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(回答先: ブラジルPT左派はどのように闘うか ルラ政権成立から九カ月間(上) [かけはし] 投稿者 なるほど 日時 2004 年 1 月 25 日 16:26:24)
かけはし2004.01.19号
したがって、社会に綱領的オルタナティブを提起する広範な綱領を構築することは、現瞬間の中心的重要事である。この綱領の要素をいくつか挙げるとすれば、次のようなものになるだろう。
(1) 左翼政権を支持するためには、政治的意思決定への民衆の参加が決定的要素であるという考え方(参加型民主主義は、二〇〇一年末にレシフェで開催されたPTの第十二回全国会議で承認された「政権綱領指針」の基軸のひとつである)。
(2) オルタナティブ経済政策。年初来、PTまたは左翼に関連する多くの経済学者が政権の経済的方向性を批判し、オルタナティブ戦略を擁護してきた。この戦略も、二〇〇一年全国会議で承認された指針および二〇〇二年の「政権綱領」に示されている概念に一致している。また、部分的には計画省が二〇〇三年六月に提案し財務省や中央銀行の政策と対立している「複数年計画の戦略的方向」に一致している(ただし、複数年計画は財務省や中央銀行が採用した経済政策の具体的処置と同じ現実の重みは持っていない)。このオルタナティブ戦略の中心思想は次のようなものである。
(a) ブラジル経済の最大の問題は、経済的従属性の最も重大な側面である外部的脆弱性である、という認識。これは、最初に立ち向かわなければならない問題であり、財政的調整の拡大により「信頼の獲得」を追求することでは解決することはできない。財政的調整による信頼の獲得は金融市場の利害と雰囲気への従属性を深めることを意味する。反対に、何よりも資本の動きに対する支配を確立することが必要である。
さらに、対外負債の問題が再び議論の中心になっている。二〇〇三年九月一日に、著名なブラジルの経済学者セルソ・フルタドが債務交渉でモラトリアムを宣言することに賛成する声明を発表した。債務交渉に関してはアルゼンチンの例が存在する。九月中旬にIMF自身の研究が発表されたが、そこではIMFは「アルゼンチンのようにモラトリアムを宣言した国は、GDPとの関連で負債の重みを軽減し、比較的短期間に成長に復帰する大きな可能性を持っている」と認めている(注7)。
(b) 金利の引き下げと、「一次財政黒字」最優先の概念を放棄することによって、経済成長に復帰すること。これによって失業の減少(そのための他の政策も必要である)と労働者の所得の増加が可能になる。したがって、これは貧困と社会的不平等を減らすために重要である。これを、PTの従来からの提案である国内市場の拡大を通じた開発(「二〇〇四〜二〇〇七複数年計画の戦略的方向」で提起されている)の強調と結びつける必要がある。言い換えると、PTが常にそうしてきたように、開発の全国プロジェクトの追求を強調することが必要である。
(c) 開発の全国プロジェクトは、ラテンアメリカ諸国やその他のブラジルと条件の似た国々との関係を深めることと対立するものではない。ルラ政権の外交政策のこの側面は重要であり、強化される必要がある。他方では、すべての開発プロジェクトはFTAAに対置される。
(3) 開発の国内的民衆的プロジェクトの条件としての農業改革と新農業モデルの防衛。
農業問題は、民衆の利益の観点から見て未だに解決されていない今日的問題である。農村地帯の社会的、経済的、環境的問題の悪化は、新しい農業モデルの必要性を示している。新しい農業モデルには、農業構造の大きな変革と生産支援プログラムの作成、家族農業および農業改革を通じて確立された定住地の市場開拓が含まれる必要がある。連邦政府が最近示した家族農業の収穫計画には、ブラジル農業の中でいっそう中心的役割を担うようになりつつあるセクターを強化するうえで重要な積極的対策が示されている。
