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主題「ストレス過剰の影響を受け続ける現代人の現状と将来性」について
副題「立花隆『文明の逆説』を読んで」
2004年3月1日作成 西園寺鉄司
1 立花隆『文明の逆説』を読んで
2004年の正月過ぎから一月末までの約一ヶ月弱の期間をかけて、立花隆氏著作の『文明の逆説』を読みました。この本は、単行本が1976年12月に発行されており、内容もその頃のものです。それで、大変衝撃的な内容であり、非常に興味を持って読ませていただいたので、今回はこの本の内容を中心にしてレポートを作成させていただくことにしました。
内容に関して順次ふれていきますと、まず、自然界のバランスが崩れるとタビネズミが大量発生するというピソードがありました。増えすぎたネズミ達がどうなるかというと、発狂して集団で海に飛び込み自殺をするのだそうです。このエピソードは有名であり私も知っていましたが、他の生物に関しても、野生のシカが増えすぎたケースでは、突如として大量死が起こったとのことです。そして、これらの生物の異常行動には、ちゃんとした原因があり、一定の土地面積に対してある生物が一定数以上になると、その生物はストレス過剰となり異常行動を起こすのだそうです。そして、それは自然界のバランスを取るために人口調節メカニズムが働いた結果なのだそうです。
「イギリスのカルフーンという学者が、ネズミをギリギリのストレスとなる過密状態に保ったまま、三代にわたって飼育をしてみた。すると、まず性行動に異常が現われた。メス、オスの区別ができない同性愛が出た。未成熟のメスを犯したがる者も出てきた。インポになったのもいる。変態も現われた。つまり、“生殖につながらないセックス”が増えたわけだ。次にメスたちの行動が異常になった。特に母親ネズミの行動が狂ってきた。自分の子供を保育することも、保護することもできないメスが増えたのである。そのため、忘れ去られた子ネズミは、他のネズミに踏み殺されたり、食われたりしてしまった。妊娠する割合いが減り、流産率が高くなった。生まれてくるネズミは発育不良、先天性異常が多くなった。そして、ネズミ同士の闘争が増え、弱いものは社会から離脱した状態になり、ネズミの社会は混乱状態になったのである。だが、異常を起こすのは弱いものが中心で、強者は相対的に正常を保つことができた。弱い者というのは、若いオス、特に子供たちである。(立花隆『文明の逆説』(文庫版)講談社、1984年。35頁より引用。)」
2 衝撃的な内容、人類にもよからぬことが待ち受けているのか
そして、読み進めていくと、人間に関しても現在とても微妙な時期に差しかかっていることがわかります。人間も、地球上の生物の一種族なのです。ただ、生物の中で人間だけが理性や知性を持っており、それゆえ、道具を発明し、火をおこし、高度な文明を築き上げることができた事により、人間を他の生物とは明確に異なった存在に見せているのですが。
生物が大量死する際のパターンは、みな一様に類似した大量発生から大量死への人口爆発曲線(同65頁を参照。)を描いています。
そして、産業革命以降の人類も、社会福祉・医療の発達でなかなか死ななくなったのと、発展途上国における高い出生率により、人口爆発が起こっているとのことです。具体的には、1800年頃に9億人だった世界人口は1960年頃には30億人になり、それが、現在(2004年)は64億人にまで増加しています。また、2050年には90億人強にまで達してピークを迎えると予測されています。これは、人間以外の生物が異常行動を起こし大発生した時の人口爆発曲線とほぼ一致した推移を示しており、他の地球上の生物に生じた現象と同じ現象が人間にも起こると仮定するなら、これから人間にも人口大爆発によるストレス過剰を原因とした異常行動や大量死が起こる可能性が高いとのことです。
「ローマクラブは、「成長の限界」の研究で、資源の欠乏、食料の欠乏、汚染による環境悪化を最終のタガとしてさまざまの計算を試み、どんなに技術を発展させても、このまま人口が増えていけば、遅くとも二十一世紀後半に、人類の大量死が起こるだろうと予測している。しかし私は、もう一つの可能性、もっと悪い予測の方が実現しそうな気がする。それは何かといえば、ストレス過剰になった人間が、生理的にも、精神的にも異常になり、不健康になり、狂いだし、異常行動を起こし、社会が内部から崩壊しはじめ、やがて文明のシステムが働かなくなり、大量死が起こる可能性である。そのプロセスはすでに進行しはじめている(同39頁より引用)。」
実際に、現在において過密状態によるストレス過剰(これを生態学では“密度効果”というそうです。)と、それが原因と考えられる精神的な異常、性行動の異常、性倒錯、インポ、不妊症、は既に発生しており、そして、着実に増加しているようです。性行動の異常や性倒錯の例として、同性愛(注1参照)、ロリコン、乱交(第5章を参照)、近親相姦、等があり、精神的な異常は、自殺(特に同性愛者の自殺が多い、注2参照)、DV(家庭内暴力、注3参照)、児童虐待(性的虐待を含む、注4参照)、痴漢(第3章及び注7参照)、ストーカー(注5参照)、いじめ及び不登校児童生徒(注6参照)、等の発生及び増加に影響を与えていると考えられます。
現状として、いくつもの新しい法律を作り個別に対策を施さなくてはならないほど精神面の異常が原因と思われる事件が増えていることに、この国の現状に対する危機感、そして、自分も含めて、日本人は、人類は、これからどうなってしまうのかという、不透明な将来に対する不安な気持ちを抱かずにはいられません。しかし、もしもこれらの事件が起こる原因として、根っこの部分に人口爆発を原因とするストレス過剰があるのだとしても、これから、現状を良い方向へ変えていくための努力を決してやめてはいけないのは、言うまでもないことではないのでしょうか。
3 過密状態の象徴的な存在、満員電車
私の実体験から性行動の異常を感じたことについて書かせていただきますと、朝夕の通勤時間帯における都内の地下鉄及び在来線の上り列車は、客観的に考えて異常な過密状態のように感じられます。一番のピークの時間など、身動きが取れない上に圧迫されて胸が苦しくなるくらいにぎゅうぎゅう詰めの状態であり、文字通りの超過密状態なのです。誰もがその状態により多大なストレスを感じているはずであり、よくよく考えてみると、満員電車は過密状態によるストレス過剰の象徴的な存在といえるのかもしれません。
そして、やはりここにも“性行動の異常”を見て取ることができます。一番多いケースとして、男女の体が密着した状態で長い時間を過ごしたたために理性がうまく働かなくなり、痴漢をしてしまう男性が多くいるようです。そのために、都内では2001年9月1日より東京都迷惑防止条例が施行されており、痴漢行為で現行犯逮捕されると、この迷惑防止条例か刑法176条の強制わいせつ罪により摘発されることになります。
しかし、驚いたことには、満員電車の中において女性の側にも性的に異常と思われる行為が見られることがあります。例えば、面識のない二枚目風の男性に自分の体重を預け、寄りかかり、まるで恋人同士のように体を密着させる女性、わざと男性の前や後ろに来て体を密着させ、挑発的に尻を揺らす女性等がいるようです。要するに、満員電車の中で性的に異常な行動を起こすのは男性だけと考えられがちですが、実は女性にも稀に見られるということです。
