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■「人工の太陽」 Vol.266 01/23/03
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1.イラク派兵の経済的利益
つい最近JMMを見ていたら、「自衛隊のイラク派遣で日本が得
られる『経済的利益』というと、どういうことが考えられるでしょ
うか」という質問が提起されていた(No.254)。
http://ryumurakami.jmm.co.jp/recent.html
一体、日本政府がどういう具体的計算を行い、あるいは行ってい
ないのか、実態は定かでないが、新聞報道を見る限りでも、三菱商
事がイラク国営石油公社と原油輸出の契約を結んだり、西部のガス
田開発に乗り出したり、NECがイラク国内携帯電話基地局設備の
一部を受注したり、さまざまなビジネスが形になり始めていること
は分かる。
<参考>イラクにおける携帯電話サービス開始を伝えるPRIの報
道
http://www.theworld.org/therest/index.shtml
http://www.theworld.org/content/01132.wma
そんな中、自衛隊派兵という対米協力との関係で、筆者が興味を
持っているのは、国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致問題であ
る。
一見、何の関連もなさそうなのだが、少なくとも結果的には、二
つの問題がリンクしていると考えたほうが、むしろ自然なのである。
2.対米協力とITER誘致
「AERA」1月19日号(<「ブッシュ復讐説」蔓延の仏 リ
ビアもITERもいやがらせ?>)もこうした切り口で、誘致問題
に触れているのだが、すでに昨年12月、たとえば次のBBC記事
は、地の文で「米国がフランスという選択肢に反対してきたのは、
フランスが米国のイラク侵攻に反対してきたからである」と直裁な
評価を加えている。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/3336701.stm
<参考>同趣旨の報道
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,279499,00.html
どういうことかと言うと、実験炉の誘致場所が昨年暮れには選定
されるはずだったのが、結論が先送りされ、フランスを推すロシア
・中国と、日本を推すアメリカ・韓国との間で、熾烈な綱引きが行
われているわけだ。
<参考>平林博・駐仏大使の意見記事
http://www.lemonde.fr/web/recherche_articleweb/1,13-0,36-350044,0.html?query=ITER&query2=&booleen=et&num_page=1&auteur=&dans=dansarticle&periode=1&ordre=pertinence&G_NBARCHIVES=806357&nbpages=1&artparpage=10&nb_art=1
イラク戦をめぐる対応と誘致問題を結びつけるフランス国内の論
調に反論している。
当面、巨額の建設費を負担することになるとしても、誘致の成功
が研究の主導権獲得に繋がることは容易に想像できる。直接の経済
的な波及効果ばかりでない。あくまで「いずれ核融合炉の建設・稼
働に成功する」という前提の上での話だが、将来的に化石燃料やウ
ランが枯渇することも考えれば、実験炉誘致がまさに「国益」を左
右する問題であることが分かるだろう。
次のような報道を見ても、対米協力と誘致が無関係であるという
ほうが難しい。
<参考>米エネルギー長官の発言
熱核融合実験炉 日本誘致を支持 米長官公式表明
2004.01.10 東京新聞朝刊
来日中のエーブラハム・米エネルギー長官は九日、東京・大手町
の経団連会館で講演し、日本の六ケ所村(青森県)と、欧州連合(
EU)の統一候補であるフランスのカダラッシュが争っている国際
熱核融合実験炉(ITER)の誘致で、日本を支持する考えを公式
に表明した。
同長官は、米中枢同時テロやイラク戦争など日本が米国を常に支
持してきたことに感謝を示した上で、ITERでも「米国は日本へ
の立地を強力に支持している」と述べた。
そのアメリカは、98年にITERから離脱しているが、どうい
うわけか2003年1月に復帰している。
http://www.heise.de/tp/deutsch/html/result.xhtml?url=/tp/deutsch/special/zen/16379/1.html&words=ITER
もちろん、以上の報道だけから、誘致のためだけに自衛隊の派遣
を決断したなどと乱暴な主張をするつもりはない。派遣したからと
言って思うような結果が得られるとも限らない(逆に中国、ロシア
、フランス、さらには韓国が反発を強めることも考えられる)。
ただし、おそらく複数ある判断要素の一つには上っていたものと
推測される、ということを言いたいのである。
3.核融合反応のしくみ
ところで太陽が46億年も輝き続けられているのは、その内部で
水素が核融合反応を起こしているからである。
核融合とは何か?