したがって、農業問題を解決し、国内市場に支えられた開発のプロジェクトに統合することは、新しい基盤に基づいて広範な農業改革を実施することである。これによって土地、権力、所得へのアクセスの民主化が進み、ブラジルの農村環境の中で生活し働く住民の重要な部分への基本的権利の普及が進行し、よりバランスの取れた土地占有と環境の保全がもたらされるだろう。それだけでなく、食料主権を保証し地域経済を活性化するという基本的役割が果たされるだろう。
農業改革の防衛は、新自由主義からの継承物とブラジル社会の保守的セクターに対する大きな挑戦でもある。前政権が行った反農業改革路線では、運動を犯罪扱いし運動の正当性を奪い、土地なき農民を隔離された地域に集めて定住の権利を奪い、他方では生産支援や市場開拓の政策は展開されなかった。
農業改革に活発に関わることは、MST(土地なき農民の運動)、CONTAG(全国農村労働者連合、CUTの農村部門)や諸運動との広範な戦闘的連帯を実現することを意味する。諸運動とは、大土地所有者とその私兵(反動と暴力のシンボル)に対する社会的圧力を強め、民主的啓発的役割を果たしている多くの運動である。
この関わりを発展させるために必要な任務には次のことが含まれる。すなわち、農業改革の新しいモデルの構築、すでにインフラストラクチャが存在している地域の土地の収用、定住地を集約しそれらを生活と生産の質を保証する空間に変えること、である。また、このモデルは、家族農業および共同体農業を市場開拓および農工業的処理の構造と統合し、経済的に効率的で、社会的に公平で、環境的観点から持続可能な新しい農業モデルを構成できるものでなければならない。
二〇〇二年大統領選挙でのルラの勝利は、世界各地における新自由主義的アジェンダに対する拒否の高まりの一環であった。しかし、ルラ政権の最初の数カ月間の主要経済政策は、新自由主義的グローバリゼーションに対する世界的規模の幅広い抵抗勢力の期待と切望を大いに裏切った。このことは、多国間組織に反対する動員の中で、世界社会フォーラム、世界女性行進(ブラジルに強力な組織を持っている)、社会運動国際ネットワーク、反FTAA南米大陸運動、南米社会連盟、ビア・カンペシーナ、南米大陸南部労働組合調整センターの中で表明されている。これらの国際的イニシアティブを強化し、これらの挑戦の世界的次元にブラジルの課題を結びつけ、ブラジルの全国的闘争を地域的および世界的運動に結びつけることは、新しい国際主義の芽を育てることであり、新しい国際主義は世界中の闘いを刺激し、ブラジル左翼の民衆的イニシアティブを強化するだろう。このような形で、ルラ政権が国際的レベルで占める進歩的位置を強化することができる。
PTが連邦政府を獲得したことは、PTの党の軌跡の新しい段階を開いた。共和国大統領選挙の闘いと勝利の中で産み出された希望を実現できるかどうかが問われている。また、社会主義の方向に向けたブラジル社会の転換に関する自らの綱領にPTが忠実であり続けられるかどうかが問われている。政権の最初の時期の経験は、この問いに率直な疑問を投げかけるものであった。
政府内で有力な考え方には、PTの社会的基盤との対立的な関係をもたらすものが含まれている。結ばれた同盟関係は選挙運動で掲げられた政府綱領と矛盾している。公共行政や公人の民主化の過程は目撃されていない。他方では、外交政策、農業改革、その他の分野では、PTの歴史的立場に一致した政策がとられている。PT党内や国会議員の中で、またPTの社会的基盤の中で対立の過程が発展している。党綱領と党の民主的活動的機能の防衛への支持が高まっている。
二〇〇一年十二月の第十二回全国会議で承認された「指針」と、二〇〇二年六月に承認された「政府綱領」は、限界はあるが重要な労作であり、党の公式の立場を示すものである。PTの左翼はこの労作を、政権の方向に関する論争の出発点にする必要がある。このようにして、PTの軌跡を継承し、党の会議が採用した立場の正統性の上に立つことができる。
政権は党の可能性を窒息させたわけではない。この二十三年間にわたってPTを構築してきた運動の根は深く労働者階級と人民の中に根づいている。PT建設の歴史は、ブラジル社会の社会的、政治的、文化的闘争の歴史であり、また内部論争の歴史でもあった。この過程が今も続いていることを再確認する次のような強力な論拠がある。
