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http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20040219206.html
Niall McKay
2004年2月13日 2:00am PT かつて南米アマゾンとともに「地球の肺」と呼ばれたインドネシアのボルネオ島[現地名:カリマンタン島]では、違法な森林伐採が熱帯雨林(写真)を破壊し、生態系を壊滅の瀬戸際に追いやっている。
『サイエンス』誌2月13日号に掲載されたイェール大学のリサ・M・カラン準教授による新たな報告では、ボルネオ島では合法的な伐採用に確保されていた熱帯雨林のうち95%がすでに切り払われてしまっただけでなく、国立公園として保護されているはずの森林でも約60%が違法に伐採されているという。
非合法に伐採された木材は合板に加工され、アジアの他の地域へ輸出されている。また、日本や欧米の市場に向けた家具の製造にも使われている。ボルネオ島の貴重な原生林から採れるメランティー材(フィリピン産のラワンに相当)も、床材や高級車の内装に使われる。
イェール大学熱帯資源研究所の所長でもあるカラン準教授の報告によれば、現在のペースで森林破壊が続くと、テキサス州とほぼ同じ大きさのボルネオ島から、あと3年で完全に熱帯雨林が消えてしまうという。そんな事態になれば、野生生物や現地に住む人々、さらには地域の気象パターンにも甚大な影響を及ぼすことになる。現在でも、マレーグマやサイチョウ、ヒゲイノシシ、オランウータンといった動物は、急速に絶滅危惧種になりつつあるという。
今回の報告は、航空・衛星写真を、マッピングシステムや遠隔探査(リモートセンシング)機器から得たデータと統合したものだ。調査は1999年から2003年9月にかけて行なわれた。
カラン準教授は、「(森林の)残っている範囲は狭く、寸断されてしまっているので、すでに熱帯雨林に依存して生きている多くの種を支えられなくなっている。オランウータンやマレーグマ、野生のイノシシといった大型哺乳類が飢えている姿を初めて見た」と述べている。
ボルネオ島には420種類以上の鳥類と222種の哺乳類が棲息しており、そのうち半分は熱帯雨林がないと生きていけない。さらに、ボルネオ島の先住民であるダヤク族は、主にイノシシをタンパク源としている。
「動物たちが危機に瀕しているのは明らかだ。たとえば、西ボルネオのグヌン・パラン国立公園では、これから数年のうちにオランウータンの個体数が3分の2に減少するだろう」とカラン準教授。
カラン準教授は、現在の減少率が続けば、熱帯雨林に棲む動物の多くが10年も経たないうちに絶滅するだろうと考えている。「ある種の限界点に達するまでは、動物が絶滅することはない」とカラン準教授。「われわれは今、その限界点のごく近くまで来ていて、いったん限界点に達してしまえば、もはや手遅れで踏みとどまることは不可能だろう」
また、アブラヤシ農園が急速に拡大し、1992年から40倍になっていることも、問題をさらに深刻にしている。アブラヤシの栽培場所を確保するため、広大な熱帯雨林が伐採されているほか、農園が動物の移動を妨げる障害にもなっているからだ。
ボルネオ島の熱帯雨林の成長サイクルはエルニーニョ現象と関連がある。エルニーニョは以前、森林の再生を促す力を持っていたが、熱帯雨林が寸断されたことにより、むしろ森林を破壊する方向に働くようになってしまった。また、森林が切り払われたため、干魃(かんばつ)が以前より頻繁に起きるようになり、その深刻度も増した。その結果、森林火災も増加している。
ボルネオ島は、比較的大きな陸地のなかで、『エルニーニョ・南方振動』の影響を最初に受ける場所だ。また、1997年と1998年にはボルネオ島とブラジルでエルニーニョに起因する森林火災が起きたが、カラン準教授によると、この際に排出された二酸化炭素は西ヨーロッパ全体の工業生産による排出量よりも多かったという。
これほどまでに熱帯雨林の破壊が進んだ理由については、数多くの説がある。たとえば、地方分権化された政府が監視を怠ったことや、目先の利益を追う地元住民の行動に原因を求めるものだ。
だがカラン準教授は、森林破壊の真の原因は、世界的に木材の需要があることや、合法的に伐採された木材が業界全体で大幅に不足していること、スハルト独裁政権当時に始まった政治腐敗にあるとみている。しかも、政治腐敗はスハルト政権に限った話ではない。
過去20年間にボルネオ島で伐採された木材の量は、中南米とアフリカから輸出された熱帯の木材をすべて合わせた量を上回る。輸出が最高潮だった1990年代半ばには、木材産業は年間90億ドル規模に達していた。だが今や、合法的に伐採できる森林はほとんど残っていない。インドネシアの木材生産量のうち、90%以上は違法な伐採によるものだ。
[日本語版:長谷 睦/高森郁哉]
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