そうなると、満員電車においては、痴漢行為で実際に摘発された男性の数(注7参照)よりも、性的に異常な行為を行いつつもそれが表面化しない男女の潜在的な数の方がかなり多かろうと予想できます。なぜなら、「満員電車による迷惑行為」とは、一方のみが性的に異常な行為を行い、相手が迷惑に感じた際に発生しますが、もしも、お互いが性的に異常な面を持っており、需要と供給の折り合いが付いた場合には、そこには合意が成立しており、もう迷惑を感じている人がいないからです。お互いの合意の上で、モラル的に問題があると思われる“異常な性行為”が行われているのですから。
4 罰せられなければ人殺しもできる者どもの危険な論理
何年か前から、私は周囲の人と接していて「あれ、この人は常識はずれな行動をしているな。」とか「ちょっと、あの人の考え方には問題があるのではないか。」と感じることが多くなりました。
例えば、私は、人殺しや強姦は倫理・道徳的に許されないことであり、それ故、法律で厳しく罰せられるように規定されていると認識しています。ところが、最近は「それは法律で罰せられるから、やってはいけないことなのだ。」と解釈している人がとても多くなったように感じるのです。そして更に恐ろしいことに、そういう人たちの多くは、法律で罰せられない巧みなやり方をして摘発されなければ、人殺しも強姦もやって構わない、という風に考えてさえいるのです。
「どうして詐欺(嘘)、盗み、殺人、傷害というような「犯罪」は「悪い行為」なのか。行為の良さが問われるとき、たいていは加害者と被害者がいる。犯罪とは加害者による被害者の権利の侵害である。加害者は自分の権利は奪われないようにしつつ被害者の権利を奪って、自分の権利を得ようとする。(加藤尚武『改訂版現代世界と倫理』晃洋書房、1996年。まえがきi頁より引用。)」
5 “生殖につながらないセックス”乱交の禍
私が乱交という言葉を初めて耳にしたのは1990年のはじめ頃だったと記憶しています。当時は高校生でしたが、何と破廉恥な行為なのだろうと感じました。そして、私にとっての乱交とは、長い間、アダルトビデオの中でだけ行われる行為でした。
乱交以前の性的なモラルに関して、私の個人的な意見を書かせていただきますと、好きでもない人と交わるのが、まず間違いなのではないでしょうか。人は、好きな人と愛し合いたいものです。そして、愛しい人と相思相愛となり愛し合った結果として、子供が生まれることは喜ばしいことなのです。その子供は、二人の愛の結晶なのですから。
どこの誰が、愛しい人を他の同性に抱かせたいと思うでしょうか。そうでなくても、次から次に異性や同性と交わる乱交は、とても常識的な見地からは受け入れられない性的モラルの著しく低い行為のように感じられます。
しかし、私の知っている限り、現在は高校生にも大学生にも、乱交は広く深く浸透しています。そして、私は以前、周りの人々から、その行為への嫌悪感を公にしたり否定してはいけないと言われたことがあります。私は、そのことに納得がいかなかったし、とても疑問に思い、それは現在まで続いてきました。しかし、『文明の逆説』を読み終えた現在、「なんで、今の世の中には乱交が氾濫しているんだろう。」という長い間かかえていた疑問の答えを、やっと見つけられたように感じます。
なお、性的モラルの低下という面以外の乱交の弊害について記述しますと、米国においてヒッピーのフリーセックス思想が流行していた1970年頃における男性同性愛者の乱交による肛門性交が、HIV感染者数(注8a〜8c参照)を一気に増加させたという経緯があります。また、その事実は、約10年間の潜伏期間を経て、実際に80年代初頭から米国の同性愛者にHIV発症による死者が出はじめたことから裏付けられています。
同時期に、両性愛者、薬物静注者、血液製剤による輸血を受けた人々の間でも感染者が出始め、そして増加していきました。現在は、乱交は異性・同性間を問わず行われていますが、同じ“性行動の異常”、そして“生殖につながらないセックス”である、同性愛、そして、薬物(注9参照)及びHIVの蔓延と深い関わりがある行為(注10、11参照)であることは見逃してはいけない点です。また、HIV感染者の増加という重大な問題に対しては、早期に適切な対策(注12参照)を施すことが、例えば、現在の未成年者がHIVの問題についてより関心を持つように推進する(注13参照)、等の行動が必要なのではないのでしょうか。
6 乱交を利用しての犯罪行為を繰り返す者どもと創価学会
数年前のある時期に、乱交と関連性のある一つの事件が私の身近なところで起こりました。
その事件とは、私と親交のあるある女性が、手に負えないあるグループに付きまとわれ、がんじがらめにされ、ついにはグループの手に落ちたというものでした。その、あるグループとは、現在はT・H大学を卒業し、大手スーパーD(神戸市に本社がある)の千葉県市川支店に勤務しているK・Yと、取り巻きの、主に創価学会の若者達でした。事件当時のK・Yはまだ大学生だったのですが、創価学会内外でカリスマ的な存在であり、高校生の頃から「スーパー高校生」などと騒がれておりました。ルックスもよく、よく女性にもてたようですが、彼の精神的に異常な面と、彼に群がる取り巻きによって、様々な事件が引き起こされたのでした。
彼らは、創価学会の持っている豊富な人的ネットワークによる人海戦術や、盗聴等の技術を駆使して、狙った女性を逃げられないように、がんじがらめにしていくのが非常に得意だったのです。狙った女性達に接触し、無理矢理に乱交に参加させ、無茶な性行為をして心神喪失に陥れたり廃人のようにしてしまった、ということが日常茶飯事に行われていたようです。そして驚くべきことに、網にかけた女性の弱み握り、更に別の女性を毒牙にかけるための道具にさえしているとのことでした。その行為は、性行為としての乱交とは明確に区別されるべき犯罪行為であり、早稲田大学のイベントサークル「スーパーフリー」より更にたちが悪い、獲物を決めての計画的な集団輪姦なのではないでしょうか。
それなのに、彼らは摘発されませんでした。被害者が警察に訴え出ても、学校当局に訴えても、背後に控えている創価学会等の権力者の力でねじ伏せられてしまったのです。それは、私の目には、K・Yとそのグループがアンタッチャブルな(ふれられない)存在になったということであり、犯罪行為をすれば罰せられるという法の支配による秩序の維持の大原則が破られてしまった、異常な状態のように映りました。
そして、その行為以上に驚いたのが、今の若者達の一部にK・Yのような存在を受け入れる風潮があることです。
彼の支持者の多くは創価学会員の家庭の子なのですが、創価学会自体が現在アンタッチャブルな存在(政治家は票集めのために公明党(創価学会)にすり寄り、四大新聞社をはじめとしてマスコミのほとんどが首根っこを押さえられ創価学会を批判できない状態。詳しくは週刊新潮2003年11月6日号より12月25日号まで連載された特集「新『創価学会』を斬る」を参照。)でありその悪い影響を受けていることに加えて、やはり本当は悪いと内心では感じていても身内の依怙贔屓(えこひいき)をしているケースが多いようです。