(a) PTの軌跡は、PTが代表しようとし、彼ら自身がPTに代表されていると感じている社会的階級と社会的セクターの軌跡である。
(b) PT内部における左翼の基本的重み。
(c) PTの複数主義の伝統、党内民主主義、「傾向」の権利。
(d) 党の軌跡を通じて構築された綱領的基準。
したがって、政権の最初の九カ月の方向性に基づいて、採用されたオプションが政権全体を一様に表現しており、将来全体を示すものであるかのように考え、矛盾や矛盾に関連して運動する勢力が存在しないかのように考えて、ゲームは終わったと結論付けるのは正しくない。PTは危機の時期を経験したばかりであり、この危機は今日予測不可能な期間にわたって発展し続けるだろう。政府の問題が党活動に関連する問題となるかどうかに関わらず(二〇〇四年の選挙、二〇〇五年の党指導部改選と全国会議)、基本的対決が迫っている。
現在の危機の深刻さを理解することは、PTおよび社会の中で発展する様々な対立の中で支持を得て危機を克服することが不可能であるという結論に至るわけではない。この環境の中でどのオルタナティブが生まれる可能性があるかを批判的に検討する必要がある。PTからこぼれ落ちてPSTU(注8)に加入した小さな一部は、オルタナティブを構成することはあり得ない。この可能性は、結成以来のPTの歴史的意味にほとんど相応していない。
現瞬間に必要なことは、左翼勢力を結集して同じ方向で介入することである。このプロセスが対立をはらんでおり、結果がひとつでない可能性があることを理解しつつ、これを行うことである。社会主義的で民主的な党としてのPTを目指す闘いは、決着していない。このような評価に基づいて、社会主義的民主主義派は、PT内の広範な左翼潮流の構築を目指してきた。綱領の定式化に寄与できる、進行中の中心的な対決に介入できる、PTを取り巻く社会運動全体に対処し政権の戦略的選択に反対して政権の行為に対処できる左翼潮流の構築である。
PTを政府の決定を伝える伝動ベルトに変えてしまうことに対する闘いが必要である。党綱領の基礎の上に(党の統一の基礎は党綱領と党会議の決定である)党内民主主義に基づいて党の過程を再構築するために闘うこと。この闘いの基本的側面のひとつは、PT指導部多数派が行った、または提案している、統制処分に反対することである(注9)。特に、議員の除名の脅迫に対して闘うことである(注10)。党が長い間主張してきた、最近の選挙運動の中でも主張した立場、それを指導部多数派が広範な民主的討論抜きに変更したが、その党の本来の立場に立って投票したことに対する処分は、正統と見なすことはできない。
さらに、PTの方向性に関する討論は、今日党内論争のみに止めておくことはできないことを明らかにすることが重要である。この問題はPTをよりどころとしている広範な政治的社会的運動の中で討論される必要がある。PTは広い意味で、ブラジルの左翼の最も明白に表現されているものを集約し、二十年以上にわたる民主的社会的闘争の結果を結集しており、PTは中心的なよりどころとなっている。この過程に内部から参加し、現在の指導部多数派のビジョンに対する総合的なオルタナティブ・ビジョンを掲げ、われわれが直面している問題の解決策を提起することが必要である。
政権の座につくことは、経済政策の場合のように、党多数派の政策がすぐにテストされることを意味する。方向性に関する論争の過程は加速され、党の問題と社会的闘争のからみ合いの力学に直面している。運動の政治化が大きく進み、社会階級は多くのことを知るようになっている(社会階級の中で政権に対する批判的ビジョンが急速に広がっている)。
これらのことから出てくる結論はひとつではない。左翼の介入の最善の方針の展望は、PTの社会主義的再構築を目指して闘う展望である。それはまた、対立と動員の拡大を特徴とする新たな政治状況に最もよく対応する展望でもある。危機を防衛的に捉えるべきではない。
