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急性心筋こうそくで入院中の患者の死亡率が病院によって少なくとも3倍以上の差があることが川渕孝一・東京医科歯科大学教授らや、厚生労働省の研究班(班長、楠岡英雄・国立病院機構大阪医療センター副院長)の研究で明らかになった。患者の年齢や重症度の違いを考慮しても差はなくならず、治療内容の影響が大きいとみられる。
川渕教授は経済産業省の補助金を受け、日本医師会と協力して99〜01年に全国の36病院から急性心筋こうそくで入院した患者のデータを収集し、病院ごとの患者が入院中に死亡する率を調べた。死亡率の最高は67%、最低は0%だったが、川渕教授は患者の年齢や性別、高血圧の有無など19項目の重症度を考慮してデータを分析した。それでも病院間の死亡率の差は最大で約3倍に達した。
一方、研究班は北海道から九州まで全国22の国立病院から、99〜01年に治療した急性心筋こうそく患者計2007人分のデータを集め、治療成績などを分析した。その結果、患者が退院できずに死亡する率は最低3.6%、最高26.6%と7倍以上の差があった。死亡率の平均は12%だった。
分析した国立病院機構大阪医療センターの是恒之宏(これつねゆきひろ)臨床研究部長によると、患者の年齢や重症度に病院間で大きな差はなかった。死亡率の差は、発症から病院到着までの時間の違いも原因として考えられるが、薬剤や人工心肺の使い方の違いなど治療内容や技術が影響していると考えられた。
是恒部長は「これほど死亡率が違うとは思っておらず驚いた。従来、死亡率を比較する習慣はなく、初めて他の病院より死亡率が高いと気づいた病院もあった」と言う。川渕教授は「治療結果の差を指摘すると病状の差だと反論されることが多いが、病状が同じでも大きな差がつくことがはっきりした」と話している。【高木昭午、鯨岡秀紀】
◇病院ごとに治療内容がばらばら
生死が病院で左右される−−。厚生労働省研究班などの調査で、病院によって大差があることが判明した急性心筋こうそくの死亡率。「医療は平等だ、といっても国民はもうだまされない」。専門家や医師たちからも、治療成績公開の必要性を訴える声が上がる。「病院によって患者の重症度が異なる」と成績比較の困難さを指摘する意見も少なくないが、厚労省研究班の調査では病院の方針次第で、治療内容が大きく異なる現状も浮かんだ。
3月27日、東京都内で開かれた日本循環器学会。心臓病の専門医ら200人以上が集まったシンポジウムで、急性心筋こうそく患者の死亡率と病院の質をめぐる議論があった。
「病院や地域で重症患者の割合が違うので、評価は難しい」「死亡率だけでの判断はよくない」。消極的な声が続いた後、虎の門病院(東京都港区)の山口徹院長が発言した。「各病院が成績を公開し、必要なら言い訳をすればいい」
東京医科歯科大の川渕孝一教授も「私もいい病院に行きたい。いろいろ調べたが症例数が多いからいい病院とも言えない。医療は平等だ、といっても国民はもうだまされない。(病院の格差による)運、不運で命が決まっている」と訴えた。
さらに「患者の重症度の違いがあっても治療成績を比較できるシステムを、国を挙げて作る必要がある。そのうえで厚労省は、頑張って成績を上げた病院や医師が報われる制度を作るべきだ」と語った。
また、厚労省研究班の調査によると、急性心筋こうそくの患者の平均入院期間は最短の病院で15日。だが最長の病院では32日に達した。長くなる理由は重症度と関係なく、患者の退院直前に心臓の血流を調べる「冠動脈造影検査」の実施だった。検査に適した時期まで、病院が患者の退院を延ばしていると推定された。検査は患者にとってのメリットも少なかった。
退院後に処方する薬もバラバラだった。原則として「ベータ遮断薬」という薬を出すべきだとされるが、実際に飲んでいた退院患者は22病院全体で25%。病院別では74%の患者に処方する病院も、5%にしか処方しない病院もあった。
調査は99〜01年の入院患者が対象で、研究班は結果を各病院に知らせた。03年秋の再調査では全体の入院中死亡率が平均で約8%となり、1回目調査の12%から改善された。ベータ遮断薬が処方される割合も患者全体の50%にまで上がった。
国立病院機構大阪医療センターの是恒(これつね)之宏(ゆきひろ)臨床研究部長は「データを出し合うことで、他を見習って治療法を改善する病院が出た」と話している。【高木昭午、鯨岡秀紀】
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ご意見・ご感想をお寄せください。〒100−8051毎日新聞東京本社社会部「病院の成績公開」係 ファクス03・3212・0635 Eメールshakaibu@mainichi.co.jp
毎日新聞 2004年4月5日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/kenko/news/20040405k0000m040045000c.html