また、そのグループの存在を利用することにより、自分たち自身もいい思いができるから支持している若者も数多くいるようです。彼らもK・Yの名前を使い「K・Y君達のような無茶なことはしないから。」などと言い、巧みに女性を乱交などに誘っているのです。それでK・Yを崇拝する(「スーパーフリー」が摘発される前の早稲田大学生及び他大生にも、かなりの数の和田信者がいました。)。本当はしてはいけない事をしているのに。彼らに何を言っても聞く耳を持たず、団結力は強く、「K・Y君はいい人です。悪くないですよ。」の一点張りです。まるで、マインド・コントロールでもされたのではないかと感じるくらいに。
現在ではそんな、「人間性に問題あり」と感じる若者がとても多くなってしまいましたが、それは創価学会の隆盛とも深い関係があることのように感じます。そして、もっと根っこの深い部分では、この国で起きている様々な事象が若者の精神を荒廃させ、人間性を希薄にさせているのではないのでしょうか。
スーパーフリーの事件を受け、法制審議会における法改正案に集団強姦罪の新設が盛り込まれたとのことです(注14参照)。
7 学生イベントサークル主催のクラブイベントにおける異様な光景
私がまだ学生だった頃、当時の友人と連れだって渋谷で開催されたクラブイベントに行ったことがあります。そのイベント某大学の学生イベントサークル「F」が主催したものでしたが、大学のイベントサークルが主催するクラブイベントとはどういうものかと、物珍しさと好奇心に駆られて行ってみることにしたのでした。
当日は友人が遅れてきたこともあり、イベントの終わり頃に現場に着いたのですが、会場に入るなり、スタッフが私たちに言った言葉は衝撃的なものでした。
「やりたい女の列に並んでください。」
そう言われたものの、あまりに予期しない言葉だったため、私も連れ合いも最初は言われた言葉の意味が理解できずにお互いの顔を見合わせたことを、今でも鮮明に憶えています。しかし、会場を一望したところ、その言葉が何を意味するのか次第に判明し、やがて、胸の奥から嫌なものがこみ上げてくるような感覚に襲われました。見ると、会場のあちこちに、小さな人だかりがいくつも出来ていたのです。正確には、人だかりの中心に若い女性が一人居て、その周りを男どもが、6人から、人だかりによっては10人以上が囲むように列を作っている。そんな黒山のようになった人だかりが会場内に8つも10も出来ていたのでした。
その光景から状況を理解した私と連れ合いは、意思を確認しあい列に並ぶことを見合わせることにしました。そして帰ることにし、出口の方に足を運ぶと、スタッフが呼び止めました。「なんで列に並ばないのか。」といった様な内容の話でしたが、私と連れ合いが「ナンパする方がいいから、そうするよ。」と言うと、しつこくは引き留められませんでした。また、私はその際に自分の在籍する大学名を言ってしまいましたが、当時は特に気にもしませんでした。よく考えてみると、軽率な行動であったのかもしれません。
しかし、今になって思い出してみると、気分が悪くなるくらいに異様な状況です。当時、なぜもっと疑問に思わなかったのか、その状況の異様さに気付かなかったのか、もしかしたら、無意識のうちに危険なタブーの部分から目をそらして自分の身の安全を確保していたのかもしれません。
しかし、今頃になって、あの黒山の中心にいた女性達は、どのような素性だったのか気になります。あのイベントの後に、列に並んでいた男たち全員のセックスの相手をしたのだとしたら、一人で一晩に、少なくとも6人、多い人は10人以上を相手にしたことになります。そして、彼女たちは何者かに何かの罰としてあの場に居させられたのか、それとも、好き好んで参加していたのか、疑問が残りますし、某大学のイベントサークル「F」の背後にはどんな巨悪が控えていたのか、気になるところです。
あの会場の光景は、常識とかけ離れた本当に異常なものでした。セックス目的で多数の男性が一人の女性の前に列を作る。そして、そこには恋愛的な駆け引きは一切なく、女性は並んだ男性全員と無条件に性行為をする。そんな、異常な黒山が8つも10も出来ている。それは“性行為の異常”の巨大な集合体であり、性的モラルの著しく崩壊した、正に「この世の生き地獄」といった状態なのではないでしょうか。そして、参加していた、或いは参加させられていた女性達の身の上のことを想うと、なんとも言えないやりきれない気持ちになるのです。
8 見落としがちな視点、女性の価値観の変化と過激な性教育について
(1)女性の社会進出と自立、そして、それに伴うジェンダー・フリー思想の浸透
私の育った家庭では、父に昔気質な頑固なところがあり母を家庭内に厳しく束縛したため、母はずいぶん窮屈な思いをし、ストレスもかなり溜まっていたようでした。そのせいもあり、夫婦げんかもたびたび起きました。やはり、あまり欲求を抑圧することは精神的に良くないようです。しかし、だからといって極端に開放的になるのも良くない。何事もバランスが大事なのではないでしょうか。
「ウーマン・リブとはウーマン・リベレイション、つまり女性解放のことである。」[中略]この連中の主張するところはこうだ。『いいですか、いまの階級社会、ご覧のように一夫一婦制でしょ。これをもとにして、家が、社会が成立してんのよ。一夫一婦制というのは、一人の女性が一人の男性と一生涯生活し続けることでしょ。つまり女の性欲求の封じこめよ。ここんとこをまずくずさなくては』『だから、社会改革のために、まず一夫一婦制の根底にある<バージンらしさ>を返上、その<らしさ>の基準で女の優劣を決めようとする男と社会に、われわれの怒りをたたきつけているのよ』(立花隆『文明の逆説』(文庫版)講談社、1984年。247頁より引用。)」
しかし、現在では『文明の逆説』が執筆された当時と、だいぶ状況が異なってきているようです。1970代中頃においては現実的でなかった「この連中の主張」が、かなりの部分で社会に受け入れられているのですから。当時より着々と女性の社会進出がめざましくなり、同様にウーマン・リブ(女性解放)に関してもジェンダー・フリー思想の浸透として現実化、そして現在は、学校教育においてもジェンダー・フリー教育の推進がなされ論議を呼んでいます。
当時と比較して何が変わったかというと、まず、結婚しないでキャリアウーマンになる女性や共働きが増えました。そして、戦前からの儒教的な禁欲思想の反動もあり、性的に開放的な女性が急増したのでした。つまり、女性の社会進出とそれに伴う自立が行われ、(一部の集団内においてではなく)ほぼ全ての日本人にジェンダー・フリーの思想が浸透してきているのですが、それは長い歴史の中で前例のない(一部の例外は除く)ことであり、その変化自体が “密度効果”による“性的な異常”の影響を受けていると考えることができます。また、女性の価値観が変化したことによる影響は、少子化の促進(注15参照)、母性の希薄化、過激な性教育の蔓延(次項及び、注19参照)、といった枝葉の事象にまで及んでいるのではないでしょうか。
