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「公的年金」抜本改革のまぼろし」
厚生年金基金連合会
専務理事
矢野 朝水 氏
2003年末の政府・与党合意で、次期年金改正の骨格が固まった。厚生年金の将来保険料を18.35%で固定し、給付は現役世代の平均年収の50%を維持するほか、基礎年金の国庫負担率を2009年度までに2分の1に引き上げるというものだ。現在、わが国の公的年金は、年間の給付が保険料と積立金の運用収入、国庫負担の合計を上回るという非常事態にあり、次期改正では保険料の凍結解除と基礎年金の国庫負担割合引き上げの達成が最大の課題である。政府・与党合意は不十分とは言え、この課題に答えるもので、法案の早期成立を望みたい。
政府・与党合意に対しては、「抜本改革の先送り」「つじつま合わせ」「その場しのぎ」との批判が声高になされている。しかし、抜本改革というと言葉の響きはいいが、その結果、各個人の給付と負担が具体的にどうなるかが最も大事なポイントだ。この点、基礎年金の全額税方式化、厚生年金の廃止・民営化といった抜本改革論は、事業主負担の軽減が主な狙いで余りにも問題が多すぎる。給付のスリム化は必要だが、負担はただ減らせばいいと言うものではない。年金の議論には給付と負担、両面にわたった「具体的な」議論が必要だ。
混乱招く給付の大幅削減
社会経済の実態を無視して年金制度を変更してはかえって混乱を招く。年金給付は既に年間40兆円を超え、日本の社会経済を支える屋台骨になっている。負担に比べ給付が高いのは事実だが、給付の大幅削減は消費を急激に冷やし、経済混乱を招くであろう。年金は加入が40年、受給が20年以上に及ぶ長期的制度で、これまでの長期の積み重ねがあり、それを無視することはできない。改革するにしても急な制度変更は不可能で、長期の経過期間を必要とする。抜本改革の検討は必要だが、抜本改革を口実に差し迫った課題を先送りしてはならない。
年金問題は先進国共通の悩みとなっている。日本よりいち早く少子高齢化や経済の低迷を迎えた先進諸国では、日本より早く年金改革に取り組んできた。そこでは、保険料の引き上げや税の投入、積立金の効率運用といった収入増加策を講じる一方で、支給開始年齢の引き上げやスライド方式の変更、満額年金の資格期間の延長といった、あの手この手の給付削減策を講じてきた。年金改正のたびに負担は増え、給付は下がった。近年では負担が限界に達し、専ら給付削減が年金改革の中心となっている。
「つじつま合わせ」は年金の宿命
このような改革はつじつま合わせそのものである。何故なら年金制度は給付と負担のバランスが制度存続の絶対要件で、つじつまが合わなくなれば制度が崩壊し、社会経済の大混乱を招くからだ。すべての国民が所得比例の年金に加入するスウェーデン方式にしても、保険料を固定し、経済状況や寿命の伸びに応じて給付を自動調整するというものであり、究極のつじつま合わせと言える。つじつま合わせは年金の宿命である。
年金には魔法の杖はない。たとえ、抜本改革しても制度が長期安定し、夢の世界が訪れるものではない。年金は経済という親亀に乗った子亀であり、経済がおかしくなればいかなる制度であろうとも立ち行かなくなる。経済が安定し、そこそこの成長が達成できれば年金について心配することはないのである。