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G7財務相・中央銀行総裁会議が示したもの
崩壊への最終局面に向かうドル体勢とグローバル資本主義の危機
第二次大戦後の世界資本主義を統括しつづけてきた「ドル体制」崩壊の局面が、ついに始まろうとしている。七一年の金・ドル交換停止、八五年のプラザ合意にもとづくドル大幅切り下げのような、それまでのあり方を大きく変更する調整では、もはや今日の危機を乗り切ることはできない。しかもそのような調整を行う合意すら不可能な状態に陥っている。しかも「ドル体制」の次の構想は存在しないのである。
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玉虫色のG7宣言が示すもの
二月六日と七日、米フロリダ州ボカラトンで開催されたG7(先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議)は、焦点となっていた為替レート問題についての宣言を採択して終了した。宣言は、「為替相場は経済の実態を反映すべきだ」と確認した上で、「中期的に健全な財政努力が経常収支不均衡に対する取り組みにとっての鍵である」「急激な為替相場の変動や無秩序は、世界経済の成長にとって好ましくない」「為替相場の柔軟性の欠けている国や地域はより一層の柔軟性が望ましい」など、文字通り玉虫色の文言を連ねている。
「経済の実態を反映すべき」というのは、アメリカ経済のこの間の成長(たとえば昨年七〜九月期のGDP年率換算八・二%増)を取り上げて「アメリカ経済は強い。為替相場はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映すべきだ」として「行き過ぎた円高の是正」を求めてきた日本政府の主張に添っているようにも読める。
一方アメリカは、財政赤字や経常赤字の最悪の記録を更新し続けており、日本は巨額の経常黒字を積み上げ続けている。経常赤字を続ける国の通貨の為替相場が下がり、黒字の大きな国の通貨が上がるのは当たり前のことだ。したがって、「為替相場には柔軟性が必要」「為替は市場が決める」として緩やかなドル安の進行を歓迎してきたブッシュ政権の主張を表現しているようにも読める。
「急激な変動は望ましくない」というのは、ユーロ高や円高に苦しむEUや日本の輸出産業向けのブッシュ政権のリップサービスである。昨年九月のドバイでのG7で打ち出され、急速な円高ドル安進行をさらに促進したとされる「柔軟な為替相場」という文言は残されたが、谷垣財務相は「日本は為替相場の柔軟性を欠く国ではない」として、この表現が日本を対象としたものではないと強調し、円高阻止のための巨額介入には理解が得られたとしている。
それはドルとの事実上の固定相場を堅持する中国の人民元を対象にしたものだとされている。しかし、ユーロ高を食い止めようとする介入を行ってこなかったEUは、この間、日本の際限ない円売り介入によってユーロへの圧力が強まり、ユーロ高を加速させているという不満を募らせていた。ドル安を求めるアメリカのみならず、EUにとっても日本は「為替の柔軟性を欠く国」であった。
ドル資産からの逃避が始まった
アメリカの経常赤字、財政赤字は天井知らずに膨れ上がり続けている。そのためにドル相場が下がり続け、経常黒字をためこむ日本の円相場と、ヨーロッパを中心に第二の基軸通貨の地位を固めつつあるユーロ相場が上がるのは当然である。しかし日本もEUの大企業も、急激な円高とユーロ高をそのまま放置していては国際競争力を失い、何とかもたせてきた景気の失速につながりかねない。アメリカは大統領選を前にして、増やせるものなら輸出を増やして国際収支の赤字を減らすというポーズをとるために、緩やかなドル安を進めたい。しかしドル暴落になってしまっては大変だ。
だれもが、第二次大戦後六十年にわたって続いてきたドルを中心とする国際通貨体制が限界に来ていると感じている。いま何とかしなければ大変なことになると感じている。しかし次の新たな国際通貨システムの展望はなく、危機を先送りするしかないがそのための有効な手だてもなさそうだ。そして犠牲はなるべく他の国に押しつけたい。
玉虫色のG7宣言は、第二次大戦後に形成された現代資本主義が陥ったこのような危機の深さをそのまま表現している。解釈次第でどうにでもなる。したがってそれは、今日の国際通貨体制の危機に対する何の実効性も持たない、無力な言葉の羅列に過ぎない。