『核兵器のしくみ』(講談社現代新書)を参考にまとめると、次
の通りである(第6章参照。山田克哉氏には他に『原子爆弾』(講
談社ブルーバックス)等の著書がある)。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1497006
すなわち、水素ガスが極めて高温になると、電子が水素原子核(
陽子)から分離し、バラバラの状態になる(プラズマ)。陽子はプ
ラスの電荷を持っているため、互いに接近しても、クーロン力が働
いて斥け合う。しかし、さらにプラズマの温度が上昇して、陽子同
士がある至近距離以上に接近すると、核力がクーロン力を上回って
、陽子と陽子が結びつく。
<参考>核力
http://www.kobe-np.co.jp/nie/rika/rika94.htm
この時、一方の陽子は中性子に変わり(!)、陽電子とニュート
リノが創成される(!!)。陽子と中性子は安定して結びつく(重
陽子=重水素の原子核)。これらの粒子はそれぞれ運動エネルギー
を持っているので、粒子全部の運動エネルギーを足し合わせると、
大きなエネルギーとなって、熱が生まれる。
この熱はプラズマガスの温度を上昇させるのに費やした熱よりも
さらに大きいので、発電に利用できる可能性がある(熱で蒸気を作
ってタービンを回す発電の原理自体は、火力・原子力発電と同じ)。
しかし、地上で陽子(Proton)と陽子を核融合反応(P−P反応
)を起こすのは技術的に極めて難しい。一方、重陽子(重水素の核
=Deuteron)、三重陽子(三重水素(トリチウム)の核=Triton)
を利用して核融合反応を起こすことは不可能ではない。
次の3つの反応がある。
ア.D−D反応
重陽子(pn)+重陽子(pn)→三重陽子(pnn)+陽子(p)
イ.もう一つのD−D反応
重陽子(pn)+重陽子(pn)→ヘリウム3(ppn)+中性子(n)
ウ.D−T反応
重陽子(pn)+三重陽子(pnn)→ヘリウム(ppnn)+中性子(n)
生まれるエネルギーの量は、それぞれ順に 4.0、3.27、17.6メガ
電子ボルトになる。最後の 17.6メガ電子ボルトのうち、14.06メガ
電子ボルトが中性子によって運ばれる。
だから発電という観点から言えば、ウの反応が最も有利だという
ことになる。実際、ITERの実験炉で扱うのはD−T反応である。
以上のとおり、である。
したがって、核融合炉を実現するためには、まず超高温のプラズ
マ状態を作り(日本は核融合実験装置JT−60が5億2000万
度という超高温を実現している。ちなみに太陽の表面温度は約60
00度、中心温度は1500万度)、そのままでは炉が解けてしま
うので、プラズマを強力な磁場の中に閉じこめて断熱し(その方法
の一つがトカマク型装置である)、その上、高いエネルギーを持っ
て飛び出してくる中性子を効率よくブランケットと呼ばれる分厚い
壁で吸収して、熱を取り出さなければならない(『新・核融合への
挑戦』)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062574047/249-2468345-4541905
4.小柴氏の反対要請
上記『新・核融合への挑戦』によれば、核融合反応は核分裂反応
のような連鎖反応ではないので臨界事故が原理的に起こらないのだ
という。プラズマはごく少量でも不純物があると冷えてしまうので
、もし何かが起きて壁の数ミリグラムの極小破片がプラズマに混入
したり、空気が数cc混入するだけでプラズマの温度が下がり、核
融合反応が自動的に止まる(同書210ないし215頁)。
しかし、驚くべきことに、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊
東大名誉教授は、「ITERが新しいクリーンなエネルギーの開発
につながると考えたら大間違い」などとして誘致に反対しているの
だ。
http://www.mainichi.co.jp/news/article/200303/18m/130.html
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2002/1009/nto1009_10.html
http://www.ne.jp/asahi/n/kinoko/noITER.html
『核兵器のしくみ』によると、中性子のスピードが大きいと、生
物の細胞を構成する陽子にぶつかって、これを跳ねとばす。跳ねと
ばされた陽子はプラスの電荷を持っているので、他の原子と電気的
に活発に作用する。その結果、細胞の構成が変化してガン化する恐
れが高い。中性子線そのものが放射線である。
一方、原子核が中性子を吸収し、中性子過剰となると、中性子を
減らして安定しようとする。この時、中性子が陽子に変わり(!)
