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競争激化するアルツハイマー病治療薬(Pharma Business)
http://www.asyura2.com/0401/health8/msg/532.html
投稿者 シジミ 日時 2004 年 6 月 02 日 21:43:24:eWn45SEFYZ1R.
 

http://medwave.nikkeibp.co.jp/medipass/pharma/scrip/index.shtml

多くの製薬企業が、アルツハイマー病治療薬の市場に熱い視線を向けている。アルツハイマー病は、10人に1人が発病する可能性があり、世界の年間治療費は10億ドルと言われている。専門家の予測では、2025年までに患者数は2200万人に増え、治療薬の市場は2007年までに70億ドルに達する。

 現在、エラン、アクソニクス、ベルナバイオテック、セネス、藤沢、イーライリリー、リジェン・セラピューティクス、グラクソ・スミスクライン、ニューロケム、ファイトファーム、キエシなどが、ワクチンや経鼻吸収薬、抗炎症薬、ニューロン再生薬、幹細胞治療など、様々な新型アルツハイマー病治療薬の臨床試験に取り組んでいる。

 長年にわたる研究にもかかわらず、アルツハイマー病の仕組みは完全には分かっておらず、治療法も確立していない。患者の脳内では、大脳の血流低下や炎症、遺伝子の変異、分子レベルでの変成が起こっており、異常凝集や神経原繊維病変が観察できる。記憶をつかさどる領域では神経細胞が死滅し、神経伝達物質のレベルも低下している。

 アルツハイマー病になると、神経細胞間のメッセージ伝達が阻害され、正常な思考や記憶が妨げられる。従来型の治療では、神経伝達物質アセチルコリンの量を減少させないように、アセチルコリン分解酵素(AchE)阻害薬を投与する。最初に承認されたAchE阻害薬はファイザーのCognex(一般名:タクリン)で、1993年に発売された。さらに、エーザイ/ファイザーのAricept(ドネペジル)、ノバルティスのExelon(リバスチグミン)、ヤンセン/シャイアーのReminyl(ガランタミン)が登場した。

 フォレストは2004年1月に、新しいアルツハイマー病治療薬のNamenda(メマンチン、独メルツから導入)を米国で発売した。Namendaは中度から重度のアルツハイマー病に適応がある、初めての治療薬である。米国で医師の診察を受けている450万人のアルツハイマー病患者のうち、中度から重度と診断されている人が約8割を占める。Namendaは、NメチルDアスパルテート(NMDA)受容体を阻害して興奮性伝達物質のグラタメートの放出を抑えることで、症状を緩和する。予想より承認が早かったため、市場で有利なポジションを確保することに成功している。またフォレストは、軽度から中度のアルツハイマー病に対する適応拡大を計画しており、2004年夏頃までには米国で承認申請を行う予定だ。欧州では、メルツとランドベックがNamendaの初期アルツハイマー病への適応拡大を検討している。

 適応拡大のための予備臨床試験は、米国と欧州の2カ所で6カ月間にわたり実施された。米国では軽度から中度のアルツハイマー病患者403人を対象に、欧州では470人を対象に、メマンチンの単独投与とプラセボを比較した。両試験において、メマンチンは良好な結果を得たとされている。

 またメマンチンは、AchE阻害薬と併用すると効果が増すことがわかっている。最近発表された論文は、中度から重度のアルツハイマー病患者を対象とした試験で、メマンチンとドネペジルの併用の方が、ドネペジルの単独投与より、認知力の低下を抑える効果が強かったとしている。


アルツハイマー病治療薬の新顔

 一方で、いくつかの新たなタイプの治療薬が開発途上にある。リジェン・セラピューティクスのColostrinin(コロストリニン)は、現在フェーズ2の段階だ。Colostrininは、母親から最初に分泌される乳に含まれる物質で、抗体を豊富に含んでいる。患者の脳内で、異常凝集を溶解する効果があると考えられている。

 経鼻吸収型の治療薬も、期待を集めている。経鼻吸収型は薬剤が代謝を受けずに患部に到達するため、その効果が高まるからだ。ナステックが開発した点鼻薬は、現在、前臨床の段階にある。経鼻吸収薬では注射と比べて、すばやく簡単に投与できる、侵襲が小さい、痛みが少なく自己治療が可能である、といった利点がある。粘膜浸透剤や吸収経路に対する安全性への懸念が残るものの、製薬企業の姿勢は積極的である。

 また、アルツハイマー病治療用ワクチンの研究も進んでいる。アイルランドのエランはワイスと共同で、軽度から中度のアルツハイマー病に対する免疫治療薬AN-1792の有効性について評価を行った。しかし、2002年初めのフェーズ2a試験で患者4人の中枢神経系に炎症が生じ、その後、同様の症状が相次いだため、このプロジェクトは立ち往生したままとなっている。エランとワイスは、モノクローナル抗体AAB-001と結合ワクチンACC-001についても初期調査を開始している。免疫療法の研究を行っている企業としてはそのほかに、プラナ・バイオテクノロジー、ベルナバイオテック、ニューロケムがある。

 アルツハイマー病向けのワクチン開発において最大の障壁となるのが、どのタイプのアルツハイマー病にも有効な物質の発見が困難であることである。アルツハイマー病は様々な病状を包括した病気であり、発病の仕組みや原因がよく分かっていない状況から、専門家の間では「ワクチンの開発は難しい」とする意見が根強い。


突破口として期待される抗血管新生薬

 アルツハイマー病の研究で、今最も注目を浴びているのが血管新生に関するものである。血管新生は、癌の研究では以前から重要なテーマである。腫瘍への血液供給を断つ効果を持つ抗血管新生薬であるジェネンテックのAvastinは、今年2月に結腸癌の治療薬として米国で認可を受けた。一方で抗血管新生薬は、アルツハイマー病の進行を遅らせる効果もあると期待されている。

 血管新生財団のウイリアム・リー博士とハーバード大学医学部のアンソニー・バグナッチ博士は、アルツハイマー病が血管新生に起因する疾病の可能性があるとランセット2月号で報告している。また、脳の内皮細胞を標的とする抗血管新生薬が、アルツハイマー病の予防と治療に有効かもしれないとしている。アルツハイマー病において内皮細胞が重大な役割を果たしているとの研究結果は、オクラホマ大学のポーラ・グラマス博士など多くの研究者が提示している。

 リー博士らは、脳内の酸欠と炎症により異常な血管新生が起こり、これがアルツハイマー病につながると述べている。この理論は、非ステロイド性抗炎症薬や高脂血症治療薬、ヒスタミン受容体拮抗薬など、様々な薬がアルツハイマー病に有効性を示す事実を裏付けている。リー博士は、「我々は、アルツハイマー病患者の脳内において、異常な血管新生が起こり、それがアミロイドプラークや神経毒素を発生させていると確信している。したがって、抗血管新生剤によって血管の増殖を止めれば、アルツハイマー病の進行を抑えられるはずだ。さらに、予防についても有効性を期待できる」と指摘する。
(Nicole Yost = SCRIP Target World Drug Delivery News)

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