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生産輸出立国から研究開発立国へ転換せよ --- 青色LFD訴訟にみる日本企業の悪しき体質
2004年2月19日 木曜日
◆青色LED訴訟、200億円の支払命令は異常=同友会代表幹事
[東京 3日 ロイター] 経済同友会の北城恪太郎代表幹事は定例の記者会見で、会社に対して200億円の支払いを命じる判決が出た青色LED訴訟について、「問題がある判決だ。異常だ」との考えを示した。
北城代表幹事は会見で、「多大な(企業の)負担が発生するなら、日本で研究開発をする意味がなくなる。ボーナスとして報いるとか昇給、ストックオプションなどで対応できる。成果が出たら多大なコストがかかるとなれば、現在の(研究開発の)状態は維持できず、空洞化をもたらしかねない。国際競争力を念頭に置くべきだ」と述べた。(ロイター)
[2月3日15時48分更新]
◆ニュースと感想 2004年2月1日 「発明者報酬」について
◆額が巨額すぎる
逆である。小額すぎる。判決では 2010年までに 1兆2千億円と見ている。そのうち、たったの 600億円だ。5%にすぎない。これでは、アイデア製品(アイデア洗濯ばさみなど)の特許使用料と同じだ。独占競争力のないものでそうであるなら、独占競争力のある製品では、もっと高い特許使用料を払うのが当然だろう。ちなみに、書籍の印税は、10%だ。このくらいは、当然だろう。
◆負担に耐えかねて、研究施設が国外逃避する。日本から研究施設がなくなる。
そう思うのなら、勝手にどうぞ。たとえば、今回の例で言えば、「青色LEDは人件費の安い中国やアフリカで開発しよう」と思う会社は、中国やアフリカに研究施設を置けばいいだろう。たしかに、開発コストは激減する。ただし、成果も激減する。たぶんペイしないと思う。(どうせなら現地の企業の方が有利だろう。)
一方、「国内で研究開発を」と思う企業は、中村修二のような研究者を雇い、600億円の対価を払って、自社は莫大な利益を得ればよい。
どちらの道を歩むかは、その企業しだいだ。小額の金を払うのがいやな企業は、さっさとアフリカにでもニューギニアにでも逃避しなさい。青色LEDのかわりに、トーテムポールの特許でも取るといいだろう。
◆給与・処遇で報いている
その額が問題であるわけだ。今回で言えば、600億円の貢献度があったのだから、その分を払え、ということだ。いくら「給与・処遇で報いている」と主張しても、「払うべき金の1%以下」では、意味がない。ここでは、有無ではなく、量が問題となっている。
だいたい、企業は常日頃、「成果主義」を唱えていたはずだ。ところが、現実には、天才的な技術者が出ると、とたんに、「成果主義」の口をつぐむのである。劣った社員を見ると「成果主義」を唱え、優れた社員を見ると「平等主義・共同性」を唱える。……まったく。呆れはてるしかない。二枚舌というか。自己矛盾というか。ご都合主義というか。
◆もっと小額を払うだけでいいだろう
いくらまで値切れば気が済むのか? 5%から値切っても、たいした金額にはならない。たとえゼロにしても、コストは5%しか減らない。企業にとっては、あまり意味がない数字である。それだったら、中村修二を雇用する方が、ずっと得である。そうすれば、利益の向上は、5%どころか、何十%も向上しただろう。
金を値切ることばかり考えていて、売上げを増やすことを考えられないのが、阿呆な経営者だ。愚の骨頂。
今回、600億という数字を見て、「巨額だ」と思う人が多いようだが、実は、たったの5%だけなのである。絶対額が多く見えるのは、中村修二の発明が巨大であったというだけのことだ。取り分が大きいのではなくて、発明が巨大だったのだ。
ついでだが、会社がどうしても「払えない」というのなら、私が払ってあげてもいいですよ。会社の保有する特許権を、私が 3千億円で買ってあげます。そしてすぐ、その何倍かで転売する。ボロ儲け。……会社はもちろん、文句がないはずだ。なにしろ、「この特許の価値は2万円」と主張しているのだから。2万円のものを3千億円で買ってあげるのだから、文句を言わないでほしいね。
◆600億円という数字は大きすぎる。
「真面目に働いた金」として見ると、大きすぎるかもしれないが、「働かないで得た不労所得」として見れば、ちっとも大きくない。たとえば、アメリカでは企業経営者などが「ストックオプション」の形で、数百億円や数千億円をもらっている。彼らは、会社の経営を劇的に向上させたわけでもないのに、単に経営者というだけで、「ストックオプション」の形で、莫大な金をせしめている。
「技術者に巨額の金を払いたくない」と思うのならば、「ストックオプション」の形で払えばよい。たとえば、中村修二に、この会社の株の 10%を渡す。会社としては、別に、一円も払わないで済むのだから、問題はないだろう。また、中村修二は、600億どころか、その何倍もの莫大な金を入手できる。
