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イラク復興事業入札規制が波紋(米国)−JETROより
http://www.jetro.go.jp/se/j/iraq.html
〜国防総省が入札資格を米国および「同盟国」企業に限定〜
米国防総省は12月5日、「決定と確認」と題するイラク復興事業の受注資格に関
する通達を発表。入札参加資格を米企業および米国のイラク攻撃を支持した日
本、英国、オーストラリアなどの企業に限定したため、イラク戦争に反対した
ことを理由に除外されたフランス、ドイツ、ロシアなどは反発を強めている。
一方、通達の発表が、ブッシュ大統領が主要国に対イラク債権放棄を要請する
時期と重なったことから、ブッシュ政権内の足並みの乱れが一部で指摘されて
いる。
<入札資格を63ヵ国に限定>
「決定と確認(Determination and Finding)」通達は12月5日、ウォルフォウ
ィッツ国防副長官の名前で発表された。通達によると復興事業への入札参加資
格を与えられたのは米国および対イラク戦争、復興事業において「同盟国」と
された62ヵ国(表1)の企業。入札案件は26件(表2)で、発電所の設計・建設、
交通網の整備、新イラク陸軍の装備など多岐に渡り、案件の総額は約186億ドル
に上る。契約金は、「イラクおよびアフガニスタン復興支援補正予算法」(PL
108-106)によって設立された「イラク救済・復興基金(Iraq Relief and Rec
onstruction Fund/ IRRF)」より支払われる。
入札参加企業を米国企業および同盟国企業に限る理由について、「米国の主要
な安全保障上の利益(essential security interest)を守るため」としている。
通達は、「今回、入札参加国を限定することで、今後、国際社会からの協力が
一層広がるだろう」と明記しており、今回除外された国も今後イラク復興に派
兵、もしくは資金提供などの協力をすれば、その見返りとして入札参加国に加
える可能性があることが示唆されている。「元請けとしての受注」は米国およ
び同盟国企業に限定しているが、下請け契約であれば、入札対象国以外の国の
企業でも受注することができる。
通達の公示を受け、入札から排除されたフランス、ドイツ、ロシア、カナダな
どが反発を強めた。欧州委員会(EU)は、同通達が世界貿易機関(WTO)協定違
反の可能性もあるとして調査に乗り出すことを発表した。
<USTRは国防省と異なる見解>
米通商代表部(USTR)は通達について、国防総省に対し不快感を示している。
USTR高官はその理由として、通達に関する事前の関連省庁会議で、「米国の主
要な安全保障上の利益を守ること」を入札規制理由にしないと合意したにも関
わらず、最終的に国防総省はその理由を通達に明記したという(12月11日付「
フィナンシャル・タイムズ」紙英国版)。
国防総省は、「連合暫定施政局(CPA)の入札規制は、安全保障上の利益を守る
ためであるから、入札規制は、WTOが定める政府調達協定の例外が適用され、W
TO違反ではない」と主張した(WTO加盟メンバーの内、米国、EUなど28ヵ国・地
域が締結する政府調達協定は、政府機関(地方政府を含む)が財およびサービ
スの調達を行う際、内国民待遇の原則、並びに無差別待遇の原則の適用を義務
付けているが、同協定第23条1項は、「兵器購入など安全保障の利益に関する場
合」を同協定の例外適用として認めている)。
一方USTRは、CPAは米国の機関ではなく、他国の資金援助を受ける多国籍機関で
あり、いかなるWTOルールも適用されないという立場を取る。従って、USTRにと
って、EUの「入札規制がWTO違反である」という主張はそもそも成り立たない。
USTRは、国防総省の通達により、WTOにおける米−EU間の対立がさらに悪化する
ことを危惧している。
USTRは、「(本来ならば政府調達協定が適用されるが)例外が適用される」と
主張するということは、CPAは米国の機関で、原則WTOルールの対象になると認
めたことに等しく、EUにWTOを通した米国非難の機会を与えたとみなしている。
<通達を支持するもタイミングには不満>
通達に対し各国が強く反発したことを受け、ブッシュ大統領は11日、「極めて
単純なことだ。米国民および同盟国の国民は、命がけでイラク復興に従事して
いる。従って、それらの国々が契約によって恩恵を受ける。それは、米国の納
税者が望むことである」と通達を強く擁護した。
しかし、一方でブッシュ大統領とその側近は、通達が発表されたタイミングに
驚いた。通達が発表された12月5日には、折りしもベーカー元国務長官が、ブッ
シュ大統領によってイラク債務問題担当特使に任命され、フランス、ドイツ、
ロシアなどに対イラク債権放棄を要請する矢先だったからだ。それらの国々の
反発を招くような通達が、同日に国防総省から発表されたことにより、一部で
ブッシュ政権内の足並みの乱れが取り沙汰されている。
12月11日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙によると、通達が公になったのが、
