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他の投稿者の批判(「論議」板参照)だけでは、生産的でないので、イラクの今後に大きく関わるイラク・シーア派について、若干のコメントをします。
周知のように、フセイン政権は一種の民族社会主義政党であるバース党のボスでした。シリアもバース党政権ですが、イラク・バース党とは、先代のアサド(父)大統領時代から仲が良くありません。イラク・バース党はもちろん政教分離(世俗)政権でしたが、中枢はスンニ派系が押さえていました。というより、ネポチズムで、フセインの出身地、ティクリットの地縁血縁で固めていました。
イラクの65%はシーア派で、シーア派の開祖であるアリーの墓はナジャフにあります。イラク・シーア派は国内組と、イランなど海外亡命組に大別され、主要な組織としては、「イラン亡命組」の△アマル・イスラミーヤ△1992年に結成された「イラク・イスラーム革命最高評議会」(SCIRI=サイリ=)、「国内残留組」の△アマト・サドル・サーミー△アル・ハウザの4つに大別できるようです。
このうちサドル派とSCIRIはともに反米基調が強いものの、お互いの対立も激しく、SCIRIの中核をなすウラマー名家のハキーム家の党首、バーナル・ハキームは8月29日に、ナジャフで爆弾テロで暗殺されました。バーナル・ハキームは、27年間、イランに亡命しており、5月にイラクに帰国したばかりでした。
サドル派を率いているのは20歳代のモクタダ・サドル。父や叔父をフセイン政権に殺されています。SCIRIを「イランのひもつき」とみています。ただ、フセイン政権とは若干のつがりがあったようで、しかも、シーア派各セクトの中で最も「反米」基調が強いため、米国が連合軍暫定占領当局(CPA)のキモ入りで発足させたイラク当地評議会(IIA)からは排除されています。一方、ハキーム家からは、暗殺されたバードル・ハキームの弟、アブドラ・アジス・ハキームSCIRI副議長がIIAに入っています。モクタダ・サドルは、IIAの代わりに「国民会議」を結成すべきだ、と呼びかけています。
ナジャフのシーア派の名家には、このハキーム家、サドル家の他、ホイ家(総帥のアブドルマンド・ホイは亡命先のイギリカスから4月に帰国した際に暗殺されています)、パフルルウルーム家などがあるようです。ムハンマド・バフルルウルームは、アブドルマジド・ホイの代わりにIIAに入っています。イラク・シーア派の仲では、もっとも親米的なのが、このバフルルウルームだそうです。
もちろん、イラク・シーア派の一部にはイランの隠然たる影響力があるでしょうし、クルド人問題もあります。国家統治機構を押さえていたハース党メンバーをどう処遇するか、も難問でしょう。石油利権の分配も未確定です。アルカイダなどのイスラミストも序々にイラクへの影響力を強めるでしょう。チャラビのようなビジネス界出身で欧米のヒモツキ政治家も1枚、噛んでくるでしょう。あらたなイラクの政治統治体制は依然として五里霧中というところでしょう。
ついでに言うと、ダブヤはフセインを裁判にかける、と言っていますが、どういう法的根拠があるのでしょうか。フセインは1度も米国に戦線布告をしたことはないので、米国が戦争の当事国にはならないでしょう。(湾岸戦争も今回も、米国はいわば勝手に”助っ人”としてしゃしゃり出てきただけです)。まあ、にたようなケースはユーゴ内戦
でしょうが、こちらは一応、国連軍という形を取っていました。独裁者だ、というのなら、クェートのサハバ家もサウジもみんなそうです。中国ですら、そうみなせないことはありません。まあ、フセインは韓国の朴政権やフィリピンのマルコスと同じ、あるいはスターリンと同じ開発独裁政権ですので、別に同情する必要もありませんが、ピノチェットとか、いっぱいいた独裁者のうち、フセインだけを「反民主主義」と勝手に決めつけ、戦争を仕掛けた上に、裁判にかける、というのは、いかにも無茶苦茶ですね。こういう米国だけに都合のいい(反米でない独裁者は歓迎するといった)ダブルスタンダードでは、イスラミストのイラクへの影響力は強まる一方でしょう。まあ、来年の大統領選以外は頭にないダブヤにこんなことを言っても「馬の耳に念仏」かもしれませんが。