長の話〉 保存したさい帯血の幹細胞が、将来の再生医療に使える可能性はあるが、現時点では未知数だ。赤ちゃん本人が白血病などになる確率は低く、また、万が一、病気になった場合も自分の細胞を移植したのでは、拒絶反応を利用した治療効果は期待できない。何よりもヒト由来の細胞を、私的な商売に利用するのはどうかと思う。
〈さい帯血移植〉 へその緒と胎盤から採れるさい帯血は、白血球や赤血球などのもとになる細胞を含み、白血病や再生不良性貧血などの血液難病の治療に使われる。同じ目的で採取、移植される骨髄に比べて、(1)提供者に危険がない(2)白血球の型(HLA)が一部異なっても移植可能なため、適合患者が多い、などが特徴。血液難病で移植が必要な人は年間約2000人。非血縁者間のさい帯血移植は03年度に695件と前年度の2.4倍に増え、骨髄移植数とほぼ並んだ。 (2004/08/04)