なお、「男女共同参画社会に関する世論調査(平成14年)」(注16参照)および「高校生の生活意識に関する調査(2003年)」(注19参照)の結果から、世代が若くなればなるほどジェンダー・フリー思想を受け入れていることがわかります。前者は、女性が社会的に自立し、子育てが負担になったために子をもうけず少子化が促進された面があるので、その肩代わりとして男性の子育てなどの家庭内のことへの関与の増大、つまり、父親の父性の発揮が望まれていることを反映しての結果ではないでしょうか。女性は子育てなど家庭内のことに専念してほしいとの考え方もありますが、現在の経済状況においては女性の労働力がほぼ不可欠であり(注17参照)、現状と矛盾していると考えるのが一般的なようです。この労働力不足の問題に関しましては、外国人の移民で補うべきという報告(注18参照)もあります。後者は、ジェンダー・フリー教育の推進が、高校生の意識に明確な影響を与えていることが調査の結果から読み取ることができます。
女性の母性の希薄化という観点におきましては、(注4)の調査結果、及び、加藤曜子「児童相談所における児童虐待相談処理件数の増加要因に関する調査研究」(2001年)において、子供のいる主婦を対象に「育児でイライラすることが多いか」というアンケートを取った際に「はい」という回答が、1981年においては全体の10.8%だったのが、2000年には30.1%と、20年足らずの間に約3倍に上昇していることから、着実に進行していると考えることができます。
私自身、不勉強なこともありジェンダー・フリー教育に対する評価が定まらないところがあるのですが、オピニオン誌においても賛否両論の様々な記事が掲載されており、その中にはジェンダー・フリー教育の推進をフリーセックス教育の推進と読みかえ、若者の性的モラルの低下を嘆いておられる方も多いようです。しかし、ジェンダー・フリーと若者の性的モラルの低下とは、本来、別々に考えるべことなのではないのでしょうか。「ジェンダー・フリー」を手元のパーソナル・カタカナ語辞典で調べてみますと、「[gender free]社会的・文化的につくられた性差から解放されること。」と記載されております。
つまり、「性差の解放(ジェンダー・フリー)」と「性の解放(フリーセックス)」とは別の問題であり、当然、分けて考えるべきであると思うのです。
ジェンダー・フリーに関して、女性の社会的な自立の進展に伴い、家庭の内外で様々な問題が起こり始めました。それを受けて、「解決するため、女性は再び家庭に戻ってください。」と答えるか、「女性の社会的行動が変化して男女の立場が近くなってきたので、これからは社会における権利や義務も男女同等にし、子育てなどの家庭の問題も夫婦で分担して一緒に解決しましょう。」と答えるかの判断が分かれており、それが重要な論点なのだと思います。しかし、私にこの問題を難しく感じさせている点があります。それは、ジェンダー・フリーを推進し、社会的に男性と同等の権利を獲得することを目指す女性は、当然、社会的に自立しており、その多くは性的に開放的であるという点です。この「性的に開放的な部分」と、次項の「過激な性教育」の関連性についての知識が私に乏しいため、核心に迫りにくくなっているように感じられるのです。
(2)過激な性教育と“人間と性”教育研究協議会
私は、過激な性教育に関しては極めて否定的な見方をしています。『日本の論点2004』(文藝春秋、2003年)620頁からの八木秀次氏の論文「好奇心旺盛な小学生にハウツーを教えて、セックスを奨励するつもりか」によりますと、「“人間と性”教育研究協議会」という性教育を促進している団体があり、多くの学校教師が影響を受けているとのことです。そして、この団体の理論的な指導者だったという方はもう亡くなっておりますが、山本直英氏という方なのだそうです。この方は『性教育のススメ−“下半身症候群”からの脱出』(大月書店、1994年)という本を書かれていて、その中で「男と女とは、たとえ結婚に結びつかなくても、婚前でも、婚外でも、たとえ親子の不倫でも、師弟でも、まさに階級や身分や制度を超えて愛し合うことが可能なのである」と、乱交でも近親相姦でも愛があればやってよいとの趣旨の、フリーセックスの思想を述べられているとのことです。
なお、山本氏が尊敬し、影響を受けたW・ライヒという思想家は、「性の解放」を提唱し、1970年代のアメリカのヒッピーたちは彼の本をフリーセックスのバイブルとして持ち歩いていたとのことです(第5章参照)。この山本氏は1970年代後半から過激な性教育を推進されており、ご本人は2000年に亡くなられたのですが、“人間と性”教育研究協議会は現在も活動を続けているとのことですので、この団体の活動が青少年の性的行為に関する意識を変化させ(注19参照)、性的行為の経験率の上昇( 注20参照)、乱交・近親相姦などの“異常な性行動”の浸透、等に多大な影響を与え続けているのではないのでしょうか。
ところで、過激な性教育の影響で日本人における性的行為の経験率が現在まで上昇を続けているのに対して、かつて「性革命」嵐が吹き荒れたアメリカにおいては、現在は反省が行われ「性の解放」ではなく、「性の抑制」に重きをおいた教育が行われており、現ブッシュ政権も「結婚までセックスを抑制する教育プログラム」に1億3500万ドルの予算を付けているとのことです。日本においても性教育の方針に関してアメリカに倣い、早く抑制する方向に舵を切らないと、結果として、青少年の性的モラルに対して良くない影響を与え続けることになってしまうのではないのでしょうか。
ただ、性的モラルの問題には、“人間と性”教育研究協議会も含めて、様々な団体の思惑が絡んだ複雑な事情があるように感じます。例えば、純潔教育を勧めている(注21)のレポート「今、純潔がトレンディー(1)1995年11月5日号」を掲載している東大新報という団体があるのですが、実はこの団体は統一教会系(原理研)なのだそうです。また、同じ統一協会系のPLAという団体も純潔教育を推進しているようです。客観的な視点から見て正しいと感じられる思想を、カルト宗教団体が推進する。そうすると、正しい思想も結局は汚されてしまうことになりはしないでしょうか。そして、純潔教育の推進も、フリーセックス教育の推進も、どちらも背後にカルト宗教団体が控えているのだとしたら、私たちは一体何を信じていけばいいのでしょう。
(3)女性の価値観の変化に伴う弊害について
女性が社会的に自立し、強くなってきた。また、過激な性教育の影響もあり、それとともに性的な欲求に対して貪欲になってきた現在、女性にどのような変化が生じてきているのでしょうか。もう、儒教的な禁欲の思想が通用していた頃とは異なり、性交渉の相手が一人だけでは満足できない女性が増えているようです。そして、彼女たちの中には、抑制が効かなくなった性的欲求を満たすために次から次へと異性との性交渉を持ったり、あるいは乱交等の過激な性行為により更に強い性的な刺激を得る、つまり“生殖につながらないセックス”により性的欲求を満たしている者が数多く現れているようです。
