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京都府丹波町の浅田農産船井農場で鳥インフルエンザ感染が発覚した2日後の2月29日、生活協同組合コープこうべ本店(神戸市東灘区)で、緊急品質管理会議が開かれた。議題は浅田農産との取引だった。
商品部や総合品質管理室、広報室の担当者10人が顔をそろえた。「兵庫、岡山の5農場で感染は確認されていない。しかし、組合員の拒否反応は強く、『アサダエッグ』をこれ以上店に置くことはできない」。30年以上続く浅田農産との取引停止決定に、だれも異論をはさまなかった。
同生協の卵仕入れ額は年間31億円で、このうち浅田農産との取引は18億円。卵仕入れの6割を1社に頼ってきた。「つらい決断だったが、仕方ない。感染通報の遅れも問題になった」。会議に出席した森畑哲洋広報担当課長は、今も複雑な表情を見せる。
別の仕入れ先はすぐに見つかった。最大手のイセ食品(本社・東京)などから卵が入荷し、県内の各店に並んだ。他のスーパーでも取引中止が相次いだ。感染発覚から数日後には、アサダエッグは店頭から消えた。
一方、船井農場から30キロ内で設定された移動制限区域内の養鶏業者たちは、出荷停止解除後の取引再開を求め、得意先を駆け回っていた。
京都食品(本社・亀岡市)の中澤廣司社長は3月初旬、大阪市内にある中堅スーパーの仕入れ担当者を訪ねた。「なんとか、今まで通り取引を続けてほしい」。頭を下げる社長に、「御社からの入荷がストップした段階で、親スーパーの流通に組み入れられた。元に戻すことはできない」。再三の直訴も甲斐なく、大きな得意先を失った。
「関東から卵が関西にどっと入ってきている。弱肉強食ですからね」。中澤社長は、苦労して開拓した得意先を瞬時に奪われ、あらためて業界の厳しさを痛感した。
4月13日、移動制限区域が全面解除され、終息宣言が出た。京都府畜産課によると、府内養鶏業者の取引は徐々に回復しつつあるが、元に戻らないところもあるという。「大手スーパーは大量に卵を扱う。いったん流通が変わると元に戻してくれない」。養鶏業界からの嘆きは絶えない。
近畿農政局が府内産の鶏卵、鶏肉を仕入れている関西の大手スーパーなど36社を回ったが、5社が取引再開の考えはないと伝えた。「京都の市場を狙い、大手が営業を強めている」。そんな話が、業界内で飛び交っている。
◇
「会社がつぶれると思った」。浅田農産社長は通報を怠った理由に触れ、こう語った。「食」の安全を揺るがせた事件の背後に、何があるのか。激しい業者間競争、安く抑えられた卵価…知られざる実態を追った。(鳥インフルエンザ取材班)
[4月25日10時30分更新]
参照:鶏大量死「なんなんこれ」浅田農産 連載「何が起きた(1)」【京都新聞】