民主的な社会主義的な党としてPTを建設することは、ブラジルの左翼の成長を可能にする戦略的要素であった。このプロジェクトを再構築するために闘うことが必要である。われわれが逆の選択をするとすれば、左翼の分裂の危険な可能性が高まり、政治的社会的闘争の別の面での後退の道が開かれるであろう。PTの左翼は、PTの歴史的戦略的プロジェクト、すなわち民主的で社会主義的な党のプロジェクト、を防衛する者の正統性を掲げて、党の方向性に関する論争の過程に介入することができる。この展望は、よりどころとなる社会主義的極として広範な左翼潮流を建設することを可能にする。
* ジョアオ・マチャドはサンパウロ・カソリック大学の経済学講師で、社会主義的民主主義派(PT内第四インターナショナル派)調整委員会のメンバー。PT創設以来のメンバーで元全国執行委員。この記事は、同派の次期会議の討論のために社会主義的民主主義派調整委員会が提出した決議草案に基づいている。
(原注)
(7)「フォラ・デ・サンパウロ」紙、二〇〇三年九月十二日。次のような左翼に対するジョークがある。財務大臣パロッチはIMFと手を切ろうとしている、なぜならIMFは左翼的過ぎるからだ。
(8)統一社会主義労働者党(PSTU)は、PTから分裂した組織で、PT第一回大会後の第八回全国会議(一九九三年六月)前の、一九九二年の社会主義集中派(モレノ派トロツキスト)を起源とする。PT第一回大会ではPT内の内部諸傾向を認める和解案が採択されたが社会主義集中派はこれを受け入れなかった。第八回全国会議ではPT左派が始めて党指導部内で(ルラが率いる)穏健派より多数を占めた。
この分裂の少し後に、一部の(最も激しくPTからの分裂に賛成した)活動家はPSTUを離れ、CST(労働者社会主義潮流)を結成した。この小さな傾向(主としてリオグランデ・ド・スル州およびパラ州に存在)はPTに復帰した。二〇〇二年中に、CSTは分裂し、リオグランデ・ド・スル州に基盤を持つ部分は地域労働組合潮流と融合後、MES(社会主義者団運動)を結成した。
MESとCSTは、PT多数派に脅迫されている連邦議会議員ルシアナ・ヘネロ(MES)とジョアオ・バチスタ・ババ(CST)によってよく知られている。MESとCSTは別党結成の運動構築を開始しているが、別党結成の決定は予想されるルシアナとババの除名後になる。PT左派から離れようとする方向性のために、MESは二〇〇三年に分裂した。新党結成がPSTUとともに行われるかどうかについてはいまだ決着しておらず、参加グループの間に意見の違いがあるようである。今のところこの過程に関わるのはせいぜい二、三千人であり、一方PTは十万以上の党員を抱えている。
(9)PT議会グループの多数派が議会で年金改革に賛成投票をしたことで政府は成功を収めたが、これは「ブロック投票」を強制し、年金改革に反対する議員を脅迫することによって行われた。二十四名のPT連邦議会議員が提案に賛成投票をしたが、彼らは党の決定を尊重するためにだけ投票したという声明を発表した。三名は反対投票を行い、八名は棄権した(憲法修正承認に関する規則の下では反対投票と同じ意味を持つ)。第二回投票が行われたが、違いは前回棄権した一名が反対投票にまわったことであった。
(10)現在、エロイーザ・エレナ(社会主義的民主主義派の支持者)と三名のPT連邦議員(年金改革に反対投票した者)の除名の脅威がある。また、八名の連邦議員(議会での二回の投票で棄権した七名と二回目に反対投票にまわった一名)も最近PT議会グループから六十日間の権利停止処分を受けた。この権利停止は、執行部多数派の後退を表している。執行部多数派は投票の前に、反対投票または棄権したものは党からの除名に直面すると発表した。権利停止処分を受けた国会議員は、十月二十五〜二十六日に開かれる全国指導部会議に処分反対を訴える予定である。この会議では、除名提案も投票に付される。
(「インターナショナルビューポイント」03年11月号)
http://www.jrcl.net/web/frame040119e.html