そうすると、どのような変化が生じてくるのでしょうか。女性が交際する男性を選別する際の価値観が変わり、内面重視から外見重視へと変化してきていると考えられます。それは、なぜなのか。現在交際中の男性が、一生の連れ合いになる可能性が激減したからです。そうなった以上、優しさや精神的な豊かさ等の見えない部分より、顔や体などの見える部分が優れている相手の方が、一緒にいて誇らしいし、性行為をする際にもその方が好ましいので、容姿が優先される事になるのです。なお、現在におけるホスト・クラブの隆盛も、このような女性の価値観の変化を反映したものだといえます。
こういった事象から考えを巡らせていくと、六章でふれたK・Yのような存在が一部の若い女性及び若者たちに受けいれられていたことに関しても、若い女性たちの価値観の変化による男性を外見重視で評価する傾向が影響を及ぼしていたと考えることができ、それは見逃してはいけない点だと思います。彼女たちの中に、モデルのように格好の良い男性であれば、例え犯罪行為を行っていたとしても受け入れられる、という「異常な価値観」を持った者が居ないとは、決して断言できないのですから。
9 長年抱き続けてきた疑問の解消。
また『文明の逆説』の話に戻りますと、人口爆発による“密度効果”を原因とするストレス過剰で人間の精神が狂いだしても、本人も周りの人々もほぼ同時に狂い出すので、お互いに気付き辛いのだそうです。それで、誰も自分が狂い始めていると気付かぬまま、実際は深く静かに狂いが生じているとのことです。私は、現在において、精神的・性的な異常が原因と考えられる様々な事件が増加しているのも、過激な性の氾濫も、K・Yの様な存在が生まれ・受け入れる者がいるのも、女性の変化も、そしてカルト宗教の流行も、何が原因でそうなっているのか、とても疑問に感じていました。しかし、この本を読むことである程度は納得が行ったように感じます。私も含めて、みんな、自分ではそうと気付かずにおかしな方向を向き始めてしまっているのではないでしょうか。そして、その現実にもし気が付くことがあったとしても、意識的、あるいは無意識のうちに、そのことから目を背けてはいないでしょうか。
「坂口安吾は『日本文化私観』とか『堕落論』の中でくり返し書いています。日本人は決定的に絶望することが不得意な国民である。また、他者を決定的に憎むことが不得意な、民族的にそういうことを受け入れない国民である、と。絶望することに長けていない。それから何かを憎悪したり、痛烈に反省したりということも得意ではない。[中略]これは、現実から目を背けていることと表裏の関係といえます。日本をひっくるめて、世界はギリギリのところまできています。現実を直視することが不得手な私たち日本人は、敗戦直後のときのように、根元的なことから目を背けていいのかといま、あらためて自省せざるをえないのです。」(五木寛之『他力』(文庫版)講談社、2000年。156頁より引用。)
10 これからの私たちに必要なもの。
これからの日本人、そして世界中の人々には何が必要なのでしょうか。私は、それは精神的な豊かさ、優しい心、そして、何が正しくて何が間違っているのかを判断したり、道徳的な善悪の分別を付ける力なのだと思います。それらが、最近の日本人には不足しているように感じるからです。
バブル崩壊以降、経済的な成長が望めない状態が続く中で、それまで物質的な豊かさだけを追い求めてきたために、不安やストレスなどによる心の負荷の増加に耐えきれずに、人々の心が蝕まれていっているようです。そして、なにを心の支えにすればよいのかわからぬまま、段々と自分の品位を下げるような行為に染まっていってしまう人が多いのではないでしょうか。
そうならないためにも、増加傾向にあるストレスなどに対して、うまく発散したり、心の支えになるものを得なくてはならないように感じます。ストレスの発散に関しては余暇の上手な過ごし方が大切になってくるのですが、心の支えを得ることに関しては、自分自身の心の中に眠っている精神的な豊かさや優しさに気付くことであり、また、それに気付かせてくれる人や書物との出会いが非常に大切なのではないでしょうか。
私は『文明の逆説』を読み非常に驚きました。人類に将来的な大量死や異常行動の危険性があることを、今まで少しも知らなかったからです。学生時代の社会科の教科書に、ローマ・クラブの『成長の限界』が掲載されていたことは憶えていましたが、それ以来、こういう環境問題がテーマの本は読んだことがありませんでした。やはり、無関心や無知はその人の弱みになるようです。例えると、目隠しをして道を歩いているようなものではないのでしょうか。逆に、正しい知識を積み重ねると、自然と正しい判断に導かれるように感じます。
だから、人々が多く読書をして良書からの知識を積み重ねていくことが、何が正しくて何が間違っているのかを判断する力や、道徳的な善悪の分別を付ける力を養うことになり、私たちが現在抱えている様々な問題を解決する足がかりになるのかもしれません。
11 偉大な先人の教え、そして、輪廻転生と高い志。
仏教には『法句経』という初期の頃のお経があります。この中で釈迦は、「三宝に帰依すれば四つの正しい智慧が得られます。」と語っているそうです。三宝とは、現在における仏様(仏像)、お経、教団及び僧のことであり、この三者を敬えば、四つの正しい智慧(これを四聖諦(ししょうたい)というそうです)、@苦(生きることは苦である)、A集(何故苦が生まれてしまうのか)、B滅(苦はどうすればなくせるか)、C動(苦をなくすには8つの方法がある)がわかると教えています。そして、苦を無くす8つの方法であるところの八正道を行動のルールとし、それは、@正見(四聖諦をもとに見なさい)、A正思惟(四聖諦をもとに考えなさい)、B正語(真実を語りなさい)、C正業(清らかに生活しなさい)、D正命(教えに従いなさい)、E正精進(欲望を消す努力をしなさい)、F正念(正しい道だけを考えなさい)、G正定(集中して清浄な境地を拓きなさい)の8つであり、生き方の指針とされているとのことです。
現代を生きる日本人の心が荒廃してしまった原因の一つとして、伝統的な宗教と距離を置いてしまい、その教義も伝わらなくなったことがあるようです。しかし、前章で書いた通り、ストレスを感じることが多くなった現代人においてこそ、心の支えとなるような教えが必要なのではないでしょうか。本を読み、偉大な先人のすばらしい教えや生き方から道徳的なことを学んだり、心を豊かにする糧にすることができたら、それはすばらしいことなのだと思います。
また、私は個人的な体験などから、生まれ変わりを信じます。生まれ変わりとは「輪廻転生」と言いあらわされる、人が亡くなったら一度魂(精神)だけの存在に戻り、必要ならまたば地上に生まれてくるという、多くの宗教で教えられている思想です。人の魂にとって、現世は修行の場だと思うのです。人は生まれ変わりこの世での経験をコツコツと積み重ねることにより、どこまでも賢くなっていける存在なのではないでしょうか。
しかし、人間がそのようにすばらしい可能性を秘めた存在であるのに対して、多くの現代人の心境の低さには驚きを隠せないものがあります。自分さえよければいい、自分のために他人は犠牲にできる、そんな浅ましい考えを持った人が最近はとても増えてきているように感じるのです。
