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題名:No.596 経済効率最優先の危険性
From : ビル・トッテン
Subject : 経済効率最優先の危険性
Number : OW596
Date : 2003年10月10日
イギリスで始まった産業革命によって平均寿命が大幅に延び、生活水準は著しく向上した。私たちはこの成長が永遠に続くだろうと信じている。限りない欲望は新しい技術によって必ず克服できると思っている。しかし地球の資源は有限であり、それをめぐって戦いがおきているのである。
(ビル・トッテン)
経済効率最優先の危険性
先進国の生活様式はエネルギーなしに継続することは不可能であり、エネルギー資源が戦争の原因になっているのはそのためである。石油に代わるものはまだ出現してはおらず、石油なしには農業すら成り立たない。農業社会において天候が農産物の生産を左右したように、現代の農業に石油安定供給は欠かせないものなのである。
また、この生活様式は混乱に弱く、きわめて脆弱である。グローバル化によって接続された世界では、一個所の故障が残りの部分に大きな影響を与える。またコンピューターが実現した世界金融市場では、巨額の投機資本が世界を駆け巡り、1998年には金融システムを危機に陥れ、ノーベル賞受賞の経済学者がリスク管理を行っていたヘッジファンドが破たんした。
それでも世界経済のリーダーたちが方向転換をしないのは、彼らの目的が人間の幸福のためではなく、資本収益を最大にすることだからである。現在の経済理論が強調しているのは自由市場、競争、成長であり、完全雇用や環境保護といった人間の幸福につながるものではない。
資本収益の追求には限界がなく自分の資本へ最高の見返りを求める者たちは休むことがない。資本家経済においては経済成長は無限なのである。しかし資源が有限である限りこの勢いを緩めなければ、いくつもの文明が滅びたように現代文明も終焉を迎える日が来るかもしれない。
経済の効率性をなによりも優先しているという現実を、私は最近身近に強く感じたことがあった。9月10日のこのOur Worldで、民間研究者が関東地方に大地震が来るという予測をしたことについて書いたときただ。私は知人の経営者から串田氏の予測を教えられ、その研究者の出版した本や報告書を調べた上で、その研究者が発生時期と予測した一週間、私の会社が行うセミナーなどをキャンセルすることに決めたのである。これには社内からも反発があった。科学的に証明されていない予測をもとに売り上げに影響を及ぼすようなことをなぜするのかというものだった。
しかし私は経営者として、そして日本に居住する者として、大地震が予測されているのであれば最善の措置を採りたいと思ったのである。そして社員に災害時の役割・編成表の作成・周知をさせ、緊急連絡網の準備、緊急避難場所の確認、非常備品の確保、転倒・落下等危険箇所の見回り等々を徹底させた。阪神淡路大震災では数名の社員の自宅が全壊したにもかかわらず、私はそれまで企業の最高責任者としてとるべき防災対策をとっていないことを、この研究者の予測によって気付かされたのである。
地震は自然現象であり、地震や火山活動なしに日本という国は存在しえなかった。地震で被害が大きくなるのは、狭い範囲に多くの人や建物がひしめきあっているからである。それもすべて、地震対策よりも、経済効率が最優先されているからに他ならない。
政府は東海・東南海・南海地震が同時に起きれば、死者は最大で2万8300人、経済的な被害は81兆円にのぼるという被害想定結果を発表した。東海地震は「いつ起きても不思議でない」とさえ言い切る政府だがその対策は見えてこない。串田氏の予測は、幸いにも東京は、千葉県沖を震源とする震度4程度の地震ですんだ。しかし、その後北海道の大地震となり、今でも余震が続いている。政府地震調査委員会は昨日、地震活動が活発化しているために10月9日午後6時から3日および7日以内にM6.5以上の余震が発生する確率を、それぞれ20%、40%と発表し、警戒を呼びかけている。
地震予知については、警告を聞いてもまったく無視した人と私のように防災意識を高めた者と二通りに分かれたようであったが、今後も観測を行っている多くの民間研究者の方々には頑張っていただきたいと思っている。
大都市に多くの人々が集中する理由は何よりも経済の効率のためである。それによって地価は上がり、高層ビルを建て、それは地震や火災その他自然災害だけでなく、爆撃やテロのような狂気の人間からの危険も増やすことになる。しかし世界の国が軍事や防衛に使っている金額を環境問題や貧困、教育に使えばそれらを解決することは不可能ではないと思う。
アメリカ政府は過去最大の戦争マシンを作るために軍事予算は3790億ドルに急増した。これだけでも世界の貧困の原因をなくすことができる金額だが、少数の金持ちと少数の巨大企業が、多くの人間を貧困から救うよりも兵器を作って売買をし、戦争をするほうがより多くの利益が得られると判断しているのだ。
不足という経済の問題を解決した人間が、道徳的な問題、つまり貪欲という呪いをまだ解決できずにいる。もっと効率よく、もっと生産性向上を、ということばかりが強調されるが、実際私たちにもっと必要なのは道徳だと思う。仏教、儒教、自然神道といった日本やアジアの価値観の教育を取り戻すことによって、無限の成長や貪欲について、私たちは多くの大切なことを学べるであろう。