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イベリア半島「百鬼昼行図」
前回は「その1:イラク人の血に群がる蝿ども(1)RepsolとCepsa」と題して、イラク「再建」に参加するスペイン企業の中でこの国を代表する石油産業であるRepsol、Cepsaとアメリカ資本、「米西同盟」との関係について、私なりに調べたところをご紹介しました。
http://www.asyura2.com/0311/war44/msg/1021.html
今回は、やはりイラク「戦後復興」に関与する上記2つ以外の企業を中心に、利権に群がる「蝿ども」のさまざまな「あでやかな姿態」をご紹介したいと思います。その中には、スペインの事情にくわしくない人にとってはたぶん意外と思われるような人物までいます。
ただ、訳文と一緒にスペイン語の原文と英訳文を載せることは、確認してもらうにはよいのですが、どうも全体が読みづらくなる欠点があります。そこで今回からは、全文または幅広い部分を引用する場合には拙訳のみを載せることにします。確認される方は、ご面倒ですが、原文を英訳して確認してください。なお、人名などのスペイン語の発音に関してはおおよそローマ字読みで正解です。
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イベリア半島「百鬼昼行図」
その2:イラク人の血に群がる蝿ども (2)その他の企業
(何と!あのレアル・マドリッドの会長の名前も!)
イラク「再建」事業へのスペイン企業の参加については、2003年3月のアメリカ・イギリスによる攻撃開始のすぐ後から、すでにさまざまなうわさが飛び交っていた。次の資料は経済紙Finanzasの4月8日の記事で、そのうわさに株式市場は敏感に反応している。当然ではあるが。
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http://www.finanzas.com/id.5366057/noticias/noticia.htm
【抄訳】
「イラク再建に関するニュースで建設業が1.03%上がる」
マドリッド、4月8日:本日のマドリッドでは、イラクの復興に関わるかもしれない建設業が、唯一の値上がりだった。
Accionaは2.19%、ACSが1.29%、FCCは10.7%(1.07の間違いか:訳者)、Dragados0.29%、Ferrovial0.58%、など。
メリル・リンチ社によるとこの建設業の株価の上昇はイラク再建事業に参加するとの予想から説明できる。
(抄訳終わり)
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スペインの企業程度だからなんともシケた話だが、この数年、フランスやドイツのような停滞感は無いにしても(そこまで規模が大きくないから)、今年に入り何となく先行きの不安を感じていたこの国の資本家たちにとってはまたとないチャンスなのだ。
次には、シンディカリストの流れを汲むスペインの反体制組織CNTのホームページに寄せられた文章である。ただしこの記事は本来、反戦・アンチグローバリゼーション組織のLa Corriente Alternaが5月に作ったものなのだが、この団体の作った元資料は、理由はわからないが、今のところはWebでつながらなくなっている。
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http://www.periodicocnt.org/292junio-agosto2003/gacetasindical/archivos/gs016.htm
【拙訳】
「イラクのためにアメリカによって選ばれた50のスペイン企業。パイに群がる企業。」
近頃50のスペイン企業がある種の特権を感じている。商業省次官のJuan Costaは、イラク再建に参加する予定の企業の代表者団体であるCEOEの経営陣に対して確約した。アメリカが単独で与えた莫大な金額のビジネスを、である。4月初頭より、スペイン政府は、当時は否定していたが、ワシントンとこの件に関しての対話を続けていた。これらの企業はアメリカ企業の下請けとして働くことになるだろう。選ばれたものたちは、BBVA, Aldeasa, FCC, ACS, Cepsa, Repsol, Iberdrola, Campofrio ・・・。
これら50の幸運な者たちのリストに、アメリカは1年半の間にイラクが正常に機能すると思わせたがっている。ブッシュがこの国を立ち上がらせるために議会に求めた19億ドル(それは戦争費用のための747億ドルに含まれているが)の中の9億ドル、およそ半分が、外国企業の行動計画の資金になるだろう。その企業の中にスペインのものも見ることができる。
これらの企業は、一般入札ではなくブッシュ政権の指示で選ばれたアメリカ企業の、下請けとして働くだろう。これらのアメリカ企業が共和党の幹部と関係を持っているかも知れないようなことがそのプロセスの透明性に疑問の影を投げかけた。ホワイトハウスはフランス、ロシア、ロシアの企業を締め出している。
リストアップされた50の企業
(以下、企業名:略)
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ここでリストアップされた企業名は、前回お見せした企業リストと同じものだが、これは5月の段階であり、10月のマドリッドでの「イラク復興のための国際会議」の後ではどうなっているか。