私を含めて、輪廻転生を信じられる人は同じように考えられません。私の心が、精神的な豊かさが、優しさが、つまり、真面目にこつこつと積み上げてきた精神的なものが、次の人生に持ち越されると知っているからです。
何か悪いことをして、もしも人に知られずに済んだとしても、それを喜ぶのは愚かしいことです。その悪事の清算はいつか必ずしなくてはならないのですから。そこを、勘違いしてしまっている人がとても多いのではないでしょうか。
私たちの人生は、現在の肉体が無くなった後も、ずっと続きます。
常に理想的な自分の姿をイメージして、精神的にも肉体的にも理想的な自分になれるよう、あり続けられるよう、真面目に努力を積み重ねていくべきなのです。そして、高い志を持ち、優しく思いやりのある心を持ち続ける。何が真実であるのか、何が間違っているのか、真偽や道徳的な善悪を見極める力をつける。ただ、それだけのことが実践できればなにも思い悩むことはないのではないでしょうか。
そして、例え何らかの理由で苦しい経験をしなくてはならなくなったとしても、恐れることはないのです。ただ、魂を成長させるためのかけがえのない経験をしているのにすぎないのですから。
[注釈]
◇(注1) The Gallup Organization(ギャラップ社・ニュージャージー州)は2003年10月8日の夏に行った世論調査の結果で、アメリカ人は人口の平均21.5%がゲイ、または、レズビアンであると思っていることが明らかになったと発表しました。同性愛者の人口の割合は一般的に5〜10%と推測されることが多いのですが、今回発表された数字は、それを大きく上回っています。2002年11月には、別の団体が全米15都市を対象に類似の世論調査を行っていますが、そのときも18%という結果が出ました。また、2003年6月に米連邦最高裁が、同性愛者の性行為を犯罪と規定したテキサス州法に対して無効との判決を下し、米世論が大いに揺れました。「我々もようやく21世紀を迎えた。」と同性愛団体のメンバーは歓喜の声を上げ、保守・右派団体からは「道を外した誤った判断」と非難がわき起こったとのことです。
◇(注2) 厚生労働省「平成14年 人口動態統計(確定数)の概況」よると、2002年に「自殺」で死んだ日本人男性数は21,677人なのだそうです。日本人男性の自殺者数の推移は、1970年に8,761人だったのが1975年には11,744人に増加し、1999年には22,402人とピークを迎えています。2002年の自殺者数は1999年に次いで2番目に多い人数です。また、1989年における米国の保健社会福祉省の調査では、思春期に自殺した若者の30%は同性愛者によるものであり、思春期の同性愛者は、そうでない若者に比べ2〜3倍、より自殺を試みやすいと報告されています。米国おける思春期の若者(男性)の自殺は、1950年と比較して約3倍に増えており、若者の自殺が増える要因として,両親の離婚の増加,薬物乱用の蔓延と低年齢化,価値観の変化などが考えられています。
◇(注3) 内閣府男女共同参画局「配偶者等からの暴力に関する調査(2003年4月)」によると、配偶者や恋人から暴行や脅迫、性的行為の強要といった「ドメスティック・バイオレンス(DV)」の被害を受けた経験がある女性が5人に1人いるそうです。被害の8割は暴行を伴い、20人に1人が命の危険を感じたなど、男女間の暴力の深刻な実態が浮き彫りとなっています。また、DVの増加への対策として、2001年より「配偶者からの暴力防止及び被害者保護に関する法律(DV防止法)」が施行されており、警察庁「配偶者からの暴力事案の対応状況(平成15年)」によると、暴力相談の対応件数は、法律が施行された平成13年には3608件だったのが、平成14年には14140件と急増、そして平成15年は前年に比べ1572件減少して12568件になっています。
◇(注4) 厚生労働省「平成15年全国児童相談所長会議資料(平成15年6月)」によると、2002年度の児童相談所における虐待相談受付件数は24195件であり、1993年の1611件より22584件、2000年の17725件より6470件増加しています。また、親による児童虐待の増加に伴い、2000年11月より児童虐待禁止法が施行されており、身体への暴行、わいせつな行為、食事を与えなかったり長時間の放置、心理的に傷つける言動、をすることを「児童虐待」と定義し、学校や医療機関の関係者が、これらを発見した場合は児童相談所へ通告する義務が課されています。
◇(注5) ストーカー行為に関しては、近年、1999年の埼玉県桶川市女子大生刺殺事件をはじめ凶悪犯罪につながるケースが相次いだのと、警察への相談件数の増加を受け、2000年11月よりストーカー規制法(「ストーカー行為等の規制に関する法律」)が施行されています。警察庁がまとめた「ストーカー事案の対応状況(平成15年)」によると、2003年の同法違反事件は192件で、警察への相談件数が22226件であり、そのうち1169件は警察から警告が出されました。なお、相談件数に関しては、1998年に6032件だったのが1999年には8021件に増加し、法律が施行された2000年には26162件と、前年の3倍強に急増しピークに達しています。このストーカー規制法では、次の8種類の行為が反復して行われたときにストーカー行為として処罰の対象としています。@つきまとい・待ち伏せ・押しかけ等A監視していると告げる行為B面会・交際の要求C乱暴な言動D無言電話、連続した電話・FAXE汚物・動物の死体などの送付F名誉を傷つける文書の送付G性的しゅう恥心を侵害させる物品の送付。
◇(注6) 文部科学省「学校基本調査」の「不登校児童生徒数の推移(平成6年〜平成13年度)」によると、小学校・中学校の不登校者数は、平成6年の調査では、それぞれ15,786人、61,663人だったのが、平成13年には、それぞれ26,511人、112,211人と2倍近くに増加しています。反対に、近年はいじめの発生件数が減少しているとの調査報告がありますが、最近のいじめは問題として表面化しにくい悪質な形に変化しており、それが不登校児童生徒数の増加という形であらわれているのだと考えられます。
◇(注7) 警察庁「平成14年の犯罪」によると、強制わいせつ罪の認知件数(痴漢による認知件数を含む)は、平成5年度において3581件だったのが年々増加し、平成12年度には7412件と倍増、そして、平成14年度には9476件にまで増加しています。
◇(注8a) 国立感染症研究所の2003年度の発表によると、わが国におけるHIV感染者の累計数は、2002年に9127人だったのが、新たに891人の感染が報告され10,081人に増加しています。新たな感染者のうち男性が713人と大部分を占めており、男性同性愛者の性行為による感染の比率が高いようです。なお、日本の感染者は2010年には5万人に達すると予測されています。
◇(注8b) 国連エイズ計画(UNAIDZ)と世界保健機構(WHO)とは2003年度の報告書において、世界で今年新たにHIVに感染した患者は約500万人おり、エイズによる死者は約300万人と推計され、過去最悪を更新したことを明らかにしており、報告書は各国に早急な行動を呼びかけています。報告書は2003年末時点でのHIV感染者、エイズ患者の数を約4000万人と推計。このうち、15歳未満の小児も250万人に上るとみています。また、ここ数年、中国やインドなどのアジア地区における増加傾向が顕著であり、現在100万人の感染者をもつ中国で有効な施策がとられなかった場合、5年後には1000万人に達すると予想されています。
