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中原日銀委員「デフレ脱却どう考えても05年度以降」-インタビュー (ブルームバーグ)
http://news.www.infoseek.co.jp/business/story.html?q=03bloombergto729420&cat=10
【記者:日高正裕】 3月3日(ブルームバーグ):日本銀行政策委員会のメンバーである中原真審議委員はこのほど、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「国内の需給はまだ緩んだ状態にあるため、今年春先から(医療費自己負担などの)特殊要因がはく落していくと、消費者物価指数(生鮮食品を除く)前年比上昇率は若干マイナスになる可能性がある」と指摘。そのうえで「どう考えても、デフレ脱却は2005年度以降とみている」と述べた。
中原委員は景気について「今後も緩やかな回復を続けるとみられるが、外需主導という構図に変化はない。消費が動かない限り、内需に火がつく感じにはなりにくい」と指摘。2004年度の実質成長率は「2%台後半が見込まれる」としながらも、「2004年後半から、景気後退まではいかないが、回復の速度が落ち、ある種の停滞感が出る可能性もある」と語った。
同じ日銀政策委員会のメンバーである岩田一政副総裁は2月18日、神戸市内で行った講演で「2年連続で2%台半ばの成長が続けばデフレを脱却できる」と述べ、2004年度中のデフレ脱却を示唆したが、中原委員はより慎重な見方を示した格好だ。中原委員はまた、リスク要因として為替相場の動向を挙げたうえで「(ドル安の)流れが変わったとは思えない。これからどちらの方に動き出すか、なお注意する必要がある」と述べた。
「ゼロ金利」と「望ましいインフレ率」
中原委員は、長期金利の動向については「実体経済に本当に見合った金利の上昇であれば、(日銀は)ある程度容認していく姿勢を持って(量的緩和の)出口政策に近づくべきだ」と指摘。そのうえで「(量的緩和の出口が近づけば)どうしても行き過ぎが出てくる。日銀はそういう状況にならないように、市場との対話を続けていくべきだ」と述べた。
量的緩和の出口政策について「封印すべきという声もあるが、ある程度冷静な議論は必要だ。
私自身は、量的緩和からの出口はできるだけ軟着陸することに比重を置くべきだと考えている」と言明。そのための1つの案として「量的緩和を解除した後、ゼロ金利政策をしばらく続けると同時に、1-2%という望ましいインフレ率を示し、その達成を目指して政策を行う」ことを挙げた。
中原委員はさらに「現在の状況から見て、景気が腰折れするリスクは比較的小さいが、万が一景気が下方に屈折するような状況になれば、量的緩和の延長線で強化するしかない」と指摘。そのうえで「リスクの大きさの度合いによっては、一段の量の拡大とともに、長期国債や外債、指数連動型投資信託(ETF)の購入など、今まで議論されてきたような選択肢も視野に入ってくるだろう」と述べた。
主な一問一答は次の通り。
――景気の現状と先行きをどうみるか。
「昨年10月の経済・物価の将来展望とリスク評価との比較で言えば、標準シナリオの上限を走っている感じだ。輸出は予想以上に強い。設備投資は業種や中小企業に広がりが出てきた。消費はデジタル家電ブームらしきものも感じるが、雇用・所得環境は依然厳しく、好調な企業業績が家計支出に波及するには時間がかかる。今後も緩やかな回復を続けると見られるが、外需主導という構図に変化はない。消費が動かない限り、内需に火がつく感じにはなりにくい」
――04年度の実質国内総生産(GDP)成長率はどの程度と予想するか。
「03年度後半に急ピッチで上昇したので、04年度の成長率はゲタ(前年度からの上乗せ)が結構あり、2%台後半が見込まれる。ただ、米国は減税効果がはく落すれば成長速度はいったん落ちるだろうし、中国も過熱懸念から経済運営は引き締め気味で、日本の輸出は今までのようには伸びないだろう。景気後退までは行かないが、今年後半から回復の速度が落ち、ある種の停滞感が出る可能性もある」
