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(回答先: 大統領に右派ベルシェ氏 グアテマラ決選投票(共同通信) −”外資の積極導入などを訴えて地方の首長らの支持も取り付けて勝利した” 投稿者 シジミ 日時 2003 年 12 月 29 日 17:05:17)
http://www.ufpress.jp/column/031116.htm
11月9日、ちょうど日本で衆議院選挙が行われたその日、中米グアテマラでも総選挙が行われた。 大統領選挙には11人が立候補し、国民大連合(GANA)が推す右派のオスカル・ベルシェ元グアテマラ市長が約39%、 次いで中道左派の野党国民希望党(UNE)のアルバロ・コロン党首が約28%、国会議長のリオス・モントが約17% という投票結果だった。有効投票の過半数を獲得する候補者はなく、上位2人による決選投票が12月28日に行われる。
さて、今回の選挙ではリオス・モントの立候補が物議を醸し出した。今年77歳のホセ・エフライン・リオス・モントは 1982年のクーデターの首謀者で、その後軍事政権の大統領として激しい弾圧を行った。 極右政党グアテマラ共和戦線(FRG)の政治家として、現在も同国で強い影響力を持つ。 グアテマラでは1960〜1996年まで長い内戦状態にあり、リオス・モント独裁政権時代は最も激しかったと言われる。
1980年代は近隣諸国のエルサルバドルやニカラグアでも内戦が行われていた。中米諸国では白人による支配層が 政治経済を牛耳っており、グアテマラでは白人はわずか8%に過ぎない。生活改善を訴えた先住民の貧困層が 立ち上がったものの、当時の米国レーガン政権は中米を第二のキューバにさせまいと秘密裏に、 時には公然と独裁政権に軍事援助をしてゲリラ弾圧に力を注いだ。
グアテマラでは37年間の内戦では、死者行方不明者はおよそ20万人と考えられているが、そのほとんどは先住民だ。 軍事政権は各地で対ゲリラ闘争のために、先住民による自警団を結成させた。自警団はゲリラ兵のみならず 多くの非戦闘員を殺害しており、ゲリラに協力したという疑いで女性や子供も含む民間人も虐殺した。 言ってみれば、先住民による先住民の弾圧が行われており、その虐殺の指揮をした張本人が 当時の独裁者リオス・モントであることは疑いの余地がない。
グアテマラは現在多くの外国人が訪れる開かれた観光立国となっているが、その一方で内戦時代の戦後処理は 進んでいるとは言えない。私は去年の9月に1か月ほどかけて全国を回ったが、滞在中に元自警団による抗議運動が 各地で行われていた。北部にマヤ最大規模のティカル遺跡があるが、私が訪れる3か月前にここで、 欧米人旅行客ばかり数十人が元自警団の運動に巻き込まれて一時監禁されるという事件が起きた。 また私の滞在中も別の地域で抗議運動が起こり、幹線道路が封鎖されるという事態に発展した。
この時、元自警団の団体は内戦時代の補償金を求める活動をしており、その後約40万人の元活動家が1人あたり 日本円にして総額20万円を受け取ることで政府と合意している。しかし彼らは虐殺に関わった者たちであり、 この合意にグアテマラ内外の人権団体から非難の声が上がっている。本来補償されるのは虐殺された市民の側に あるはずなのだが、強力な圧力団体と化した元自警団の団体の行動は誰にも止めることができず、 さらに憂慮する事態に人権活動家の暗殺が相次いでいる。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの 調べによると、グアテマラでは2000〜2003年に人権活動家が18人殺されており、人権活動家の殺害事件が 最も多い国という統計が出ているのだ。人権活動家リゴベルタ・メンチュが1992年にノーベル平和賞を受賞しているが、 その一方で現状としては多くの活動家が迫害されている。
今回の選挙で元自警団の一部の団体は投票を棄権するよう呼びかけており、メキシコ国境近くの幹線道路が 彼らの抗議行動によって一時封鎖された。このような行動に憂慮した市民は逆に積極的に投票所に向かい、 投票率も前回に比べて高くなり、大統領選では一般の先住民たちの多くは中道左派のアルバロ・コロンに票を入れた と思われる。結果的にオスカル・ベルシェとアルバロ・コロンの決戦投票に持ち込まれ、元独裁者のリオス・モントは 退けられた。
グアテマラはあらゆる面でまだまだ発展途上国で、外国からの多くの援助を受けている。その最大の援助国が、 我が国日本であることはどれほど知られているだろうか。援助した資金がグアテマラの発展を進められないばかりか、 人権侵害の恐怖政治を呼び起こすようではたまらない。そのような意味で、我々は最大援助国としてグアテマラ情勢に 目を向け、人権が保障されるように改善を呼びかけていかなければならない。