◇(注8c) 米国においては、1988年頃までHIVへの感染を一部の逸脱者の問題であるとして放置していたため、大流行の原因を作ってしまったとのことです。具体的には、「ational Safety Council発行『Today's Supervisor』2001年9月号 p.3」(国際安全衛生センター・所蔵)によりますと、1981年に最初の症例が確認されて以降、77万4,467人のエイズ感染者が報告され、約45万の米国人が亡くなっています。現在における米国内のHIV感染者は50万人から60万人と推定され、さらに32万人がエイズを発症しています。新たな感染に関しましては、1980年代半ばに年間15万人を超えたのをピークに減少に転じ、1990年代初頭には年間4万人にまで低下したものと見られています。通算では100万人を優に超える米国人がHIVに感染した計算になります。
◇(注9) 警察庁がまとめた「平成15年中における薬物情勢について」によると、大麻の検挙者数と大麻樹脂の押収量、合成麻薬「MDMA」の押収量がいずれも過去最高を記録したとのことです。大麻の検挙者数は前年比284人(16%)増の2032人、大麻樹脂の押収量は前年比23キロ(約9%)増の267キロであり、検挙者の年齢別では20歳代が全体の約6割を占めています。また、MDMAの押収量については、平成11年に17500錠だったのが数年で急増し、平成14年には174246錠に、そして平成15年においては39万3062錠と前年より倍増しています。
◇(注10) 「台北市警中山分局は2004年1月17日、同市農安街のマンションで行われたゲイのホームパーティーを摘発、主催者及び客の計93人を逮捕した。参加者はみな、下着一枚のみを着用。マンション内に設けられたセックスルームでは乱交が行われていたという。当局が踏み込んだ際、薄暗い室内では大音量で音楽がかけられており、照明をつけると中では下着一枚もしくは全裸姿の男らがドラッグを服用していた。客の中には、そのまま薬物を服用して頭を振りつづける者、泣き出す者、床に横たわって意識が飛んでしまっている者などがおり、奥に設けられたセックスルームで7,8人が乱交を行っていたという。」(バディジェーピィ・ホームページ内記事より転載。)
◇(注11) 「中国衛生部によれば、現在中国のエイズウイルス感染者数は84万人で、そのうち発病者は8万人に上る。感染者が人口に占める割合は0.06%から0.07%で、感染者数はアジアで2番目に多い。 また2003年の1月から9月にかけて、北京市では229名のエイズ感染者が新たに見つかっており、地方出身者や麻薬中毒者、乱交者の中で感染が急速に広まっている。」(バディジェーピィ・ホームページ内記事より転載。)
◇(注12) HIV患者の増加への対策。京大ユニセフクラブ機関誌ユニトピア内の論文「ミニ学習会『エイズを巡る世界の状況』報告 1999年3月号」によると、HIV患者の増加への主な対策として、@生物医学的には、母子感染防止、エイズ対抗薬やそれぞれの症状に対応する治療薬による延命、医療者と患者の良好な関係の促進、等が行われており、 A行動学的には、HIVの感染リスク行動、つまり注射針の共有、性交渉、輸血 注射の回し打ちをやめる、コンドーム性交、輸血用血液の検査、科学的知識の向上と、こうした行動に結びつく教育・カウンセリングの推進、B道徳論として、同性愛、麻薬、乱交などの道徳逸脱行為、性倒錯を避け、純愛・貞操といった道徳を守る、ことが推進されてきました。 エイズ患者が増加し始めた初期の頃は、Bの道徳論的立場から対策を施す傾向が強かったのが、最近は@の生物医学的及びAの行動的立場、から対策を施す傾向が強くなってきているとのことです。
◇(注13) 内閣府大臣官房政府広報室が公表した「エイズに関する世論調査(平成12年12月)により、エイズ問題に未成年者は半数近くが関心を持っておらず、感染症予防のためコンドームを使っているのは7人に1人だけという実態が明らかになっています。エイズ問題に「関心がない」「あまりない」と答えたのは成人もあわせた回答者全体では約38%ですが、15−19歳の未成年層では約46%に上昇しています。
◇(注14) 刑法改正を諮問。野沢太三法相は10日、凶悪・重大犯罪の増加を受け、有期刑の法定刑を引き上げることなどを柱とする刑法、刑事訴訟法などの改正案を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。早稲田大のサークルメンバーらによる女子大生集団暴行事件を受け、集団強姦(ごうかん)罪の新設も盛り込んだ。1907年の刑法制定以来、初の懲役・禁固刑の見直しとなる。[中略]新設する集団強姦罪は4年以上の有期懲役で、2人以上による行為に適用する。法定刑は、告訴がなくても起訴できるようにする。 (毎日新聞、平成16年2月11日付紙面記事より転載。)
◇(注15) 厚生労働省「平成14年 人口動態統計(確定数)の概況」によると、現在の合計特殊出生率は1.32なのだそうです。この調査から、第一次ベビーブーム期(1950年頃)は4.3程度だった合計特殊出生率が約十年間で半減し、第二次ベビーブーム期(1973年頃)以降も緩やかながらも減少を続けて現在の状況に至ることがわかります。また、2006年を境に日本の人口は減少に向かうと予測されています。
◇(注16) 内閣府大臣官房政府広報室「男女共同参画社会に関する世論調査(平成14年)」によると、「女性は結婚したら、自分自身のことより、夫や子どもなど家族を中心に考えて生活した方がよいか聞いたところ, 「賛成」とする者の割合が55.5%,「反対」とする者の割合が38.7%となっている。平成9年9月の調査結果と比較して見ると,「賛成」(62.2%→55.5%)とする者の割合が低下し,「反対」(33.8%→38.7%)とする者の割合が上昇している。[中略]年齢別に見ると,「賛成」とする者の割合は60歳代,70歳以上で,「反対」とする者の割合は20歳代から40歳代で,それぞれ高くなっている。」とのことです。
◇(注17) 「少子高齢化の進行でもっとも懸念される問題は、労働力の枯渇である。働き手が減って、日本経済の潜在成長率が急速に低下してしまう懸念がある。実際に、2006年には総人口が低下し始めることがほぼ確実となっている。しかし、労働力の確保という観点からいえば、向こう20年間は、女性の労働参加率が現在よりも5%上昇するだけで、現在と同じ労働力人口を確保できる。問題なのは、配偶者控除や社会保障制度の設計など、女性の労働参加を阻む要因が多すぎることである[中略]今後10年間で考えると、現在の労働力人口を維持するには、現在より105万人多い、約2860万人の労働参加が必要」(西澤隆「野村総研、衝撃の『経済再生シナリオ』」月刊現代2003年2月号掲載、講談社。63頁より引用)
