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欧州小売業の冬の商戦が低調なまま終わりそうだ。独仏では消費者の買い控えが広がり、売上高が前年実績を割る百貨店が続出。好調だった英国も一部のスーパーや専門店が販売不振に陥るなど消費の二極化が目立つ。ユーロ高に加え、個人消費のもたつきが欧州の景気回復の足を引っ張っている。
欧州の商戦はまず英国が昨年末に値下げセールを実施し、フランスは一月上旬、ドイツは下旬に年間最大の大売り出しが始まった。独大手百貨店、カールシュタット・クヴェレの昨年十―十二月期の売上高は四十五億ユーロ(約五千九百億円)と前年同期比六・八%減。国際流通グループのメトロも傘下の百貨店が前年割れと、足踏みが著しい。
独小売り連盟(HDE)は「二〇〇四年の売上高の伸び率は〇・五―一%程度」と減税など政府の内需刺激策に期待するが、エコノミストの間では「消費者の不安感は強く、回復は極めて緩やか」(ヒポ・フェラインス銀行)と厳しい見方が多い。
仏小売業最大手のカルフールの既存店売上高は十―十二月期に〇・二%減少した。主力業態の大型店が一・八%減と勢いがない。仏全体でも十二月の個人消費支出は前月比〇・二%増と市場予測を下回る。
昨年まで好調だった英流通企業も勝ち組と負け組の差がはっきりしてきた。大手総合小売業のマークス・アンド・スペンサーは一月十日までの七週間の既存店売上高が二・三%減。美容関連大手のボディショップも三日までの十週間の同売上高が五%落ち込んだ。
英スーパーでは価格競争力に勝る最大手のテスコが売上高を大きく伸ばす一方、三位のセインズベリーは微増、四位のセーフウェイは前年割れと格差が開いている。全体でも英小売業協会の昨年十二月の売上高は前月比〇・二%減と、イラク戦争で消費心理が冷え込んだ三月以来の前年実績割れとなっている。
欧州では人口、可処分所得ともに最大であるドイツの不振が最も悩みの種だ。二〇〇三年の個人可処分所得は前年比〇・九%増の一兆三千七百八十億ユーロ(約百八十一兆円)。しかし個人消費は〇・八%増と、可処分所得の伸びを二年連続で下回った。消費者は所得が増えても財布のひもを緩めない。
家計が守りを強める背景に年金改革の行方など先行き不透明感がある。公的年金に頼れないとして私的年金へのシフトが目立ち、貯蓄率も高まっている。雇用も低迷し、失業者数は一昨年十一月以来四百万人の大台を超えたままだ。
急激なユーロ高も屋台骨である輸出産業に打撃を与えている。フォルクスワーゲンやダイムラークライスラーなど自動車大手の業績は相次ぎ悪化。従業員が多いだけに消費への影響は大きい。
欧州連合(EU)は域内製品をすべて「メード・イン・EU」に統一する方針で、今後は「ドイツ製」の表示ができなくなる見通し。拡大EUの動きを背景に生産拠点の中・東欧の移転が進み、ドイツの中小企業の廃業が続出しており、構造的な要因で低迷は長期化しそうだ。
(フランクフルト
=池上輝彦
ロンドン=野沢正憲)
【図・写真】英国では流通企業の業績が二極化(ロンドンのマークス・アンド・スペンサー