――物価の先行きをどうみるか。
「国際商品価格の急騰は中国要因だけでなく、世界的な過剰流動性を背景に投機資金がかなり入っていると思う。国際的な競争と生産性上昇のなかで、最終財への価格転嫁は従来に比べて進みにくいのではないか。国内の需給はまだ緩んだ状態にあるため、今年春先から特殊要因がだんだんはく落していくと、消費者物価指数(生鮮食品を除く)前年比上昇率は若干マイナスになる可能性がある。どう考えても、デフレ脱却は2005年度以降とみている」
――注目するリスク要因は何か。
「米国の雇用は最近改善傾向を見せ始めている。貯蓄投資の不均衡による経常赤字もどんどん拡大する感じではなくなったし、財政収支の赤字も今年がピークと言われている。米国はあまり死角がなく、比較的バランスの良い成長になっている。中国は過熱のリスクもあるし、人民元相場の見直しも意外に早いという見方もあるが、大きな混乱が起こるとは見ていない」
「ドル円相場の動向には注目する必要がある。1ドル=110円程度に戻っているが、(ドル安の)流れが変わったとは思えない。積み上がっていたドルの売り持ちをひとまず巻き戻したといったところだろう。これからどちらの方に動き出すか、なお注意する必要がある」
――量的緩和が採用されて3月で3年経つ。ここまでの効果をどう評価するか。
「私は採用当時に日銀にいなかったので、私なりの解釈だが、当初狙った効果としては、(1)実質的なゼロ金利の継続、(2)時間軸効果(将来の短期金利の予想を通じて現在の長めの金利に働き掛ける)によるターム物など長めの金利の低位安定、(3)ポートフォリオ・リバランス(日銀当座預金を保有する金融機関の資産選択に影響を及ぼす)効果と、それを通じたインフレ期待の醸成、(4)銀行の信用創造活動を通じたマネーサプライの増加――が挙げられる」
「実際には、長短金利を極めて低位に安定させて、金融システムの混乱を最小限にとどめる効果はあった。それを通じて実体経済の底支えをし、デフレの深刻化を防ぐことができた。しかし、ポートフォリオ・リバランスでインフレ期待を醸成したり、貸し出し増加を通じてマネーサプライの増加を図る点については、残念ながら有意な効果を確認するデータは出ていない。効果は顕現してないか、あるいは不確実だったと言わざるを得ない」
「原因を考えると、企業のバランスシート調整で資金需要がなかったこと、銀行も資本制約からリスクテイク能力に制約があったことが挙げられる。こうした構造問題が残るなか、効果は十分ではなかったが、それをもって量的緩和が有効ではないと結論付ける必要はまったくない。今のように経済に前向きな勢いが出て、銀行のリスクテイク能力が回復してくると、量的緩和はその勢いを後押しする効果を持ってくるのではないか」
――1月20日の金融政策決定会合では、「景気は緩やかに回復している」とする一方で、当座預金残高目標を27-32兆円から30-35兆円に引き上げた。
「私が引き上げに賛成した最大の根拠は、7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を前に円高の行き過ぎを懸念したためであり、それが実体経済に及ぼす可能性が高まったと判断したからだ。景気は日銀の標準シナリオに沿ってはいるが、望ましいシナリオとはかい離しており、デフレ克服にメドがついていない現状から、日銀の姿勢を示してアナウンスメント効果を求めた点も根拠の1つだ」
「量的緩和政策には、やはり期待に働き掛ける効果があると思う。経済がどんどん下に落ちているときには、期待に働き掛ける効果はなかなか働きにくいが、こうやって前向きな力が働き掛けてきた時には、日銀の姿勢が期待に働き掛ける効果が次第に出てくるのではないか」
――期待への働き掛けを意図するなら、なぜもっと大胆に量を拡大しないのか。
「今までもそうだったし、これからも恐らくそうだが、いくら量を拡大しようと思っても、(落札額が入札額に満たない)札割れが起きて、資金を供給できないことがある。これまでは基本的に、市場が受け入れるであろう流動性の最大値を供給することを志向しながら、目標を引き上げてきたと言って差し支えない。今は資金供給をどんどん拡大できる状態ではない。当座預金残高目標の大きさがどう緩和効果につながるのか、意味のある論証ができないのは量的緩和の宿命だ」