◇(注18) 世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議(2004年)」でまとめられた報告書によると、「将来、日本が現在の経済水準を維持するのに年間約60万人の外国人移民が必要になる」とのことです。また、移民を受け入れずに、出生率が低い状況が今後も続いた場合、2050年には世界の総生産にしめる日本の比率は現在の8%から4%に急降下すると予測されています。
◇(注19) 文部科学省所管の財団法人「一ツ橋文芸教育振興会」と「日本青少年研究所」が2003年に実施した、日本・アメリカ・中国・韓国の4か国の各1000人余りの高校生を対象にしたアンケート「高校生の生活と意識に関する調査」によると、日本の高校生は「男は男らしく」「女は女らしく」といった性差意識が非常に低いことが発表されています。「女は女らしくすべきだ」との設問では、日本では肯定した人が28.4%しかおらず、米国は58%、中国は71.6%、韓国は47.7%が肯定しているので、日本は突出して低いといえます。また、「男は男らしく」も、日本で肯定したのは43.4%(米63.5%、中81.1%、韓54.9%)で、唯一半数を割り込んでいます。さらに「結婚前は純潔を守るべき」との設問に対する肯定も、日本は33.3%(米52.0%、中75.0%、韓73.8%)と著しく低くなっています。
◇(注20) 財団法人日本性教育協会が1999年に行った「青少年の性行動全国調査」によりますと、1974年は大学生女子のマスターベーション経験率は28.6%、キスが38.9、性交が11.0%であったのが、1999年にはマスターベーションの経験率が40.1%、キスが63.2%、性交が50.5パーセントに変化したのだそうです。それぞれの性的行為の経験率が大幅に上昇しており、過激な性教育の影響が明確にあらわれていることがわかります。
◇(注21) 「キリスト教保守派は、純潔を性教育の柱に据える運動を展開し、そのおかげで今ではアメリカの性教育コースの九〇%には純潔の勧めが含まれるまでになった。これは、禁欲一辺倒を説く五〇年代的な性教育とは違う。「本当に好きな相手にどうやって『ノー』と言うか。それを教えてやらなければ子どもたちを動かすことはできない」と、ノースカロライナ大学思春期センターのピーター・スケールズ教授は言う。禁欲教育ではなく、フリーセックスのもたらした現状への反省にたった上での「純潔」教育なのである。六〇年代のセックス革命によって、アメリカでの離婚率は上昇し、家庭は崩壊した。その親たちの世代を見ながら育った子どもたちは、親の世代への失望もあったことだろう。また、性の解放はエイズの蔓延や、ティーンエイジャーの妊娠の増加など深刻な社会問題をもたらした。日本でも今のまま性開放が進めば、アメリカの二の轍を踏まないと言う保証はない。日本では性開放こそトレンドと言われるが、アメリカ人からすればそれこそ時代遅れな考えである。アメリカでは今、自分の自由意志でもって「純潔の自由を守ろう」という若者が増えてきているのである。」(東大新報(統一教会系)ホームページ内「今、純潔がトレンディー(1)1995年11月5日号」純潔問題研究班。より転載。)
[書籍]
立花隆『文明の逆説』(文庫版)講談社、1984年。
立花隆『証言・臨死体験』文藝春秋社、1996年。
五木寛之『他力』(文庫版)講談社、2000年。
加藤尚武『改訂版現代世界と倫理』晃洋書房、1996年。
John Bellamy Foster著、渡辺景子訳『破壊されてゆく地球』こぶし書房、2001年。
Wolfgang Sachs著、川村久美子訳『地球文明の未来学』新論社、2003年。
森嶋通夫『なぜ日本は没落するか』岩波書店、1999年。
渡辺三男『よくわかる環境問題全情報』コスモトゥーワン、1998年。
クリストファー・フレイヴィン『地球白書2003-04』家の光協会、2003年。
花山勝友監修『[図解]般若心経のすべて』光文社、2001年。
文藝春秋社編『日本の論点2004』文藝春秋社、2003年。
朝日新聞社編『朝日キーワード2004』朝日新聞社、2003年。
[雑誌]
山田直樹「新『創価学会』を斬る」新潮社、週刊新潮2003年11月6日号〜12月25日号に掲載。
西澤隆「野村総研、衝撃の『経済再生シナリオ』」講談社、月刊現代2003年2月号に掲載。
[資料]
内閣府大臣官房政府広報室「男女共同参画社会に関する世論調査(平成14年)」
同府大臣官房政府広報室「エイズに関する世論調査(平成12年12月)」
同府男女共同参画局「配偶者等からの暴力に関する調査(2003年4月)」
厚生労働省「平成14年 人口動態統計(確定数)の概況」
同省「平成15年全国児童相談所長会議資料(平成15年6月)」
文部科学省「不登校児童生徒数の推移(平成6年〜平成13年度)」
警察庁「平成14年の犯罪」
同庁「配偶者からの暴力事案の対応状況(平成15年)」
同庁「ストーカー事案の対応状況(平成15年)」
同庁「平成15年中における薬物情勢について」
財団法人日本性教育協会「青少年の性行動全国調査」(1999年)
加藤曜子「児童相談所における児童虐待相談処理件数の増加要因に関する調査研究」(2001年)
財団法人日本青少年研究所「高校生の生活と意識に関する調査」(2004年2月発表)
国際安全衛生センター「ational Safety Council発行『Today's Supervisor』2001年9月号 p.3」
八木秀次「好奇心旺盛な小学生にハウツーを教えて、セックスを奨励するつもりか」(文藝春秋『日本の論点2004』620頁〜)
東京弁護士会所属銀座法律事務所ホームページ内「暮らしに役立つ法律知識」
毎日新聞、「刑法改正を諮問」(平成16年2月11日付紙面記事)
東大新報(統一教会系)ホームページ内「今、純潔がトレンディー(1)1995年11月5日号」
[HP]
内閣府(http://www.cao.go.jp/)、厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/)、
文部科学省(http://www.mext.go.jp/)、警察庁(http://www.npa.go.jp/)、
The World Economic Forum(http://www.weforum.org/)
The Gallup Organization(http://www.gallup.com/)
財団法人日本性教育協会(http://www.jase.or.jp/)、
財団法人日本青少年研究所(http://www1.odn.ne.jp/youth-study/)
“人間と性”教育研究協議会(http://www.ne.jp/asahi/seikyokyo/2000/top.html)
東京弁護士会所属新銀座法律事務所(http://www.shinginza.com/index.htm)
京大ユニセフクラブ(http://www.jca.apc.org/unicefclub/)
バディジェーピィ(http://www.badi.jp/)
東大新報(統一教会系)(http://www.win.ne.jp/~t-shinpo/)