スペイン労働組合連合カスティーリャ・レオン地方支部のホームページに、10月27日に載せられた「イラク国民に対してできる最大の援助は負債を帳消しにすることだ」と題された記事を見てみよう。ただし全文は長いので、主要な部分のみの抄訳としたい。具体的にどの企業がどれくらいの仕事を受注することになるのかは明らかではないし、実際には、春の段階で「指名された」もの以外にも多くの企業が群がっているようだ。その中には、企業ではないが、アスナール与党である国民党に関連したいくつかのNGOが含まれることも、また注目される。(これについては後日、特集を改めてお知らせする。)
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http://www.stecyl.es/opinion/031027_op_conferencia_donantes.htm
【抄訳】
「イラク国民に対してできる最大の援助は負債を帳消しにすることだ」
マドリッドでの、ブッシュによって指導されアスナール政府が主催した「イラク再建のための」会議は、契約を交わす見本市会場となっている。
スペインの企業経営者たちは、スペイン政府の拠出(約2億6千ユーロ)を、ちょうどブッシュがアメリカ企業に対してそうしたように、スペイン企業との契約にまわすように要求した。
イラク暫定政府と契約する百ほどの企業は、11のアメリカ国際企業の下請けとしての仕事はほんのオコボレ程度だ、と不満に思っているのだ。
スペイン財務相ラトは、石油とガスの豊富なイラクへの投資は「絶好のチャンスだ」と恥ずかしげも無く各企業をそそのかした。彼の協力者たちも「イラクのパイがいかに大きくて可能性を秘めているか」を熱心に吹聴した。
こうして我々の税金から「援助」が出されて、ブッシュ弟がアスナールに約束したことだが、Repsol, Cepsa, ACS, Endesa, Iberdrola, Santa Barbaraといった企業にとっては大きく膨らんで戻ってくるとんでもない費用として使われることになる。すでにアントニオ・エルナンデス・マンチャみたいに石油化学の利権を守るためにバグダッドにオフィスを構えるスペイン人たちがいる。この国民党の元書記長は、そこでボディガードに守られながらやっている仕事は、イラク再建には何ら関心を示さないたちのものであることを確信しているのだ。
77ヶ国と225の企業の代表たちの利害の衝突で、国連と世界銀行がイラク再建のために出した35億ユーロの使い道は決まらなかった。
拠出金は予定よりずっと少なかったし、さらにその多くは、アメリカも含め、自国の企業のためのものでしかなかった。
イラクが必要としているのは、緊急の必需物資のための無償援助だろう。イラクは1260億ドルもの負債を抱えている。最も必要な援助はその負債を棒引きにすることだろう。
英国のNGOクリスチャン・エイドは「石油売却による収入の40億ドルが暫定政権の不透明な決済の中で消えて無くなった」と申し立てた。その「ブラックホール」からアメリカ企業に注ぎ込まれたと疑われる。
主要なNGOの中でクリスチャン・エイドは会議に代表者を送らなかったが、スペイン国民党の周辺にある団体だけが、赤十字と共に会議に出席した。普通のNGOは、各政府の体裁を整えるために招待された「国境無き医師団」以外は、招待されなかったのだ。
欧州議会は援助の増額を拒否した。
(後略)
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要するに、「イラク再建」など何の目的でもない、それぞれの国の企業による利権の分捕りあいに過ぎない様子が明らかになる。そして彼らがたかっているのは各国の国民が払った税金なのだ。
さきほどの50の企業名は、よほどスペインの事情に詳しいか関心を持っている人以外には大して役に立つものではないだろうが、前回申し上げた石油大手のRepsolとCepsa以外の企業の中で、いくつか興味を引きそうなものを挙げてみよう。
まずIberdrolaである。これは電力が主力の会社だが、その他に天然ガスと水道事業も行っている。ここに関しては以下に面白い資料がある。経済専門誌Finaizas.comの5月19日の記事である。
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http://www.finanzas.com/id.5533359/noticias/noticia.htm
【抄訳】
「オリオール(Iberdrola社長:訳者)は、アメリカが「イラクのエネルギー計画に協力してほしい」と要請した、と認めている」
Iberdrola社長のイニゴ・デ・オリオール・ヤバラは、自分の会社がアメリカ大使館の代表者と、イラク再建への参加の可能性についての会議を持ったと認めた。彼の言葉によると、アメリカは彼の会社にこの国のエネルギー計画に協力してほしいと要請した。
オリオールは「今は参加するつもりは全く無いがその可能性は研究してもよい」と言った。そして「もしイラクの当局者が協力してくれ我々がそれを精力的に継続的にできる、という見通しがある限りで、そう思ってくれたらよい。ただそれだけだ。」と含みを持たせた。
(後は無関係な内容なので略す)
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何でも「こっちはやる気ないのにアメリカの方から頼んできた」そうで、逆じゃないか、と思えるのだが、もちろんきっちり「再建計画」に食らい込んでいる。
次にスペイン最大の建設会社ACSを見てみよう。
なんとこの会社の社長は、あのベッカム、ロナウド、ジダンなどを擁する、今や世界のサッカー・チームであるレアル・マドリッドの会長フィオレンティーノ・ペレスなのだ!
