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肺がん手術から5年後の患者の生存率(5年生存率)に病院間で大きな格差があることが、全国の主要な病院を対象にした毎日新聞の調査で分かった。がんの進行度で分けた七つの「病期」すべてで大きな差があり、早期の「1B」期では5年生存率9割以上の病院がある一方で、4割以下の所があった。患者の条件の違いに加え、技量の差が影響しているとみられるが、治療成績はほとんど公開されず、格差の原因を調べるシステムもない。成績公開と格差縮小を進める公的な体制づくりが求められそうだ。
調査は、日本肺癌(がん)学会と日本呼吸器外科学会が01年、肺がん手術(94年実施分)の5年生存率などを全国集計(全国平均のみ公表)した際に対象とした302施設に実施。同調査の94年を含む94〜96年の3年間などの期間で、肺がん手術数と5年後の生存者数、死亡者数、生死不明者数、5年生存率を尋ねるアンケート用紙を送り、110施設(36%)から回答を得た。分析は京都大病院探索医療センター検証部(福島雅典教授)に依頼した。
このうち94〜96年手術分で、病理検査に基づく病期ごとに手術数が10人以上の病院でみると、最も早期の「1A」期の場合、5年生存率は高い所で約9割に達するが、最低は約6割。進行した「3A」期でも、最高は約6割で最低は1割未満だった。
福島教授は「この種の大規模調査は世界的にも極めて貴重。調査では、日本の肺がんの平均治療成績が世界のトップだと分かるが、施設間でこれほどの差があるのは問題だ。年齢差など患者側の条件だけで差がつくとは考えにくく、治療内容の差が影響している可能性が高い。患者から考えれば、原因を調べて克服してもらわなければならない」と話す。さらに「治療成績はインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)に欠かせない情報でもあり、公開を進めることが重要だ」と指摘する。【鯨岡秀紀、高木昭午】
■ことば(肺がん) 日本で最も死亡者の多いがんで、02年は約5万6000人が死亡した。治療法には手術、抗がん剤、放射線があり、各治療を合わせた患者全体の5年生存率は30%程度とされる。日本肺癌学会は、がんの大きさや転移の状況などにより、進行程度を1A期から4期まで七つに分類している。数字が大きくなるほど治りにくくなる。同学会は、男性の肺がんの70%、女性の15%はたばこが原因だと推測している。
◇少ない客観情報 公開と差縮小を=解説
毎日新聞の全国調査で肺がん手術の5年生存率に、同じ進行程度でも病院によって50ポイント前後も差があった。背景には患者の年齢、他の病気の有無などの違いに加え、病院間の力量の差があるとみられる。数字の低い病院の医療が劣ると決めつけはできないが、患者が納得できる説明が求められる。
肺がんの手術法はさまざまだ。切り取る範囲だけでも、片肺全体や片肺の半分などいろいろある。転移の恐れがあるリンパ節を、どの範囲まで取るかも諸説ある。抗がん剤や放射線も手術前に使う、後で使う、使わない、などばらばらだ。手術の技量も医師によって違う。
これでは差が出るのは当然だろう。それでも従来、治療成績を公開する病院は少なく、最善の方法を決める試みもあまりなかった。「医学会は医師の利益団体でもある。お互いの不利益になることはしにくい」(ある専門医)という、かばい合いの精神が強かった。
しかし兵庫県立成人病センターの岡田守人・呼吸器外科医長は「患者は成績に注目してほしいし、病院は成績を公開して競い合うべきだ」と話す。最近はこうした医師も増えてきた。今回の調査に100を超える病院が回答を寄せたのもその表れだろう。
課題は多い。より公平な比較のための学術的基盤作りや、各施設の成績を継続的に調査・比較するシステムの確立などだ。それらにかかるコストの問題もある。
しかし、現状は病院選びで生死が左右され、事実上、選ぶための客観的な情報もない。これを放置してよいはずがない。専門学会と政府は公開と格差縮小実現を目指し、協力して課題を解決するべきだ。【高木昭午、鯨岡秀紀】
[毎日新聞4月4日] ( 2004-04-04-03:00 )
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20040404k0000m040117000c.html