、電子と反ニュートリノが創成される(!!)。これを中性子のベ
ータ崩壊という。中性子がベータ崩壊すると、電子(ベータ粒子)
が放出される。ベータ線という放射線である。ベータ粒子は生物の
細胞を形成している原子と電気的に反応し、これをイオン化するの
で、やはり細胞がガン化する可能性が高い。
原子核がベータ崩壊した直後にガンマ線という高いエネルギーの
電磁波を出すこともあるが、ガンマ線も人体の細胞に作用して、染
色体を侵すことがある(同書73ないし95頁)。
小柴氏の指摘に対して、原子力委員会の核融合専門部会がどんな
対応を取っているのかと思って、aec.jst.go.jp を「小柴」「核融
合」というキーワードでサイト内検索してみた。
すると、次のような資料が見つかった。
この内、2001年2月26日付けの「ITER計画検討会まと
め」には、意外にも次のような記述がある。
http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/old/iter01/siryo/siryo15/siryo2.pdf
◎ 朝日新聞の小柴論文に関連するが、壁の放射線損傷が深刻だ
と言う認識がプラズマ物理の人には無かった。学会などでの炉工学
とプラズマ物理などとの情報交換が必要。この問題は高βにすれば
解決する。
◎ 小柴論文についてはその後サンケイ新聞、朝日新聞で反論し
ている。小柴氏は事実誤認による主張を繰り返している。
「壁の放射線損傷が深刻だと言う認識がプラズマ物理の人には無
かった」などとあっさり言われては困ってしまうのだが・・・。
上記文書に言う「反論」のうち一つは「核融合炉の安全性確保は
可能 香山晃(論壇)」(2001年2月2日付朝日新聞朝刊記事
)を指しているものと思われる。
香山氏は京都大学エネルギー理工学研究所教授で、
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/iaen_j/members.html
まさに中性子の安全な処理に関わるフェライト鋼の開発等を行って
いたことが窺える。
http://133.3.13.33/publications/rr199707imr/rr970701.htm
http://www.google.co.jp/search?q=cache:iCXWx6GBTggJ:www.iae.kyoto-u.ac.jp/press/AR/AR-97/CW_OO.html+%E9%A6%99%E5%B1%B1%E6%99%83%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88&hl=ja&ie=UTF-8
http://www.google.co.jp/search?q=cache:lOl5FapwoWEJ:www.utnl.jp/utnl-w/0006/b_p9715.html+%E9%A6%99%E5%B1%B1%E6%99%83%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88&hl=ja&ie=UTF-8
ちなみに、小柴氏のノーベル賞受賞は2002年10月である。
ノーベル賞受賞者の発言が常に正しいという保証はないが、世間
的には絶大な権威があるわけだから、一体いずれが正しいのか、徹
底的に討議して明らかにしてほしいものである。
また、「核融合研究開発基本問題検討会(第4回)議事録」は次
のように記している。
http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/kakuyugo2/siryo/kaihatsu05/siryo32.pdf
【岸本委員】 最後の方で、核融合のブランケットとか材料とか廃
棄物のことでいろいろご指摘をいただいたのですが、ご指摘の内容
というのは大体我々が持っている問題意識とそんなに相違してない
ので、どこまでやれてるかというのは必ずしも十分でないかもわか
りませんけれども、大体ご指摘いただいた方向の問題意識は持って
いると思っております。特に、材料については、小柴先生のご指摘
もあるのですけれども、燃焼プラズマの前にもっと材料をやるのか
、材料はともかく燃焼プラズマの後でやるのかとか、いろいろな議
論は当然やっている側でもあるのですけれども、ひとまずはある程
度もちそうな材料としてフェライト鋼というのが一応念頭にあって
、それがある程度使えると思うと、とりあえずはとにかく燃焼プラ
ズマで燃料が燃えるんだと、制御できるんだというところまでいこ
うというのが一つのコンセンサスで、その見通しをしつつ材料をち