――期待への働き掛けを意図するのなら、当座預金残高目標を引き上げることができるよう最大限の努力をすべきではないか。
「恐らく長期国債をどんどん買ったり、当座預金と代替性の低い資産を買えばできるかもしれない。しかし、一方で、日銀の財務の健全性や、量的緩和の出口政策、さらに資産購入に伴って生じるであろう副作用を総合的に判断していく必要があるので、それはそれで別の制約要因が出てくる」
――福井俊彦総裁は追加緩和の狙いとして、長短金利をできるだけ低位に安定させることを挙げた。景気が回復すれば金利は上がっていくのが自然ではないか。
「私は基本的に、実体経済に本当に見合った金利の上昇であれば、ある程度容認していく姿勢をもって、出口政策に近づいていくべきだと思う。ただ、難しいのは、市場は実体経済に見合って徐々に金利が上がっていくというような器用なことができない点だ。そういう状況になれば、どうしても行き過ぎが出てくる。日銀はそういう状況にならないように、市場との対話を続けていくべきだ」
「長期金利を低く抑えるため、長期国債市場に直接介入して抑えるのは、中央銀行がやるべきことではない。ただ、時間軸の効果を通じた長期金利の低位安定は考えていく必要がある。そういう意味で、量的緩和によって長短金利を低位安定させるという(福井総裁の)発言は、『時間軸効果を維持することによって』という言葉が省略されていると考えた方が良いだろう」
――量的緩和の出口政策はどうあるべきか。
「出口論は封印すべきだという声もあるが、ある程度冷静な出口の議論は必要だ。量的緩和の出口が近づけば、日銀が正式に出口に着きましたと宣言する前に、経済指標などから市場自らが判断するだろう。そういう状況になれば、市場はさまざまな思惑で動き出し、非常に不安定になるリスクがある。日銀としては、その時どのような問題が生じ、日銀がそれにどう対応するのか、市場と対話をしながら、基本的な姿勢をあらかじめ示していく必要がある」
「出口で考えなければならないことは大きく分けて3つある。1つは流動性吸収の方法とタイミング。2番目は中長期金利の急騰のリスクにどう対応するか。3番目は、昨年10月に量的緩和解除の条件を明確化したことで、政策の機動性を失い、引き締めが遅れてインフレ期待を高め過ぎてしまうリスクがあるので、これをどうコントロールするか。これらはそれぞれ(同時に成り立たない)トレードオフの関係にあるので、3つを完全に満足させる出口政策はなかなか考えにくい」
「私自身は、量的緩和からの出口はできるだけ軟着陸することに比重を置くべきだと考えている。軟着陸を目指せば目指すほど、引き締めが遅れるリスクが出てくる。これは1つの考え方だが、量的緩和を解除した後、ゼロ金利政策をしばらく続けると同時に、1-2%という望ましいインフレ率を示し、その達成を目指して政策を行う姿勢を示す。それが軟着陸を図るうえで望ましいのではないか」
「1%が望ましいインフレ率の下限であることを示すことによって、時間軸効果を持たせて軟着陸を図ると同時に、2%という上限を示すことによって、引き締めが遅れるリスクを抑えていく。金利の世界に戻るまでの不安定な状況を避けるため、いったんゼロ金利政策をはさみ、望ましいインフレ率を示すことで、時間軸効果を発揮させることが必要だと考えている」
――景気が腰折れした場合、日銀はどのような対応を取るのか。
「現在の状況から見て、腰折れのリスクは比較的小さいが、万が一景気が下方に屈折するような状況になれば、量的緩和の延長線で強化するしかない。リスクの大きさの度合いによっては、一段の量の拡大とともに、長期国債や外債、指数連動型投資信託(ETF)の購入など、今まで議論されてきたような選択肢も視野に入ってくるだろう。ただ、大きなショックが起これば、金融政策だけでは効果は限定的だ。当然、財政出動を含めて、政府・日銀一体となった対応が必要になる」
[ 2004年3月3日15時51分 ]