ブッシュ大統領が各国の首脳に、対イラク債権放棄要請を目的とするベーカー
元国務長官の訪問を受け入れるよう依頼するたった数時間前であり、ブッシュ
大統領と側近は、通達が原因で各国の態度が硬化するのを恐れた。ブッシュ大
統領も通達を事前に承認はしていたものの、公表のタイミングに「非常に不機
嫌だった」と同紙は伝えている。
<背景は強硬派と穏健派の対立か?>
「ニューヨーク・タイムズ」紙の論説委員で経済学者としても有名なポール・
クルーグマン氏は、12月12日付の同紙社説欄に「意図的な大失敗(A Delibera
te Debacle)」という記事を執筆し、一連の騒動は、ウォルフォウィッツ国防
副長官を始めとする政権内の強硬派による、米国と主要国との和解の意図的な
妨害だとして、強く非難した。クルーグマン氏は、「チェイニー副大統領、ラ
ムズフェルド国防長官、ウォルフォウィッツ国防副長官など、一方的外交と予
防戦争を是とする“ブッシュ・ドクトリン”構築を目指す強硬派は、ベーカー
元国務長官が目指す米国と戦争反対国との和解努力、すなわちイラク復興に向
けた国際協調努力をドクトリン構築の妨げと考えている。強硬派は、イラク復
興事業入札規制が入札から排除された戦争反対国を怒らせ、国際協調が失敗に
終わることを望んでいる」と述べ、入札規制通達を敢えて穏健派が国際協調を
模索しているタイミングで発表したのは、強硬派の意図的な妨害行為と分析し
た。
<入札資格制限は従来の米国の主張>
通達に関し、戦略国際問題研究所(CSIS)のシバ・クロッカー紛争後復興プロ
ジェクト部長は、「確かに通達公表のタイミングは不自然だった」と政権内の
足並みの乱れを指摘した。不自然と思われる理由について同部長は、「通達発
表が、パウエル国務長官が12月4日にブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)
加盟国にイラク復興協力を依頼した直後であったこと、ベーカー元国務長官に
よる各国への対イラク債権放棄の働きかけが始まったばかりだったこと」と、
具体例を挙げた。
クロッカー部長は通達が外交関係に与える影響について、「入札規制は、従来
から米国が主張してきたことであって、特に新しいことではない。諸外国もそ
れを承知しているはずで、入札規制が米国と戦争反対国との関係に与える影響
は限定的だ」との考えを示した。
(表1)
<入札参加資格国>
アフガニスタン、アルバニア、アンゴラ、オーストラリア、アゼルバイジャン、
バーレーン、ブルガリア、コロンビア、コスタリカ、チェコ、デンマーク、ド
ミニカ、エジプト、エルサルバドル、エリトリア、エチオピア、グルジア、ホ
ンジュラス、ハンガリー、アイスランド、イラク、イタリア、日本、ヨルダン、
カザフスタン、クウェート、ラトビア、リトアニア、マケドニア、マーシャル
諸島、ミクロネシア、モルドバ、モンゴル、モロッコ、オランダ、ニュージー
ランド、ニカラグア、ノルウェー、オマーン、パラオ、パナマ、フィリピン、
ポーランド、ポルトガル、カタール、ルーマニア、ルワンダ、サウジアラビア、
シンガポール、スロバキア、ソロモン諸島、韓国、スペイン、タイ、トンガ、
トルコ、アラブ首長国連邦、ウガンダ、ウクライナ、英国、ウズベキスタン
(アルファベット順)
(表2)
<イラク復興事業入札案件>
1. 復興プログラム管理部(CPA内の部署)の運営業務
2. 復興プログラム管理業務 −電気関連部門
3. IDIQ* 発電所設計・建設(イラク南部)
4. IDIQ 発電所設計・建設(イラク北部)
5. IDIQ 既存発電所の復旧(イラク中部)
6. IDIQ 通信・配電関連施設設計・建設・管理(イラク北部)
7. IDIQ 通信・配電関連施設設計・建設・管理(バグダット)
8. IDIQ 通信・配電関連施設設計・建設・管理(イラク南部)
9. 復興プログラム管理業務 −公共事業、水資源関連部門
10. IDIQ 公共事業・水資源関連プロジェクトの設計・建設(イラク北部)
11. IDIQ 公共事業・水資源関連プロジェクトの設計・建設(イラク中部)
12. IDIQ 公共事業・水資源関連プロジェクトの設計・建設(バグダット)
13. IDIQ 公共事業・水資源関連プロジェクトの設計・建設(イラク南部)
14. IDIQ 公共事業・水資源関連プロジェクトの設計・建設(イラク全土)
15. 復興プログラム管理業務 −治安・司法関連部門
16. IDIQ 治安・司法関連施設設計・建設
17. IDIQ イラク国防軍施設設計・建設
18. 復興プログラム管理業務 −建設・保健関連部門
19. IDIQ 一般ビル・住宅・保健関連施設の設計・建設
20. 復興プログラム管理業務 −運輸・通信関連部門
21. IDIQ 運輸関連施設設計・建設
22. IDIQ 通信関連施設設計・建設
23. 復興プログラム管理業務 −石油関連部門
24. イラクの石油関連事業・施設の復興(イラク北部)
25. イラクの石油関連事業・施設の復興(イラク南部)
26. 新イラク陸軍の装備
*IDIQ Indefinite-delivery, Indefinite-quantityの略。納期未定・数量不確
定契約
(注)通達では、IDIQ以外の案件の納期など詳細は明記されず。