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http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm
【主張】外交官犠牲 「テロに屈してはならぬ」
平成15(2003)年12月1日[月]
イラクのティクリートで二人の日本人外交官が何者かの襲撃を受け死亡した。二人は今年四月以来、足かけ八カ月の長きにわたってイラクに滞在し、イラクの人道復興支援協力という日本政府の方針に従い、武器も持たず、十分な護衛もつけることなく、イラク全土を駆け回ってきた。その使命感と勇気と献身に心打たれないものはいないだろう。この間のご家族の心痛はいかばかりだったかとも思う。二人の外交官とご遺族に心からの感謝と敬意と哀悼の意を表したい。
≪政府は有言実行のとき≫
政府は今週中にも、イラクへの自衛隊派遣に関する基本計画を閣議決定すると伝えられているが、こうした悲劇的な事件を受け、政府としてどう判断し、どう行動するか。小泉政権の、あるいは日本国としての真価が問われるときである。
川口順子外相は三十日朝の記者会見で、「亡くなった二人の遺志を受け継いで、テロに屈することなく、イラクの復興支援に積極的に取り組む−というわが国の基本方針が揺らぐことはない」と述べた。政府のこの姿勢を支持したい。同時に、二人の外交官の尊い犠牲を無にしないためにも、あらゆるテロを許さず、屈しないという決意を一段と堅固なものにしたい。
亡くなった奥克彦参事官(四五)は、外務省のホームページに四月下旬以来、「イラク便り」を送り続けていた。合計七十本にも及んだ「イラク便り」の十一月十三日付の便りには、イラク南部のナシリヤでイタリア国家警察部隊がテロの襲撃を受け、さっそく現地の調査に飛んだことを書き、「犠牲になった尊い命から私たちが汲み取るべきは、テロとの闘いに屈しないと言う強い決意ではないでしょうか。テロは世界のどこでも起こりうるものです。テロリストの放逐は我々全員の課題なのです」と結んでいた。
今から思えば、これが奥参事官、そして井ノ上正盛書記官(三〇)の日本人への遺言となった。
自衛隊員の安全には多くの議論がなされてきた。当然なことであり、引き続き万全を期す努力が求められる。しかし、武器を持たない外交官や民間人の安全については備えが十分だったかどうか。今からでも彼らに対する可能なかぎりの配慮を求めたい。
≪野党にも説明責任ある≫
今回のような悲劇に直面すると必ず高まるのが自衛隊派遣反対論で、すでにそうなっている。しかし日本としていまどうすべきか、を考えるとき、それを支持することはできない。
反対派の主な主張は、イラク戦争は大義のない戦争だった、その戦争を支持した小泉純一郎首相の判断は誤りだった、英米軍の占領を支持するだけのイラク支援には反対だ、イラク特措法の安全地域もなくなったいま、自衛隊派遣は中止すべきだ−などだ。
イラク戦争に大義があったかどうかの議論は簡単には済まないだろうが、イラク戦争を招いた責任はフセイン元大統領にあったこと、大量破壊兵器はまだ発見されていないが、それを持つ意思があったことは確実だったこと、イラク国民の多くはフセイン独裁政権の暴虐から解放されたことを歓迎していることなどを忘れてはならない。小泉首相の戦争支持も、総合的な安全保障や国益の観点からのものであった。また、米英軍などの占領は領土獲得が目的ではなく、治安が回復されれば撤退する性格のものであること、いま手を引けば、日本はテロに屈して計画を取りやめる最初の国となり、テロリストたちに勝利を与えるのみであることなども考えなければならない。
一部にはまた、イラクでのテロは、テロというよりレジスタンス(抵抗運動)だという議論も出ているが、テロリストたちの卑劣な暴力を正当化しようというもので、論外である。
イラクへの自衛隊派遣は、わが国の外交、安全保障の基本にかかわる重大問題である。「方針が揺らぐことはない」という小泉首相には、なぜ自衛隊を派遣するのかを含め、説得力ある総合的な説明を期待したい。同時に、反対する野党各党、とりわけ政権を目指そうという民主党には、では現実的、具体的にどうしたらよいのかを問いたい。日本の尊厳と平和、国益がかかっているのだ。