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題名:No.592 規制緩和、民営化のツケ
From : ビル・トッテン
Subject : 規制緩和、民営化のツケ
Number : OW592
Date : 2003年9月12日
先月、アメリカ北東部からカナダにかけて大規模停電が発生した。日本でもいずれ同じようなことが起きるだろう。なぜなら日本政府もアメリカと同じ規制緩和、民営化政策を推し進めているからだ。他の国を壊している愚行を取り入れても日本人は特別だから大丈夫だと思っているのか、または規制緩和がどのような結果をもたらすか気づいていないかのどちらかであろうが、私は後者だと思っている。
(ビル・トッテン)
規制緩和、民営化のツケ
規制緩和を推進する裏には、これまで政府によって規制されていた産業から民間企業がより多くの利益を得られるようにという狙いがあり、推進派は利益を追い求める企業や投資家で、消費者ではない。というと消費者もそれを求めているという反論があるだろうが、それは企業がメディアや御用学者を使って宣伝している「規制がなくなればサービスは安く、よりよいものとなる」という考えを検証することもなく信じている人が多いからである。
規制緩和派はロビー活動や宣伝広告、より直接的には賄賂を使ってそれを推進しようとする。企業がそこまで巨額のお金を費やすのも、規制を取り払うことによってそれ以上に大きな利益を上げることを見込んでいるからだ。しかし停電や事故、環境破壊は規制緩和がもたらす当然の帰結であり、規制がなくなればそのようなことが起きると覚悟しなければならない。なぜなら民間企業の目標は、法律を破らない限りにおいて可能な限り早く多く利益をあげることだからだ。
アメリカでの今回の大停電も、人々にどんな不便や混乱がもたらされても電力会社に罰は与えられない。むしろ逆に停電が起こらないように十分な設備投資を行えば、彼らは罰せられる。罰を下すのは株式市場だ。設備投資をすればそれだけ利益率が下がり、株式市場における彼らの評価は下がる。上場企業にとって株式市場こそが真の規制当局なのだ。企業が栄えれば社会が栄えるという考えは偽りである。ほとんどの場合、民間企業の利益は社会に損失をもたらす。
自由市場経済は誤った推論に基づいている。売り手と買い手のどちらも売買されるものについての十分な知識があるということと、どちらも自分たちの利益(幸福)のために、道理をわきまえた行動をとるという推論である。実際は売り手はほとんど常に買い手よりも多くの知識を持ち、特に電力のような技術的な分野では買い手が知識を持つことは難しい。そしてどちらも自分の利益(幸福)のために理にかなった行動をする保証はない。企業は例外なく短期的な利益を優先して長期的な社会の安寧を犠牲にするし、消費者は環境のような長期的な尺度ではなく、目の前の価格を重視するからである。
政府の厳しい規制があった時代、電力会社は公益企業として停電が起こらないよう常に設備計画を行ってきた。なぜなら政府がそれを強制し、また電力会社が適切な利益をだせるように社会が容認できる料金を課金することを許してきたからだ。ルーズベルト大統領が1930年代に雇用創出のために大規模な公共事業を始め、電力会社は規制の下で電力を提供することを命じられた。さらに大統領は電力会社からの政治献金を禁止した。それを変えたのはブッシュ元大統領である。1992年、ブッシュは電力事業を規制緩和し、共和党は電力会社から巨額の献金を受けとった。
カリフォルニア州では開発費用がかかるエコエネルギーに力を入れたことなどから電力料金が上がり、1996年には料金を下げる狙いの電力売買の自由化によって電力取引所での電力の自由取引が始まった。それを推進したのがエンロンだった。ところが2000年には自由化のために、建設費用がかさむ発電所を造る企業が減り、その一方で電力需要は拡大し、電力不足となって電力料金は値上がりし、また頻繁に停電が発生した。
2001年、ブッシュ政権は地球温暖化防止を目指す京都議定書からの離脱を発表し、またエネルギー政策を見直した。それは原子力発電推進への方向転換、ダムや火力発電所建設の規制緩和、自然保護区での石油・天然ガス開発など、エネルギー業界がさらに利益を拡大できる政策だった。しかし消費者のために電力価格に上限を設けることは「市場原理」を壊すとして除外された。
規制緩和がもたらす惨状は他の業界をみても明らかである。アメリカの航空産業はすべて破たんし、スケジュール通りに飛ぶことはほとんどない。通信業界は巨額の負担を抱えて経営破たんが相次いだ。イギリスでは民営化されてから鉄道事故が多発している。日本政府が社会を壊す政策であることを知りつつ、アメリカ追随路線をとっているとは思いたくない。エンロン事件と大停電、いくつの惨事をみればその誤りに気づくのだろうか。(私は夏のピーク時の電力安定供給のために原子力発電所を必要だとする論には強く反対する。これについてはまた別の機会に書きたい)。