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<裁判員制度>もし選ばれたら…… 多い制約、ペナルティ
政府は2日、裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)案を閣議決定し、国会に提出した。今国会での成立を図る。法案は自民党と公明党の与党案を基にしているが、裁判員に生涯続く重い守秘義務を負わせ、違反には最高で懲役1年の刑事罰を科す内容に対し、民主党など野党は反対するとみられ、国会では修正をめぐる論議が焦点になる。法案がこのまま成立した場合、裁判員に選ばれた市民はどうなるのか。手続きの流れを、条文に沿ってシミュレーションしてみた。【伊藤正志】
●呼び出し●
裁判員は、選挙人名簿を基に地裁ごとに作成される裁判員候補者名簿から事件ごとにくじで選ばれる。裁判員候補者に選ばれたAさん宅にも裁判所から呼び出し状が届いた。「○月×日午前10時、裁判所に来てください。来ない場合は、最高10万円の過料が科せられます」
公判期日の数日前、質問票が送られてきた。「あなたは義務教育を終了していますか」「禁固以上の刑に処せられたことはありますか」。欠格理由に該当するかどうかの確認だ。警察官や自衛官、自治体の首長など、もともと裁判員になることのできない特定の職業に就いていないかや、病気や家族の介護など辞退したい理由があるかどうかの質問もある。
事件について新聞やテレビの報道に接したかどうかや、個人的な感想を尋ねる質問もある。不公平な裁判をする恐れがないかどうかをチェックするためだ。質問票にうそを書けば50万円以下の罰金が科せられる。
Aさんは、職場の上司に「×日、裁判所に呼ばれていますので、休暇を下さい」と届けた。会社が、休暇を理由に不利益な取り扱いをすることは禁止されている。
●選任●
×日、Aさんは裁判所に出向いた。選ばれる裁判員は6人。約20人の候補者が集まっていた。裁判官、検察官、被告・弁護人がそろっている部屋で、質問票を基に1人ずつ質問が続く。判決言い渡しまで5日間連続開廷の見通しが裁判長から告げられる。男性が「取引先との大切な商談で明日から出張しなければならない。辞退したい」と述べ、認められた。
審理対象になるのはテレビのワイドショーでも放送された殺人事件。事件についての感想を長々と述べた女性は、選任されなかった。検察側、被告側は4人ずつの候補者を理由を示さず不選任にできる。残った約10人から、くじで6人の裁判員と1人の補充裁判員が選ばれた。
●公判●
その日午後から公判が始まった。Aさんらは、公平誠実に職務を行うことを法廷で宣誓した。検察側の冒頭陳述、被告側の起訴事実に対する認否表明を経て、証人調べや被告人調べが連日行われる。Aさんらも証人や被害者、被告に直接、質問が許された。
毎日、閉廷すると別室に移動し、3人の裁判官、6人の裁判員で争点ごとに話し合いを続けた。最終的に評決では全員一致で有罪と判断し、量刑は懲役10年になった。これらを決める権限は裁判官も裁判員も同じだ。
判決言い渡しでAさんらの任務も終了した。裁判長から「お疲れさまでした」とねぎらいの言葉をかけられた。「でも皆さん、評議についての守秘義務はお忘れなく」。感想程度ならいいが、評議についての自分の意見を述べても、最高で懲役1年の罰則だ。Aさんらは1日当たり1万円程度の日当と交通費を受け取り、裁判所を後にした。(毎日新聞)
[3月3日2時23分更新]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040303-00000114-mai-soci