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プラズマに液晶〜テレビは薄型・大画面が全盛だ。8月にアテネオリンピックを控えた今年、とくに大画面テレビの買い換えが進むと見られており、メーカーや販売店の売り込みにも力が入っている。しかし、大画面プラズマテレビがまだ“未来のテレビ”だった頃、われわれが夢見ていた“壁掛けテレビ”は、絶滅の瀬戸際に立たされているらしい。
かつて、壁に大型のプラズマテレビを掛ける“壁掛けテレビ”は、近未来のリビングルームを語るうえで欠かせないファクターだった。ソファに座ると、壁と一体化した大型画面が視界いっぱいに広がり、まるで映画館にいるような気分を家族で味わえる。お父さんとお母さんはワイン片手に映画を楽しみ、傍らには子どもと大型犬が寝そべっている。そんな、スマートでリッチで陳腐な情景を思い描いたものだ。
しかし、いざ大型フラットディスプレイが当たり前の時代になってみると、“壁掛けテレビ”を実践している人が意外なほど少ないことが分かってきた。東芝でテレビの企画開発を担当するCTV事業部CTV商品部主務の本村裕史氏によると、「大型フラットディスプレイの出荷量が年々増えているのに対して、オプションの“壁掛けユニット”が売れる割合は年々減っている。2000年の時点でも2%ほどしかなかったが、今は1%をかなり下回っているはず」という。
理由は、いくつも考えられる。まず、壁掛けテレビを実践するのに工事を伴うことだ。日本の家屋では、壁に石膏ボードを使っていることが多く、壁掛けの際には壁内部の補強工事が欠かせない。石膏ボードは耐火性と断熱性に優れ、低コストな建材として人気だが、数十キロもある薄型ディスプレイを支えるようには出来ていないからだ。
また、電源やケーブル類を通す穴を開ける必要もあり、工事は避けられない。しかし、一旦工事をしてしまうと、テレビの居場所は固定されてしまい、部屋の模様替えも思うようにできなくなる。これも壁掛けが敬遠される理由の1つだろう。
もう一つの理由は、視線の位置だ。「ソファなどに座ったとき、人は視線が水平よりも少し下がったほうが楽。顔の高さに合わせてテレビを設置してしまうと、とくに子どもの場合は見上げる形になり、姿勢が悪くなりがちだ」。最近はスライド機構やチルト機構を持つ壁掛けユニットも増えてきたが、それでも家族全員の座高に合わせることはできない。
コーナー設置が増えてきた
では、大画面フラットテレビを購入した人たちは、どのように設置しているのだろうか。東芝の調査資料によると、買い換え前にブラウン管テレビを置いていた場所に、そのまま設置するケースが多いという。
「液晶30〜32型を購入した人の65%、プラズマ42型でも54%の人が以前のテレビと同じ場所に設置している。設置場所はサイズによって傾向が異なるが、液晶30〜32型ではコーナー設置と壁寄せ設置が半々程度だ」。
コーナー設置の場合、30〜32型の液晶テレビなら、ブラウン管の28型テレビを置いていたスペースへ、そのまま置き換えることができる。あまり“薄さ”を生かしているとはいえないが、その手軽さも人気を集めた理由になっているという。実際、買い換えてから「テレビが軽くなって掃除がしやすい」と喜ぶ主婦が最近増えているらしい。
いきなり話が所帯じみてきたが、結局のところ、壁掛けテレビが流行らない理由はそこに集約できそうだ。つまり、薄型大画面テレビの販売量が増え、コダワリを持つユーザーが相対的に減ってきたから。「映像マニア向けではなく、一般ユーザー向けになった」。それは、薄型・大画面テレビが“当たり前のもの”になった証でもある。
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/ (ITmediaライフスタイル)