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コロラド州デルタ発――米国西部では、虫たちが冬の寒さから抜け出して活動を開始した。つまり、西ナイル・ウイルスの季節がまたやってくるのだ。蚊の媒介により感染する西ナイル・ウイルスは、米国では、1999年にニューヨークで初めて感染が確認されて以来、1万人以上が感染し、そのうち564人が死亡している。
米国の3分の2の地域では、危険はほぼ過ぎ去った。だが米国西部では、コロラド州西部のリンゴ農場からカリフォルニア州沿岸部に至るまで、衛生担当者たちがウイルス対策の戦略を練っている。
感染した蚊に刺された鳥によって運ばれ、対症療法以外にいまだ有効な治療法がないこのウイルスは、米国西部でもコロラド州以外の地域には、これまでそれほど大きな打撃を与えていない。ただしどの州も、手をこまねいて見ているわけにはいかない。
ワイオミング州は蚊対策プログラムの費用を、昨年の38万7000ドルから今年は170万ドルに引き上げた。アリゾナ州でも予算を倍増させている。
カリフォルニア州では、今年は例年よりも早く、より広い範囲で対策を開始した。見張り役として用意された大量のニワトリ――ウイルスの蔓延を判断するための検査が容易にできる――を対象に、冬期を通じて検査が行なわれており、今年に入ってベントゥーラ郡で初めてのウイルスが確認された。
ロッキー山脈に沿った西側の地域では、コロラド州が再びウイルス流行の中心地となることが懸念されている。米国全体における昨年の感染例9858件のうち2947件――死亡者数では262人のうち61人――がコロラド州で確認されており、米国内では最大の犠牲者が出たためだ。
コロラド州西部のデルタでは、環境衛生を担当するキース・ルーシー氏と蚊対策担当者のジム・テラザス氏が先日、ピクニックや釣りを楽しむ地元住民で賑わう公園の裏にある沼地を検査した。沼地の半分を所有する人物は、蚊対策担当者が立ち入ることを望まなかった。だが沼地の残り半分の所有者は、蚊に成長する前の幼虫を駆除する薬剤の使用を承諾した。
ただしテレザス氏は、沼地の半分だけに対策を施すことにどれだけの効果があるだろうかとジレンマに陥る。「これでは税金の無駄遣いだ」
ルーシー氏はガニソン川沿いにある http://www.audubon.org/chapter/co/co/IBA/7.htm エスカランテ州立野生生物区にも足を運んだ。ここの職員たちは、絶滅の危機にある2種類の魚の産卵を助けるために土手の灌漑を予定している。これが実現すれば、蚊の主要な繁殖環境となるよどんだ水域が増える可能性が高い。
それだけではない。野生生物区のマネージャーを務めるマイク・ゼーマン氏は、約30平方キロメートルに及ぶ保護区において、成虫駆除剤の使用を許可しないつもりだ。成虫駆除剤――蚊の成虫の退治を目的にした殺虫剤――は、機械によって霧状に散布されることが多い。
「霧状散布は対象を選択できない。あらゆる昆虫を攻撃してしまう。ここにはそうした昆虫を餌にするあらゆる種類の鳥がいるのだ」とゼーマン氏は話す。
ルーシー氏はやや困惑した様子でこう話した。「問題は、ここの人たちの主たる関心が野生生物の生息環境に向けられているということだ。しかしここで繁殖した蚊は、ここにとどまるわけではない」
蚊の成虫を退治するには、マラチオンを散布する方法もある。マラチオンは健康を害し、遺伝子の突然変異を起こすとされる毒薬だ。昨年、近くのパオニアに住む住民がマラチオンの散布計画に異議を唱え、この薬品が保管されていた倉庫が何者かによって爆破されるという事件があった。幸い負傷者は出なかった。
「ここで蚊を退治する方法はそれではないという明確なメッセージだ。これがわれわれの陥るジレンマだ」とルーシー氏は語った。
ルーシー氏たちには、わずか2万5000ドルという予算の制約もある。
デルタ郡衛生部門の副責任者を務めるボニー・ケーラー氏は次のように話す。「お金を払えば、それだけの公衆衛生は得られる。もし私に10万ドルくれれば、これまで見たことがないような、見事な蚊対策計画を提供できる」
80キロメートルほど離れたグランドジャンクションではまもなく、コルク栓のような形をした幼虫駆除剤の塊を、市内3000ヵ所以上の路面の排水溝に投げ入れる対策を開始する。担当者たちは10月までの毎月、それら排水溝を点検する。さらに市内の池、散水によって水たまりができるグラウンドや公園、ゴルフ場の池、牧草地、農地などにも幼虫駆除剤が撒かれる予定だ。
メーサ郡の環境衛生責任者、スティーブ・デフェイター氏は、蚊を捕まえ、グランドジャンクションの下水の集水溝では幼虫のサンプルを集め、対策の進み具合を確認するつもりだ。
デフェイター氏はまた、必要であれば展開できるよう、成虫駆除剤によるプログラムの準備も進めている。
「かなりの論議を巻き起こすことになるため、誰だってそうしたプログラムは避けたいと思う。しかし、仮に公衆衛生における緊急事態ともなれば、残された手段はそれしかない」とデフェイター氏は話す。
[日本語版:平井眞弓/多々良和臣]日本語版関連記事
[4月30日(金)17時0分]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040430-00000006-wir-sci
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