来年早々には、スペイン建設大手の、これまたイラク参入を決めているDragadosを吸収し、彼の会社はサッカーチームと同様に万全の体制を固めつつある。
次の記事は経済紙Euro Economia(電子版)の10月24日付の記事である。ここには、このフィオレンティーノ・ペレスを始めとするスペイン財界人たちがイラク参入話に大浮かれしている状態が、皮肉たっぷりに書かれている。
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http://www.euroeconomia.com/opinion-24-10-03_01.htm
【抄訳】
「ベルナベウ(レアル・マドリッドの本拠地サンチアゴ・ベルナベウ球技場のこと:訳者)とイラクの再建」
近頃マドリッドはイラクへの貢献者の随員を乗せる車で天国のようににぎやかだ。その中で国連の職員たちがレアル・マドリッドとパルチザンの試合見物を見るためにベルナベウ球技場のボックス席でくつろいでいる。接待役のフィオレンティーノ・ペレスの横にはアスナールと国連事務総長コフィ・アナンがいる。イラク再建なんぞどこ吹く風! 私営企業部会に参加する332企業の一つTecnicas Reunidasの重役マニュエル・バレンシアは「イラクのパイは大きくてみんなに可能性がある」とご機嫌だが、しかしアスナールやアナンと一緒にいるフィオレンティーノにとってはもっとである。
その後(テレビのチャンネルを変えてみると:訳者)、ブッシュが、街が破壊されあふれる子供たちで病院機能が麻痺する砂漠の真中のアラブ世界が、パラボラアンテナの前で困惑しっぱなしであることに首をかしげているし、その一方で「貢献者」たちはアスナールやアナンと一緒にベッカムやロナウドやジダンを楽しんでいる。
イラン再建は巨大で現実的なことになった。それはまさしくレアル(スペイン語でrealつまり現実的という言葉は、レアル・マドリッドのレアルと全く同じつづり:訳者)なのだ。イラクの再建がこんなだったらフィオレンティーノがマドリッドの会長をやめるなんてあるだろうか! ボックス席にはレアルのオールド・ミーハーたち、スペイン外相のアナ・パラシオ、スペイン国連大使イノセンシオ・アリアス、ベオグラード市長、元レアルの選手ミジャトビッチ、宇宙飛行士のミゲル・ロペス・アレグリオア、ゴルファーのニック・ファルド、セルヒオ・ガルシアがいた。
こんな状況で、たとえフィオレンティーノとアスナールの側近が何週間か前に、アスナール首相とジョージ・ブッシュの会話の過程でイラク再建へのスペイン企業の参加が話題になったというは不確実だ、と言ったにしても、レアル・マドリッドとパルチザンの試合の後では、それは単なるお話でしかない。
ちょっと前すでに投資銀行メリル・リンチが、3つの建設会社ACS、DragadosとFerrovialをイラク再建事業参入の交渉の可能性について高く評価していた。ACSとDragadosの合併の後で、こんな現実が展開すれば、フオレンティーノに何が与えられないというのか! 「いや、私はマドリッドの会長を辞めないよ。」
(抄訳終わり)
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もう何も言うこと無し、である。
そもそも、土建、建築、不動産などにかかわる業種の性格は世界共通のものがあるのかもしれないが、この国の状態は特にひどい。たとえば、バルセロナの山の手には高級集合住宅群が広がるが、日本人の企業関係者はほとんどここに住んでおり、各棟専用のプールがついているものが多い。これらの多くが60年代から70年代のフランコ独裁時代の終盤に建てられたものだが、エレベーターはよく故障するし、水漏れはひどいし、電気の配線図やガス・水道の配管図すら残されておらず、水道などが壊れたら悲劇である。水道屋もどこに管が通っているかさっぱり分からないために、片っ端から壁を叩き壊してまわって長い日数をかけて工事しなければならない。市北部の労働者住宅街はもっと悲惨だ。