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経営の主導権を巡り新旧の経営陣が同じ日に別々の株主総会を開き、正反対の決議が出るという珍事が起きた。
舞台は福建省福州市のホテル。一月十一日、情報関連の上場企業、宏智科技は筆頭株主である王棟氏の呼びかけで株主総会を開催。監査人の立ち会いのもとで、黄曼民董事長ら経営陣の総退陣を求めた議案を決議した。
ところが、黄董事長は同じホテルの別のフロアで同様の株主総会を開き、同じ人事議案を否決。総会後、双方は和解交渉を重ねたが決裂し、約一カ月後の二月四日、企業公告としてそれぞれの決議内容を発表した。
国有企業だった宏智科技は上場のため増資を重ねてきた。王氏は増資を引き受け一八%の株主になるとともに、一時は会社の総経理に就任。現経営陣にその座を追われたのだが、総会を使って復権を狙ったとされる。内紛が起きてから同社の株価は大幅に下落、双方は司法に判断を委ねたが、まだ決着していない。
中国の上場企業で乱脈経営が頻発している。
▼昨年十一月、新疆ウイグル自治区のビール原料メーカーのトップが失そう。直後に不明朗な経理操作が発覚し、株価は半値以下に急落した。
▼二輪車メーカーの西藏珠峰工業は二月二日、何冰・元董事長ら経営陣が総額約八億元規模の脱税や密輸を共謀して検察当局に検挙、起訴されたと発表した。
企業の業績が表向きは好調なのに株式市場の低迷が続くのは、「経営者の間にコーポレートガバナンス(企業統治)の重要性が認知されておらず、多くの投資家の信頼を得られないからだ」(施恒新・申銀万国証券アナリスト)。
経営の暴走をチェックする立場の会計士の中でも不正行為に手を貸す動きが後を絶たない。「不做假帳(粉飾をするな)」。国立上海国家会計学院の院長室には、こう大書した朱鎔基・前首相の揮ごうが飾られている。
証券当局も上場企業の経営体質の改善を最重要視し始めた。
「証券市場を健全にするにはコーポレートガバナンスの確立を急がなければならない」。中国証券監督管理委員会の尚福林主席は二月二十五日、上海証券取引所主催のセミナーでこう演説。問題のある企業や経営者への罰則強化や、経営意欲向上のためのストックオプション制度導入など様々なアイデアを披露した。
企業にも変化の兆しはある。小型トラックメーカーの江淮汽車は二月十三日、安徽省合肥市の本社で一般投資家らを招き企業説明会を開いた。
江淮汽車の財務担当者は「当社は今後、将来性の高いスポーツ・ユーティリティー・ビークルなどに力点を置く。事業戦略を投資家に詳しく紹介して、将来の株主となってもらう狙い」と語る。説明会は昼食をはさんで午前九時から午後五時まで開かれ、五十人近い出席者が耳を傾けたという。
中国の上場企業は国有企業から独立したケースが多い。今でも共産党の幹部がトップをかねる企業は珍しくない。先進国では当たり前の経営手法がまだまだ中国ではなじまず、計画経済に慣れた幹部の意識改革には時間がかかる。
中央政府は今年から大型国有企業の経営者に年俸制を導入した。業績に応じた報酬を支払うことで経営責任を明確にさせる。取締役会の設置も義務づけている。こうした国をあげた取り組みが、歩みは遅くとも、中国株を健全な方向に導く。
=おわり
この企画は湯浅健司、有賀敦彦、川瀬憲司、黒滝啓介が担当した。
【図・写真】会計士の育成も緊急課題だ(中国で初めて設立された上海国家会計学院)