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「欧州どまんなか」February 10, 2004 本当は悲しいこと [美濃口 坦]
http://www.asyura2.com/0401/bd33/msg/682.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 2 月 10 日 21:39:49:dfhdU2/i2Qkk2
 

ダーク・ノヴィツキ−さんは25歳で身長が2.13メートルもあるドイツ人である。彼は5年近く前から米国プロバスケットボール協会(NBA)でプレーしていて、所属するダラス・マーヴェリックスの押しも押されぬ大黒柱である。

バスケ・ファンならどこの国の人でも彼の名前を知っていると思われる。でも彼がドイツで有名かというとかなり疑問だ。スポーツばかりを中継するテレビ放送局がNBAの試合を放送するが、別にこの自国選手がプレーするからではない。

ノヴィツキー選手がドイツで少し有名になったのは、2002年の世界バスケット選手権で彼が大活躍してドイツが予想外の銅メダルに輝いたからである。同国人が外国のクラブで出稼ぎするのは本人の勝手であるが、ナショナルチームの中でがんばるのは別の話で記憶に留めるといった印象を私は当時受けて、面白かった。

このような国に長々と暮らしているためか、米大リーグや欧州のサッカークラブでプレーする日本人選手について日本のメディアで見たり読んだりするたびに、私は奇妙な感じをおぼえる。去年から日本人選手がハンブルクのサッカークラブでプレーするようになったが、ドイツ人が度肝を抜かれたのは彼のプレーではなく、毎回試合に数十人もの日本人メディア関係者が現われることであった。

昔から日本はそんな大騒ぎをしたのだろうか。1970年代の終わり頃から80年代の前半にかけてドイツのサッカークラブで奥寺康彦選手がプレーしていた。当時私はサッカーなどに関心がなかったが、彼の活躍がよく話題になっていたのが思い出される。(サッカーが当時の日本で人気がなかったことを差し引いても)、たいていの日本人は奇妙なほど奥寺選手のことを知らなかった。とすると、その頃の日本は、ノヴィツキー選手について「そういえばそんな選手がいるのを聞いた」と反応する現在のドイツ社会とあまり違っていなかったのではないのだろうか。それならいつ頃日本は今のようになったのか。

エズラ・F・ヴォーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版されたのは1979年。その後の80年代に米国人の「おべんちゃら」が多くの人々の頭脳にじわじわとしみこむ。その結果、私たちの意識の中で知らない間に、世界は、日本人が活躍し同時にその活躍を自分のことのように感じることのできる「舞台」を提供するだけのものになってしまった。

ある出版関係者によると「外国でがんばる日本人」という話はいつも受けるという。これも、私たちが中毒患者のように自国の重要性を感じることのできる「舞台」を外国に求めているからである。日本人選手がプレーする競技場もこのような「舞台」の一つであることはいうまでもない。

メディアもこのような要求に応えて「舞台」を用意するようになる。80年代は外交関係が「サミット」を媒介にして国内向けショーの「舞台」になる時代であった。日本のメディアがどこの国よりも「サミット」を重視し、自国首相がファーストネームで呼ばれるかどうかを気にするようになったのも、この「舞台」に対する日本国民の需要に応えるためである。

80年代の終わり、ベルリンの壁が開いた直後、ブランデンブルク門の前に百以上のテレビ会社の中継やぐらが出現した。半分以上は日本の都道府県の名前のついたテレビ会社であった。こうなったのも、全国津々浦々で世界の「舞台」に対する需要を満たすためである。

年がら年中「国際化」が要求されるかたわら、私たちは、日本の重要性を意識できる「舞台」にならない外国とは、関係をもつこともまた関心を抱くこともできなくなりつつあるのではないのか。外国から情報との関連する職業をもつ人々のなかには、日本が精神的鎖国状況に陥る傾向を嘆く人は少なくない。

もうかなり前のことになってしまったが、陸上自衛隊がまだ到着していない頃のイラクのサマワで「ようこそ自衛隊の皆様」と書いてある横断幕が日本のテレビにうつった。その上のアラビア語には「ようこそサマワへ、日本人の皆様」としか書いていなかったというが、これもサマワが国内向けショーの「舞台」以外のなにものでないことをしめす事件である。

すでにオランダ軍が治安を回復・維持しているところに重武装の兵士を派遣する理由は存在しない。目的の一つとされる給水事情の改善であるが、これはドイツ政府も努力している点で、このために去年の9月から数人のエンジニアをイラクに滞在させるだけでなく、水道管の漏れの検知器などを供給しイラク人自身が直せるようにするのがその目的とされている。

このように他国がしていることを考えると、自衛隊派遣は本末転倒の税金の無駄使いであり、また私たちにイラクについて、本当は何にも関心がないことをしめす。このことが気にならないのは、外国が私たちにとって自国の重要性を感じる「舞台」に過ぎないからだ。この現象は私たちの傲慢と関係があり、自業自得で滑稽であるが、本当は悲しいことである。

http://www.asahi.com/column/aic/Tue/d_tan/20040210.html

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