【ローマ＝秦野るり子】イタリアの憲法裁判所は１３日、贈賄罪に問われているベルルスコーニ首相の裁判を凍結している「免責法」について、「すべての市民は法律の前に平等」とした憲法第３条などに反するとして「違憲」判断を下した。

　これにより、免責法は失効、首相の裁判は再開されることになる。同裁判で、首相に有罪判決が下るのは確実視されており、首相は窮地に追い込まれた。

　「免責法」は昨年６月に与党・中道右派連合の主導で成立したもので、大統領、首相、上下両院の議長、憲法裁判所長官の計５人に対し、現職にある限り、彼らを対象とした犯罪訴追手続きを凍結すると定めている。ベルルスコーニ首相の裁判の凍結を目的としていたのは明白で、成立以来、「裁判妨害法」などと内外から批判され、首相の裁判を担当するミラノ地裁が、違憲の疑いがあるとして憲法裁判所に訴えていた。

　首相は、一代で築き上げた財閥「フィニンベスト」のビジネスを舞台に不正会計操作など数々の罪に問われてきた。２００１年に首相に就任してからは、不正会計操作の罪を軽減する法律や、裁判官に偏見があるとの十分な疑いがある場合、被告が他の裁判所で審理を行うよう求めることができるとする法律など、自らの裁判を有利にするための法律を次々と施行させた。そのかいもあって、最終的に有罪が確定した件は今のところない。ミラノ地裁での贈賄裁判が、主要なものとしては最後の裁判となっている。

　同裁判は、凍結中に担当裁判官が引退してしまったため、いつ再開できるかのめどはない。与党内からは、今回の憲法裁の判断について、「司法による迫害だ」（スカイヨラ下院議員）といった司法批判の声が改めて噴出、首相救済のための新たな措置を模索する動きもある。

　しかし、昨年末には、首相一族によるメディア支配の強化を狙って国会で成立させた法律に対し、チャンピ大統領が施行に必要な署名を拒否するなど、ベルルスコーニ首相による国政の私物化を止めようという動きがようやく本格化している。首相周辺は例え有罪判決が下っても辞任はないと早くもけん制を始めている。

(2004/1/14/20:54　読売新聞　無断転載禁止)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20040114i212.htm

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