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虚構の自給率:連載「問いかけるもの(2)」
Kyoto Shimbun News 2004年6月2日(水)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004060200110&genre=O1&area=K00
写真
巨大サイロに米国からの輸入トウモロコシを積み降ろすタンカー(神戸市東灘区・神戸港)
パソコンの画面に映る数字が、刻々と変わっていった。「2・98ドル、3・50ドル、3・10ドル」…。米国シカゴ穀物取引所のトウモロコシ相場だ。
「まだ上がるぞ。日本は買うのか」「投機資金が大量に流れ込んでいる」「今後の見通しはどうだ」
東京都内で穀物専門商社を営む茅野信行さん(55)は胃の痛みをこらえながら、国内外の取引先から殺到する電話への対応に追われた。
■エサはほとんど輸入
年明けから上昇傾向にあった相場は、4月に入って激しく高騰した。4月5日、相場は一ブツシエル(25キロ)3・35ドルまで上がった。平均より1トン当たり3000−4000円も高値だ。「投機筋にとって穀物相場は株や債券と同じ。マネーゲームにほんろうされるのは宿命だ」。かつて米国の大手穀物商社で国際取引の最前線に立っていた茅野さんは、事もなげに話した。
同じころ、京都市下京区の京都府配合飼料価格安定基金協会の事務所で、礒井進常務理事がシカゴ市況の動きに困惑していた。協会の会員の約7割が養鶏農家。輸入飼料の価格変動による経営への影響を、基金を使って和らげるのが協会の役割だが、礒井常務理事は厳しく現実を見つめた。「卵は原価の5割以上がエサ代。原料を穀物メジャーに依存している現状では、しわ寄せは免れない」
穀物メジャーとは、米カーギル社など巨大穀物商社。世界中で生産される穀物の集荷や流通を支配し、各国の畜産業にも多大な影響力を持つ。
日本の卵は、国内自給率96%を誇る。しかし、鶏の主飼料のトウモロコシは9割、大豆も8割以上を米国からの輸入に頼る。カロリーベースで見れば、自給率は9%でしかない。
2000年秋、国内では認可されない米国の遺伝子組み換えトウモロコシ「スターリンク」が食材に混入していた。日米で安全性の見解が異なり、積み荷が米国に送り返されるケースも。「ロシアンルーレットのように戦々恐々だった。弾を詰めるのは米国、引き金を引くのは日本だ」と大手商社の元穀物トレーダー(62)は振り返った。
一方で、かつて穀物輸出国だった中国が、経済成長や食生活の変化に伴い小麦や大豆の輸入を増やしている。
「トウモロコシの輸入大国になるのは時間の問題。世界中で穀物不作が重なれば、在庫が底を突く危機もあり得る」と商社関係者は口をそろえる。
安価で安全、高い自給率といった「卵の神話」がきしみ始めた。