アメリカの財政赤字は、ブッシュ政権の予算教書では〇五会計年度(〇四年十月〜〇五年九月)に五千二百十億ドル(現在のレートで約五十五兆千七百億円)という過去最悪の規模に膨れ上がると見積もられている。〇三年の貿易赤字は十一月までで過去最悪だった〇二年の四千百八十億ドルを超え、四千四百六十八億ドル(同約四十九兆円)に膨れ上がった。
「IMF(国際通貨基金)の国際金融安定報告の集計では、〇二年の世界の経常赤字の合計のうち米国が七五%を占めた。換言すれば、世界の貯蓄の四分の三が米国一国によって使用され、米ドル資産に振り向けられたことになる」(吉川雅幸「米巨額赤字…ドル・リスクの増幅」『エコノミスト』03年10月28日号)。
この間、ドル相場の低下とともに「拡大し続けるアメリカの経常赤字はどこまで続けられるのか」「ドルを持ち続けて本当に大丈夫なのか」という、サスティナビリティー(維持可能性)への深刻な疑念が膨れ上がってきていた。
金融投機で荒稼ぎを続けてきた世界第二の資産家ウォーレン・バフェットが昨年十一月、経済紙『フォーチュン』でアメリカの赤字の拡大に警告を発し、「私は生涯これまで外貨資産を持ったことがなかったが、〇二年の春から初めて外貨資産を購入した」と述べた。ドル資産からの逃避が本格的に始まりつつある。
増大し続ける国際収支の赤字を埋め続けてきた海外からの資金流入の流れが逆転し始めている。昨年の対米株式投資は、アメリカの株価が上昇し続けているにもかかわらず大幅に減少し、〇三年には〇〇年の千七百五十億ドルの十分の一以下の百五十億ドル余りに激減した。そしてアメリカからの海外への株式投資が七百六十億ドルを超えたため、六百八億ドルもの純流出となってしまった。
マレーシアの首相マハティールは、「天然ガスを〇〇年の段階でユーロ建てで売っていたら、われわれは二五%多い代金を手にしていたはずだ」と述べた(朝日新聞03年6月11日)。減価し続けるドルを資産として持ち続けたいと思うものはない。ロシア、スイスなどEU圏周辺国以外にも、外貨準備でユーロの比率を高める国が増えつつある。貿易などの決済に使われるユーロの比率も、ゆっくりとではあるが確実に高まり続けている。それは基軸通貨としてのドルの弱体化、ドル資産からの逃避を加速する。
ブッシュは昨年十月の日米首脳会談で、為替政策についての不安もあらわに、「強いドルと言い続けないと、そうでないと思われてしまう」と口走った(同紙03年10月18日)。ドル暴落とドル体制崩壊の時は迫りつつある。
「この間、世界経済はアメリカ経済がバブル的に肥大化し、貿易赤字、経常赤字を激増させることによって維持されてきた。九八年の経常赤字は前年比五〇・四%増の二千三百三十三億ドルとなり、九九年には三千億ドルを超えると見られている。この巨額の赤字は海外からの資金流入でファイナンスしなければならないが、三千億ドルと言えば日本とヨーロッパの経常黒字の合計約二千五百億ドルをすべて注ぎ込んでもまだ足りない額である。海外からの巨額の資金流入が膨大な赤字をファイナンスし、株価を押し上げ、その資産効果でGDPの七〇%を支える個人消費が過熱し、バブル景気がふくらみ、その過剰消費による輸入増で深刻な不況下にある日本やヨーロッパやアジア各国の経済がかろうじて息をついている。このような構造が永続化し得ないことはほとんど説明を要しない」(本紙99年10月25日号)。
われわれは九九年のJRCL第十八回全国大会文書「時代認識について」で、現代資本主義の危機の構造についてこのように指摘した。それから三年、その「永続化し得ない世界経済の構造」の崩壊局面が、ついに始まろうとしているのである。
日本の借金で世界経済を買い支え
〇年の春には一ユーロは〇・八六ドルであった。それが現在では、一ユーロは一・二五ドルと五〇%近く上昇した。同じ時期に一ドル=一三五円だった円相場が、現在では一〇五円前後へと二二%も上昇した。日本政府の巨額の円売りドル買い介入による買い支えがなければ、ユーロと同様に五〇%近く上昇し、一ドル=一〇〇円割れどころが八〇円以下になっていた可能性は十分にある。
そうなっていたら、日本の輸出産業が大幅な円高によって受ける打撃がさらに大きくなっていたというだけではない。減価し続けるドルからの雪崩のような逃避が、世界的に生じてもおかしくはない。それはドル暴落をもたらし、アメリカの金利暴騰と株暴落をもたらし、アメリカ経済と世界資本主義を深刻極まりない大不況と大混乱にたたき込んでいただろう。