ゃんと確認していこうと考えています。
トリチウムの処理やフェライト鋼の使用については、一応、上記
『新・核融合への挑戦』でも言及がある(212ないし214頁)。
なお、限られた科学予算をめぐって、小柴氏の推すニュートリノ
実験施設建設計画とITERが、少なくとも当座、バッティングす
る関係にあることも、念頭に入れておいたほうがいいかもしれない。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-11-17/01_05f.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-11-18/01_03.html
<参考>高エネルギー加速器研究機構
http://www.kek.jp/newskek/2003/janfeb/k2k-3.html
http://www.kek.jp/press/2002/k2k.html
次の記事によれば、ITER推進派の間にも微妙な温度差がある
ことが窺われ、現実には科学研究も“政治”と無縁ではあり得ない
のである。
http://www.ibaraki-np.co.jp/contents/news/2002/feature/iter/
5.「人工太陽」への道のり
さて、問題の候補地は本年2月に選定される見通しである。
日本政府は思惑通りに実験炉の誘致に成功するのか?
誘致に成功したとして、21世紀中に商業核融合炉を稼働させる
ことができるかどうか、無論筆者には分からない。
“iter”はラテン語で「道」を意味するのだという。
http://www.arts.cuhk.edu.hk/Lexis/Latin/
「人工の太陽」を手中にするまでの道のりは未だ遠く険しいに違
いない。
果たしてプロメテウスは天上の火を人類にもたらしてくれるのだ
ろうか?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A1%E3%83%86%E3%82%A6%E3%82%B9
<参考>Y!ニュース−国際熱核融合実験炉
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/iter/
<参考>ITER
http://www.iter.org/
<参考>研究機関
・文部科学省核融合科学研究所
http://www.nifs.ac.jp/index-j.html
・日本原子力研究所那珂研究所
http://www.naka.jaeri.go.jp/
・大阪大学レーザー核融合研究センター
http://www.ile.osaka-u.ac.jp/
・京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻核エネルギー物理工学
研究グループ
http://p-grp.nucleng.kyoto-u.ac.jp/fusion/
<参考>「サイト共同評価のためのサイト提案書」
http://www.naka.jaeri.go.jp/mext/TranslationFinal.pdf
<参考>ITERサイト候補地の青森県上北郡六ヶ所村尾駮(おぶ
ち)字弥栄平(いやさかだいら)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2002/0820/nto0820_18.html
http://www.mapion.co.jp/c/f?grp=all&uc=1&scl=3000000&icon=mark_loc%2C%2C%2C%2C%2C&coco=40%2F57%2F14.904%2C141%2F18%2F57.856&el=141%2F18%2F57.856&pnf=1&size=500%2C500&sfn=all_maps_00&nl=40%2F57%2F14.904&
<参考>自民党「エネルギー基本政策に関する中間報告」
http://www.jimin.jp/jimin/saishin03/pdf/seisaku-007.pdf
<参考>原子力資料情報室「核融合の問題点」
http://cnic.jp/news/topics/iter/files/fusion.pdf
<参考>人民日報記事
http://english.peopledaily.com.cn/200310/16/eng20031016_126174.shtml
<参考>中国科学院プラズマ物理研究所
http://202.127.204.25/ENGLISH/index-one.htm
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