フランコ時代に建設業者たちが当局に賄賂をつかませて、手抜き工事といいかげんな施工を好き放題にやりまくってボロもうけしたからだが、現在も当時とさほど変わっていない。スペイン版新幹線の超高速鉄道の線路がマドリッドからサラゴサを通ってカタルーニャまで伸びたのはよいが、試運転して2,3日後にちょっと雨が降っただけで線路の下の石が流され大穴があいた。(スペインに来てもこの鉄道だけは利用すべきではない。)ろくに地質調査もせずに、その上に手抜き工事が重なったのだろう。また数年前にはバルセロナ近郊で新しく作られたばかりの橋が大水で流されたまたま通行中の車の2名が死亡したが、そのすぐそばにある数百年前の石の橋はびくともしていないのだ。こんな連中がイラクに行ってイラク人に喜ばれる建築をするとは到底思えない。
最後に銀行・金融関係で、特にLa CaixaとBBVA(ビルバオ・ビツカヤ・アルヘンタリア銀行)に目をつけてみたい。
La Caixa(カタルーニャ語でラ・カシャと発音する)はカタルーニャの金融機関で、正式には「銀行」ではなく日本語では「信用金庫」なのだが、この国ではとんでもなく大きい資本力と行動力で有名である。この企業の関係者で最も有名な人物は、元オリンピック委員会会長のアントニオ・サマランチ(カタルーニャ語読みでアントニ・サマランク)だろう。オリンピックをサッカー・ワールドカップと並んで大金の飛び交う最大級の「事業」にまで仕立て上げた手腕は、良きにつけ悪しきにつけ、カタルーニャ・ブルジョアの真骨頂であろう。
これらの金融機関が実際にイラクでどんな働きをするのかは不明だが、注目しておかねばならないことは、いくつかの重要な参入企業、特にエネルギー関連企業の大株主になっていることだ。
例えば、前回に特集したRepsolでは、筆頭株主がLa Caixa(12.50%)、2番目がこれまた前回ご紹介したアメリカの投資会社Brandes(9.3%)で、第3位がBBVA(8.2%)である。
また先ほど述べたIberdrolaの2番目の株主はBBVA(6.81%)であり、さらにGas NaturalはLa Caixaが筆頭株主(26.40%)である。
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もちろん私はスペインが1950年代のような貧乏国のままであってよい、とは思わないが、他国民の血に群がるこの狂乱ぶりは、次の瞬間には自国民にも遠慮なく向かうだろう。この国は歴史的にもそうだった。19世紀までの中南米の植民地に対する残虐さはそのまま国内の貧農や労働者たちにも向けられていたのだ。この国は目もくらむような階級社会なのだ。
現在、資本家たちの大騒ぎの一方で、国民の大多数は諦め顔で不安定な仕事で薄給を受け取り(この国では3ヶ月のアルバイト的な短期雇用でも「就業者」として計算している)、若者に職は無く、大勢の失業者の中には街で物乞いや泥棒をするしかない者もいる。にぎやかな連中が多いのでさほど暗い感じは与えないが。もっと立場の弱い中南米、東ヨーロッパ諸国、アフリカ、アラブ諸国やパキスタン、フィリピンなどのアジア諸国からの移民たちは、ややもすれば、麻薬販売や売春、コピー商品の街頭販売などの違法な仕事をするか、窃盗でもやるしかなくなる。彼らを仕切る各国のマフィアの手下たちもうろうろしている。
バルセロナのゴミゴミした下町にある私の住む安アパートには、なけなしの年金でやっと暮らすカタルーニャ人の年寄りに混じって、中南米人、アラブ人などの貧乏人たちが大勢住んでいるが、それでも少しでもまともな仕事を見つけてみんな必死に働いている。
こんな場所から見上げるように世界を見回していると、自分は日本の高みに居て「イラクで自衛隊を襲う者は皆撃ち殺せばよい」などと言うような人たちは、私には別種の生物のように思えてくる。エイリアンなどを仮定する必要は無い。こいつらはもう十分にエイリアンなのだ。
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次回は「スペインを引きずるアメリカ資本」と題してお知らせします。