( ※ 経団連などは、「ストックオプションで企業の活性化」と主張しているのだから、それを実際に行使する人がいれば、慶賀すべきことだろう。……とはいっても、あの団体は、常に二枚舌ですけどね。)
◆中村修二教授 特別講演の記録 2000年11月16日
20.比べて見ると日本はシステムが狂っている。日本は社会主義とも思える。また、官僚主義で森さんだって官僚の書いたものを読んでいる。
今、自分は自由を謳歌している。若い人をどう育てるかと聞かれることがあるが、アメリカに行けば良い。
また、日本のサラリーマンは虐待されている。米国では仕事の出来る人は4〜5年でやめて行く。
米国では入社の時に契約をする。4〜5年の期間とストックオプションの契約である。だから新入社員だってみんな入社条件が違う。日本のように100人も採用しようとすると大変な作業になる。
21.米国では人間を人間と見ている。先進国というだけでなく仕組みが違う。若い人はみんな米国に行くこと、4〜5年で会社を辞めることをすすめたい。(辞めないでいると企業は人件費を抑える方向に動く。)
野球選手やサッカー選手を見習わないといけない。アメリカの社会はベンチャーに支えられている。独創的なアイデアは会議からは出てこない。ベンチャーからでないと出てこない。
22.日本は教育に問題がある。高校、大学時代の大事な時に、好きなことをさせないといけない。暗記重点の入試制度が阻害している。中学、高校時代に米国に行かせてベンチャーの世界を経験させてから日本に戻ればよい。但し、米国ではやる気のない人はダメ。やる気のない人は日本にいればよい。日本は社会主義の国だから。
(私のコメント)
日本企業には今リストラ旋風が吹き荒れていますが、それならばリストラを逆手にとって、企業とサラリーマンの関係を見直してみるべきだろう。今までの日本企業は終身雇用と年功序列で来ましたが、それが長引く不況で崩れ去り、終身雇用と年功序列に代わり、リストラと成果主義の時代になったようだ。
日本が高度成長時代はベビーブーマーがみな若くて、よく働く割りに若年ということで給与を安く雇うことが出来た。その代わり年功序列で出世したら高給が約束されているとみなが錯覚した結果、90年代ともなると中高年サラリーマンが会社に溢れかえり、働きが十分でないのに給与は高いことになって、会社はリストラを始めた。
終身雇用も年功序列も今になって見ればベビーブーマーは騙された結果となる。安い給与でこき使っていながら、社員が歳をとると実力主義だの成果主義だのと言い出すのは一種の詐欺行為だ。企業も成熟化してくれば無能な人間でも幹部になるのは弊害が多くなる。年功序列から崩れ去り、出世できずにいた人もリストラにあい終身雇用もなくなった。
ならば最初から実力主義・成果主義で行きますよと言えば良かったのでしょうが、大企業では個人の実力を評価することは難しい。僅かな優秀な人間が多くの無能な人間をカバーしているのが大企業の実態だろう。優秀な人間が会社の幹部になり、無能な人間がその下で働くのなら会社はうまく行くのだろうが、無能な人間が幹部になって行けば会社は傾くだろう。
有能でも会社から評価されていないと思うならば、自ら会社を辞めて転職すべきなのだろう。中村修二氏が会社を辞めたのも実力と成果を評価してくれなかったせいで、会社にとってもかえって高くつくことになった。会社にとっても実力主義や成果主義は弊害の多い制度なのだ。つまり有能な人は高給を出さないと辞めてしまうし、無能な人ほど会社にしがみつく。
日本が生産大国であった頃は終身雇用も年功序列もそれなりに効果を発揮した。生産現場では年数に伴って習熟度も高まり熟練工として評価された。しかしそのような労働は中国などのような人件費の安いところへ移転していった。そして日本国内では研究開発拠点が残ることになり、有能な研究者や技術者が求められている。
中村修二教授が世界的大発明が出来たのも、中小企業で自由な研究が出来たからであり、もし大企業にいたら出来なかったことだろう。だからこそ有能な人間は大企業に行くべきではなく、中小企業か独立して始めるべきなのだろう。そのためにも今回の中村氏の発明に対する判決の高い評価は、これからの企業の転換を求めるものだ。
日本の長引く不況は企業体質を確実に変えている。有名大学を出た秀才ばかりを採用してきた大企業や銀行が業績不振でいるのは当然のことであり、官僚組織も高学歴者が多いが政治課題や経済問題に対応できずに迷走している。大学の入試なども専ら記憶力を試すものであり、独創性や創造性を試すような入試は行われていない。今までの教育体制が大量生産社会に適したもので、研究開発型の人材を育成するシステムになっていないからだ。