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January 27, 2004
最近インターネットで日本の新聞の記事を読んでいて、私は自衛隊員が「札幌雪まつり」に置かれる巨大な雪像を作ることを知る。どこの国でも軍隊はいろいろなことをする。ドイツの連邦軍も洪水になると大活躍するが、これぼど駐屯する町のために貢献する例はないと思われる。
私が自衛隊の多芸多才を知ったのは、東京新聞に掲載された「雪まつり本隊撤収?」という記事読んだからである。この雪祭りに協力する陸上自衛隊第11師団は今度イラクに派遣される。雪まつりの協力に決まった隊員を前に、師団長は札幌市でイラク派遣反対運動が激化して自衛隊に協力しにくい環境になるなら「(雪まつりから)撤収も含めて検討する」と語った。
この発言に対して、札幌で自衛隊イラク派遣反対運動をする人々は「さっぽろ雪まつりを人質にとり言論・表現をけん制する行為」と抗議したという。自衛隊の協力なしに札幌市民にとり重要な雪まつりは実現しないので、この師団長の発言は政治的見解を自由に表現しにくくすることになる。発言をこのように理解することは正しいと私も思う。
でも本当にそれだけか。こう解釈することは、師団長発言を、特定政党を支持する会社の社長さんが別の政党の支持を表明したお出入り業者に嫌味をいった程度の問題と見なすことである。私は、もっと根の深い問題を、それも何か宿命的なものを感じる。イラクに自衛隊を派遣するか、しないかも、その決定も、またその決定に賛成することも反対することも、政治的行為で政治の領域に属する。
私は昭和の歴史に詳しくないが、ある頃から勢いに乗った軍人が政治に口を出すようになり、多くの人々がその剣幕に押されてしまった。戦争の決断は政治的行為であるが、前線の中国で戦闘が拡大していった。この軍事行動を、政治は追認するしかなく、(後からよくいわれるように)「泥沼のような戦争」に陥ってしまったのではなかったのだろうか。私はこう記憶するので、札幌の第11師団長の発言と、お出入り業者に政党支持で嫌味をいう社長さんとを、同列にできない。
こう思いながら東京新聞の記事を読んでいると、ドイツで私が知る普通の「軍と政治」の関係とはまったく異なっているのに気がつく。この記事は、同師団関係者と親しい軍事評論家神浦元彰氏の次の発言を引用する。
「陸自のトップ連中は頭に来ている。イラク派遣の最低限の条件と言っていた国民の支援が得られていない。拍手や熱い期待が得られない空しさがある。札幌市民にケツをまくったというよりは社会にまくったのでしょう」
(東京新聞の記事へ)
なぜ自衛隊幹部はイラク派遣に関して「国民の支援」とか「拍手や熱い期待」とかを望むのか。イラク派遣は政治の最高責任者小泉首相が決定したことである。それが国民に支持されるかどうかも彼が心配する問題である。軍人は、国民の多数が支持していなくても、政治家の決定を実行しなければいけない。その結果は政治家の責任である。
ドイツの軍人にとって、国民とは直接「支援」してもらったり「拍手」してもらったりする存在でない。というのは、自分たちと国民の間にシュレーダー首相を代表とする政治機構が超えることのできない壁として聳え立っている。日本のほうは、こうなっていない。それどころか、「イラク派遣自衛隊隊員を支援する議員の会」(仮称)とかができ、隊員の無事帰還を願う「黄色いハンカチ」運動が全国的に展開されるという。
こうして自衛隊と国民の間にこのような直接のパイプがつくられ、(政治が消えると)国民は無事帰還を願うか、そうでないことが起これば、それを悲しむだけになり、派兵の政治的是非や成果を問うことなど困難になるではないのだろうか。こうして政治的責任が問われない構造になる。
制服組が国民と直接関係をもとうとすることは、普通の国の普通の軍隊にふさわしい態度でないように思われる。でもなぜ自衛隊はこれほど国民の支援が気になるのだろうか。
答えは簡単である。それは自衛隊が日本社会の中で差別されてきたからだ。自衛隊のほうは国民から「認知」を得ようと他の国の軍隊がしないような大サービスに努める。雪まつりに対する協力もその一つである。
自衛隊が差別されたのは、私たちが戦後、反軍国主義者になって、不幸をもたらした戦争と一番関係のあった軍人を縁起の悪い不吉なものと見なすようになったからである。
昔、私が京都にいた頃、「みなさん方の中に自衛隊に入りたい人はいませんか」という戯れ歌が流行り、私たち学生はヘラヘラ笑い、自分たちが反軍国主義的で平和のために何かしている思っていた。でも本当は、私たちは反対の結果をもたらすためにはげんでいたのかもしれない。私はこう思うので、師団長発言に何か宿命的なものを感じたのだと思う。
http://www.asahi.com/column/aic/Tue/d_tan/20040127.html