それをかろうじて食い止めたのが、日本政府・日銀による空前の円売りドル買い介入とそのドルによる米国債買い支えだった。昨年一年間の円売りドル買い介入額は実に日本の税収の約半分に当たる二十兆四千二百五十億円に達した。政府・日銀は御用納めが終わった十二月三十一日になっても、千五百八十一億円の介入を実施している。その必死のほどがうかがい知れる。
今年一月には、単月では過去最高の七兆一千億円もの円売りドル買い介入が行われた。外貨準備高はますます膨れ上がり、今年一月末には七千四百十二億ドル(約七十八兆円)となった。そのドル資産の大半が米国債で運用されており、日本の公的資金がアメリカの財政赤字の「穴埋め」を行っている形になっている。
相次ぐ介入で、国会の承認で決められている介入限度額七十九兆円は使い切られてしまった。政府は〇三年度補正予算で介入限度を百兆円にまで拡大し、〇四年度予算で百四十兆円にまで拡大する方針である。そして拡大が間に合わない間の介入資金を確保するために、昨年末には日銀との間で政府保有の米国債を十兆円を上限に日銀に売却する協定を結んだ。日銀は世界最悪の水準となった日本の財政赤字を支えるために、毎月一兆二千億円もの国債を買っている。ついに日銀は、アメリカの赤字まで買い支え始めたのである。
介入で売る円は、国債と同様の政府の借金である政府短期証券を発行して調達する。超低金利の現在は何とかしのげても、金利が高騰し始めれば利払いが一気に増えて財政破綻をもたらすことは通常の国債と全く同じである。
財務省が発表した〇四年度の国債発行計画は、新規国債三十六兆五千九百億円と期限の来た国債を償還するための借り換え債などをあわせると、一年間で実に百六十二兆円。国と地方の長期債務残高は今年度末に七百十九兆円に達する。すでに〇二年九月には、国債応募額が入札予定額に満たない「未達」が発生して債券価格が一気に値崩れし、金利が急騰したことがある。これもアメリカの「双子の赤字」同様、サスティナビリティー(持続可能性)がますます深刻に問われているのである。
このように借金漬けの、いつ破綻してもおかしくない深刻な財政危機のなかで、小泉政権はさらに天文学的な借金を重ねて調達した介入資金で必死になってドルを買い支え、米国債を買い支え、「双子の赤字」を穴埋めするだけの海外資金が流入しなくなったアメリカ経済を買い支え、そのアメリカの過剰消費に輸出でべったりと依存する日本や中国や韓国など東アジア経済を買い支え、世界経済そのものを買い支えているのである。
いくら巨額の借金を重ねて買い支えても、ドル安は進行し続けた。ドルは、余りにも巨大な「双子の赤字」がますます膨れ上がるアメリカの通貨にほかならないからだ。そのため、日本政府がドル買い介入でためこんだ米国債などのドル資産は大きく目減りし続けている。
財務省は、今年三月末にはそのドル資産の評価損が七兆八千億円に達するという見通しを発表した。昨年一月〜六月の平均レート(一ドル=一二一円)を、六月〜十一月の平均レート(一ドル=一一五円)に変更したためであるという。現在では一ドル=一〇五円前後である。評価損はさらに拡大し、十兆円を超えているだろう。
そしてドルが暴落すれば、借金を重ねてしぼり出した何十兆円もの公的資金が、「評価損」としてむなしく消えてなくなってしまうのである。大損しながら、膨れ上がり続けてますます返すあてのなくなっていく借金を重ねて、一体いつまで世界経済を支え続けられるというのであろうか。
米国の「双子の赤字」は減らない
たとえ「緩やかなドル安」が進行していったとしても、アメリカの「双子の赤字」が解消する可能性はない。グローバリゼーションの進行のなかで、アメリカ経済は一国の努力でバランスを改善する能力を失ってしまったからである。
すでに知られている通り、アメリカの産業構造は製造業からサービス産業へと決定的に比重を移してしまった。この十年間にも、製造業従事者の比率は一七・四%から一三・四%に低下し、サービス産業従事者の比率は六〇・五%から六五・二%へと上昇した。
この間アメリカでは、企業は株主への配当だけでなく従業員や地域社会に責任を果たし、人権や環境問題にも取り組むべきであるという、「企業の社会的責任」(CSR)という考え方と、CSRに熱心な企業を選んで投資する「社会的責任投資」(SRI)という運動が広がっていた。それは、エンロンやワールドコムなどの企業犯罪や発覚し反クローバリズム運動に直撃された米企業の「回答」だとされ、一定の社会的評価を受けてきた。
