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日米経済“蜜月” 『今なぜ』
日本のドル買い介入には目をつぶる−。今月の先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で米国が日本に対して取った態度だ。産業界をバックにするブッシュ政権にすれば、ドル買いは阻止したいはず。日本車が売れる米国内からも、かつてのような「ジャパン・バッシング(日本たたき)」は聞こえてこない。日本に甘い米国の態度の裏には、イラクをめぐる両国の危うい関係があるようだ。
「今や失業状態。でもいいことじゃないですか」
経済産業省米州課の職員が冗談めかして言う。同課は一九八〇年代から九〇年代前半にかけて自動車など日米経済摩擦が過熱した際、米国との難交渉に当たった部署だ。
■経産省米州課の職員「開店休業」
今では摩擦がなくなり、「開店休業」状態だ。代わって中国の経済問題や中東のエネルギー問題などについて、逆に日米協力に力点が移ってきているという。
しかも昨年の米国内日本車販売シェアは過去最高の28・6%に達したなかでの昨今の「摩擦なし」だ。
「現地生産で雇用を拡大し、社会貢献を通じて地域に溶け込もうと努めてきた結果」(トヨタ広報部)と確かに摩擦回避にメーカーも腐心してきた。経産省自動車課も「米国の自動車市場自体が二十年前より拡大したため」とその理由を分析する。
かつて経済摩擦は米国内の日本製品の販売シェアが拡大し、米国製品を圧迫した結果起こった。九五年の自動車摩擦のときは、米国側が中央情報局(CIA)に日本代表団の交渉を盗聴させたとも報じられ、日米関係がギスギスした。
それがトヨタが二〇〇四年三月期決算で日本企業として初めて利益一兆円を突破することが確実となり、ここにきてビッグスリーの一角を崩す勢いになっても「摩擦が起こりそうな警告サインはまったくない」(自動車課)。
メーカーの努力や市場拡大以上に、波風が立たない理由に「小泉首相とブッシュ大統領の個人的親密さ」を挙げる関係者も多い。
経産省米州課は「対日関係を重視するブッシュ政権は経済問題を取り上げて、いちいち小言を言わなくなった。クリントン前政権とは大違い」と言う。
■前政権とは違い日本重要視政策
経済摩擦が起きるような関係ではないという認識は、米国側の日米関係の専門家にも共通している。
外交問題評議会のエドワード・リンカーン上級研究員は「日米関係は、最高とまでいえなくも良好であるといえる」と話す。その理由に「外交では強い態度を示したクリントン政権と違い、ブッシュ政権はまったく逆の、非常に極端な政策をとっている」とブッシュ政権の性格を指摘する。
米国の戦略国際問題研究所の渡部恒雄上級研究員も「ブッシュ政権はクリントンの対日政策を批判、日本を同盟国として重要視する政策をとっている」。
ミネソタ大のジェフリー・ブロードベント教授は「ブッシュ政権は保守的でもリベラルでもなく変わった政権だ。保守的だったら歴史上、これほど大きな赤字(財政赤字と経常赤字)をだすことはなかっただろう。経済については楽観主義の立場だ」と説明する。
その上で自衛隊まで派遣してイラク復興に協力する日本への「配慮」が米政府にはある、と各氏はみる。
■米政府内にある日本への「配慮」
ブロードベント教授は「もともと国連などの意思を無視してのぞんだ戦争に対しての反省もあり、米国をサポートしてくれる国が増えることを望んでいる。大統領選を控えたこの時期、通常なら国内経済活性化策を打ち出すところだが、今はイラク戦争の戦後処理が最優先課題だ。日本の協力は本当にありがたかっただろう」と話す。
渡部氏は「国際経済の利益を求めるよりは、イラク復興優先の考え方がある。米国は日本に対して他の同盟国に比べ大きな配慮があることは間違いない。日本ほど米国との経済関係が強い国はないから」と日本への配慮を指摘する。
それが表れたのがG7だ。日本は円高阻止のため政府によるドル買い介入を続けている。ブッシュ政権は支持を得る産業界を考えれば、ドル買いは阻止したいはずだがG7では、日本を批判しなかった。
リンカーン氏は「米国が日本のドル買い介入に何の異論も唱えなかったことには驚いた。ブッシュ政権が自国の問題に目をつぶった結果だ。だが長期的にみれば問題化する」と話す。
「G7でも、あれだけ円高阻止のための介入をやれば、米国から『いい加減にしろ』とクレームがくる。だが今はこない。その理由は日本が巨大ながま口だからだ」と指摘するのは第一生命経済研究所の熊野英生主任研究員だ。
「買ったドルで日本は米国債を買う。一方、米側は大減税の上にイラクの戦費がかさみ予算が足りない。足りない分を日本に売った米国債代金でまかなっている」と日米経済にイラク戦が絡んでいると指摘する。
■過去最大の介入 昨年は20兆円超
財務省によると、昨年一年間の介入実績は過去最高の二十兆四千二百五十億円に達した。介入できる額を今年四月からは百四十兆円に増やし、さらにドル買いを続ける構えだ。
熊野氏は「米政府の元高官は今後も低金利の維持を日本に注文している。米国債を買う金をじゃぶじゃぶ出してくれ、という意味だ。事実、米国債の海外調達分の半分は日本からの資金だ」と話す。
しかも日本には約四千四百億円にも上る対イラク公的債権がある。イラク復興に弾みをつけたい米国としては、日本にかなりの債権放棄をしてほしいはずだ。その要請のために米国は昨年十二月、わざわざ元国務長官のベーカー特使を来日させた。
熊野氏は「この構造を考えると、現在の日米はイラク情勢が結びつけた相互依存の上に立った、ゆがんだ友情関係にある」と危うさを指摘する。
この日米の特殊な“蜜月”関係は、森政権から始まったと政治評論家の森田実氏は言う。「支持率が低下していた森首相はすがりつくように訪米した。足元を見た米国が森首相にのませたのが、早期の不良債権処理だ。金融が国の支配下に入ることで、日本を通じて米国は金融を掌握することができる。この路線を引き継いだのが小泉首相の『聖域なき構造改革』だ」と断じる。
■日本に外交なし 欧州は厳しい目
この関係から「ブッシュ大統領にとって、小泉首相は米国に金を流してくれる『かわいい坊や』。欧州は『日本に外交なし』とみている」と指摘する。
さらに最近の日米関係について米国内ですら疑問の声があがっているといい、森田氏はこう懸念する。「海外では日本を実質的な“独立国”と見る専門家は少ないが、最近では当の米国人すら『米国のためにも日本は独立すべきだ』と主張し始めている。日本が米国の属国と見なされている間に、アジアのリーダーとして中国が台頭しているからだ。米国にとっても望ましい事態ではない」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040212/mng_____tokuho__000.shtml