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(回答先: 【どす黒い】カーライル・グループが英国のデイリー・テレグラフの買収を画策【戦争企業】 投稿者 小泉犬 日時 2003 年 11 月 28 日 22:20:55)
米国資本主義の「死角」
阿部 重夫(『選択』編集長)
オンライン書店が発達したおかげで、大手書店の洋書部門はどこも投げやりだ。ハリー・ポッターのようなベストセラーばかり追う芸のなさで、表紙も品がなく、渉猟する楽しみがめっきり減った。広げた画集の上に時限爆弾に擬したレモンをそっと置いてくる、という梶井基次郎の『檸檬』のハイカラな悪戯(いたずら)は、とうに不可能になっている。
ある書店でふと手にした本は、編集者の見識を疑いたくなる無神経な装丁だった。タイトルは『鉄の三角形』。TRIANGLEの「A」が三角のエンブレムになっていて、そこに目が光っている。
何の本だと思います?
オカルティズム、秘密結社、ユダヤの陰謀……。否、米国の私募ファンド「カーライル・グループ」を追ったジャーナリストの労作なのだ。ため息が出る。「陰謀」をにおわす装丁は逆効果ではないか。
カーライルの名を高からしめたのは、「人寄せパンダ」として役員や顧問に迎えたそうそうたる顔ぶれである。89年から会長をカールッチ元国防長官が務めた縁で、共和党中枢に人脈を掘り下げた。父ブッシュ元米大統領、ベーカー元財務長官、ダーマン元予算管理局長らOBから、子のブッシュ大統領、パウエル国務長官ら現役組まで及ぶ。
政治家だけではない。現会長には、IBM会長を辞めて『巨象も踊る』を書いたガースナーが就いた。海外では、メージャー元英首相、ラモス元フィリピン大統領や韓国、タイの首相経験者も含まれ、さながら政財界大物の「隠居クラブ」の様相を呈した。
大物を勢ぞろいさせる効用は二つ。第一はファンドへ投資を呼びこむ誘蛾灯(ゆうがとう)の役だ。現にカーライルには、ヘッジファンドの雄ソロスからサウジのアルワリード王子まで、有力投資家の影が見え隠れする。
皮肉な話もあった。9・11テロの当日、カーライルがたまたまワシントンで投資家向け説明会を開いていた。その会場には、富豪ビンラディン家のサフィークも投資家として参加しており、犯行の主犯が肉親と聞かされ、慌てて米国から退去したという。
第二の効用は、ファンドの資産運用先に大物の影響力を期待できること。とりわけ問題なのはブッシュ親子である。父は現職を離れて久しいが、現政権も無視できぬ「権威」を持つ。現にカーライルの運用先は国防、通信など規制業種が中心で、「親孝行」の利益誘導が起きかねない危うさがある。
露呈しているのは、米国資本主義の本源的死角だろう。カーライルに限らず、KKRやブラックストーン、リップルウッドなど私募形式の企業やファンドは、富豪や家族信託、大学基金などから巨大資金を集め、その人脈を駆使しておいしい投資案件をいち早くつかみ、企業ディール(売買)で巨利を稼ぐが、私募ゆえに投資家も運用先もほぼ非公開なのだ。そこには情報、人脈、資金の圧倒的な非対称性があり、市場と相いれない「いいとこどり」ではないか。
この私募ファンドの手前勝手は、「陰謀史観」では歯が立たない。今秋予定の訪日で、父ブッシュがどんな行脚をするか、けだし見ものである。
http://www.be.asahi.com/20030802/W12/0023.html