全米最大のジーンズメーカー、リーバイスはこのCSRとSRIを説明する際には必ず紹介されるほど、CSR優等生企業として有名だった。このリーバイスが一昨年には米国内の六つの工場を閉鎖し、今年三月までには残り五つの工場をすべて閉鎖して二千人の労働者を全員解雇すると発表した。「従業員や地域社会への責任」はあっさりと放棄され、生産拠点はすべて海外に移される。
この事実が端的に象徴するように、世界で最も早くから「産業の空洞化」として問題になっていたアメリカ製造業の生産海外移転は、まさに雪崩を打って進んでいる。対日赤字に代わって、貿易赤字のトップを対中国赤字が占めるようになったが、中国の輸出企業トップ四十社のうち十三社がアメリカ系企業である。
大統領選を前にした国内の製造業などの圧力で、ブッシュ政権は「人民元切り上げ」を求めているかのようなポーズをとっているが、もちろん本気ではない。中国に生産拠点を置く米系多国籍企業の業績に関わるからだ。
そして国内に残る製造業のうちで、軍需産業の占める割合が増大し続けている。米商務省のGDP統計では、〇三年七〜九月期の連邦政府支出七千八百九億ドル(年換算)のうち実に六六・三%、五千百八十億ドル(同)を軍事費が占めていた。財政赤字を膨れ上がらせている軍事支出の激増が、軍需産業の成長をうながし、民間設備投資を引っ張ってGDP成長率を引き上げているのである。
産業構造がこのようになっていれば、経済成長すればするほど輸入が増えて貿易赤字が増大し、軍事費が増大して財政赤字を拡大していかざるを得ない。大幅なドル安は代替する国産品のない輸入消費財の価格を押し上げ、むしろ貿易赤字を拡大するであろう。
アメリカ経済の中心を占めるサービス産業はいまも強い競争力を持っている。しかしこの間、サービス産業の「空洞化」も急速に進行し始めた。コンピュータデータ処理、産業エンジニアリング、会計業務、広告などを中心にした「サービス」のインドなど海外へのアウトソーシング(外部依託)が本格的に進行している。
たとえば、エンロン事件など企業犯罪の当事者として大手会計事務所が問題になったが、このような会計事務所の海外への業務アウトソーシングが加速しつつある。インドの会計士に処理させれば人件費が圧倒的に安くなり、アメリカ国内で会計士を抱える必要もなくなって企業収益は大幅に上昇するからだ。
九二年から〇二年までの十年間で、民間部門のサービス輸入は千二十億ドルから二千五十二億ドルへと倍増した。製造業の海外移転に続くサービス産業の海外移転は、雇用喪失=失業増大を加速する。「『米国内の千四百万人分の雇用がアウトソーシングの対象になる可能性がある』。カリフォルニア大学バークレー校ビジネススクールのアショク・バルダン上級研究員らは、十月末にこんな調査結果をまとめた」(朝日新聞03年11月27日)。
ますます野放図に展開される資本の新自由主義グローバリゼーションのなかで、アメリカの「双子の赤字」はいつか必ず来る破綻へ向かって転がり落ちながら、膨れ上がり続けることになる。それは、グローバル資本主義が一国的資本主義の経済的枠組みを破壊しつつあり、それによって自らの基盤を掘り崩していることを示すものである。
危機の深さと闘いの持つべき性格
このような、未来を食いつぶしつつ破綻に向かう構造のなかで、日米の多国籍企業は新自由主義グローバル化の恩恵を受けて大もうけを続けている。米エネルギー最大手エクソンモービルは一月二十九日、〇三年の当期利益が過去最高の二百十五億ドル(約二兆二千八百億円)に達し、前年比八八%も伸びたと発表した。金融最大手シティーコープも当期利益が同一七%増の百七十八億ドルで過去最高となる。
コンピューター最大手IBMの〇三年の売り上げも過去最高の八百九十一億ドル、当期利益も同四三%増の七十六億ドルとなる。軍需大手ロッキード・マーチンやノースロップ・グラマンなども過去最高の売り上げや利益の大幅増を記録している。ニューヨーク証券取引所の株価も〇〇年一月の史上最高値をうかがう勢いといわれている。
日本でも、東証一部上場企業の業績が二年連続で増益となり、全業種(金融、保険を除く)で、バブル景気の絶頂だった八九年の経常利益水準を上回り、当期利益は八〇・五%の増収増益になる見通しになっている。日本経団連の奥田会長が会長を務めるトヨタ自動車は、〇四年三月期決算で一兆六千億円もの経常利益を上げると予測されている。ゴーンの大リストラで業績を改善した日産自動車も、売り上げと営業利益双方で過去最高を記録すると予測されている。
しかしアメリカでは、ひところ言われていたジョブレス・リカバリー(雇用増なき景気回復)どころか、ジョブロス・リカバリー(雇用を減らす景気回復)という状態になっている。昨年十一月時点で、半年以上職が見つからない労働者は全失業者の二三・七%という八三年以来の効率になった十二月に職探しを断念した失業者は四十三万三千人なった(しんぶん赤旗04年1月22日)。言うまでもなく、職探しを断念する人が増えれば増えるほど失業率は低下する。
全米市長会が昨年十二月に二十五の大都市部で実施した、ホームレスと飢えに関する調査では、前年に比べ緊急に食事の無料援助を実施した例が全体で一七%増加し、ホームレス用のシェルター提供が一三%増加した。理由は、失業や低賃金雇用や、家賃の高騰、光熱費の上昇などで、食事の支援を受けた人の三九%が仕事を持っていた(同03年12月20日)。余りにも低賃金の不安定雇用のために、最低限の食事さえ取れない人が増えているのである。
日本でも、バブル期を上回る利益を上げた東証上場製造業九百三十社はこの三年間で三十万五千八百人の人員削減を行った。昨年十二月の完全失業率は四・九%と久々に五%を割り込んだが、就業者と完全失業者を会わせた労働力人口は五年連続の減少で六千六百六十六万人。〇二年に比べ二十三万人も減った。職探しをしていない人を示す非労働力人口は五十六万人も増えた。就職難が余りにもひどく職探しを断念した人が増えたために、完全失業率が低下したのである。大学卒予定者の就職内低率も過去最悪を更新した。
労働者の賃金は小泉政権成立以来、残業時間が増えているにもかかわらず三年連続で減り続けている。一人当たりの〇三年の現金給与総額は、九七年に比べて年間で三十六万円も減った。
空前の大もうけに湧くトヨタの奥田が会長を務める日本経団連は、円高をも口実にして「国際競争力を保てるような適正な賃金水準」をうたい、今春闘期に本格的な賃下げを押しつけようとしている。
そして奥田は「大企業もリストラで汗を流したのだから、家計もリストラに取り組め」と報告書や講演で繰り返している。いわく、教育費を切り詰めよ、いわく、生命保険への支出は「身分相応に」せよ。まさに傘にかかった攻撃である。
このような攻撃を許してはならない。大企業のリストラで流されたのは、首を切られた労働者の血と、残された労働者がサービス残業=ただ働きで流させられた血の汗ではないのか。
その上に小泉政権は医療大改悪や年金大改悪で労働者人民に何兆円もの負担増を押しつけている。そしてこの小泉政権が、もはや返済不可能なほどに借金を膨れ上がらせながら、ドルを買い支え、米国債を買い支え、金利の急騰を防ぎ超低金利を維持させることによってアメリカの「ジョブロス・リカバリー」を支援し、アメリカと日本の巨大多国籍資本に空前の大もうけをさせている。
これが、発展の可能性を使い果たし、自ら基盤を掘り崩しつつ現在を生き延びようとする現代資本主義の現実の姿である。労働者の生活と権利を守り抜こうとする闘いは、第二次大戦後に形成された現代資本主義の構造が崩壊の最終局面に入ろうとするなかで展開されているのである。
資本主義に代わる、新自由主義的グローバリゼーションが作り出しつつある悲惨と混乱の世界に代わる、「もう一つの世界」をめざして闘わなければならない。「資本主義の枠内での改革」に自らをしばることは、最初から敗北を意味する。資本の支配と正面から対決し、それを根幹から揺るがすような闘いでなければ、改良すらかちとれない時代が始まっていることを、フランスやイタリアや韓国の労働者人民のストライキを軸にした大衆的実力闘争が示している。
奥田の暴言を許しているのは、右翼労戦統一や国鉄分割民営化を通して、闘う労働運動の歴史的連続性が解体され、世界の主要国で唯一の「大衆的ストライキのない国」になってしまったという敗北的現実である。
国家と資本に対する集団的抵抗の経験を一つ一つ蓄積し、つなぎ合わせ、全世界から流れ込むインターナショナルな闘いと結びつけながら、敗北的現実の克服をかちとろう。労働者が大衆的ストライキ闘争を再発見し全国政治闘争の必要性を再発見することをめざすための闘いに、全力をあげなければならない。(2月10日高島義一)
http://www.jrcl.net/web/frame040216c.html