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『NOといえない日本』
イラクと米どっちが怖い
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031128/mng_____tokuho__000.shtml
フランス、ロシア、中国、インド…。米英の求めるイラク派遣に参加しない国を見ると核保有国が並ぶ。裏返せば、米国の核の傘に依存する多くの国がイラク復興支援に協力しているともいえる。現地で危険にさらされるが、米国に逆らうのも怖い。安全保障上の各国の立場が派遣に投影されている。日本も米国に「ノー」と言えない立場なのか。あらためて検証した。
■核保有国の不参加多く
「ロシアは許し、ドイツは無視、フランスには懲罰を」。イラク戦争の終結宣言後に、欧州のメディアがライス米大統領補佐官の発言として報じた方針だ。
イラク派遣に参加しないこの三大国の中で、核保有国でないのはドイツだけだ。日本と比較的似た立場にいるドイツは、イラク派遣への「ノー」で米国からどの程度の怒りを被ったのか。
まずドイツがイラク戦争に反対した事情について、日本経済研究センター主任研究員の走尾正敬氏は「昨年九月の総選挙でシュレーダー首相はイラク戦争への不参加を公約に掲げて勝利した。国民に対し引っ込みがつかなかったからだ」と説明する。
■独は駐留米軍大幅削減免れ
米国の“不興”は、今年六月のエビアン・サミットでの態度で明白に表れた。ブッシュ大統領は会議を途中退席し、ホスト国のシラク仏大統領の面目をつぶしシュレーダー独首相とは個別会談に応じず、文字通り「無視」してみせた。
ただ、「無視」による「実害」はそう大きいものではなさそうだ。
走尾氏は「イラク戦争当初、ドイツの米軍基地の大半は親米派のポーランドやルーマニアに移されるといわれていた。だが、ラムズフェルド国防長官が二十六日発表した米軍基地の配置については、ドイツの駐留米軍を二割削減するだけにとどまっている。ドイツの新聞などは『ドイツの方が住みやすいので、選挙に備えて米兵の家族に配慮した』と分析している」と話す。
拓殖大の佐藤健生教授(ドイツ現代史)も「NO」のリスクについて「在米ドイツ人らが居づらくなるくらいだ」と断じる。
「日本と違い、ドイツは欧州の一部としての立場なので、そもそも米独の一対一では大きな影響はない。ドイツにとって米国は第二次世界大戦後に世話になった国だけに義理はあるが、七〇年代から政治的な米国離れは進んでいる」
一方でイラク派遣で「対米協力」を競う国もある。
隣国のポーランドは約二千五百人を派遣、米英軍への積極的な協力が認められイラク中南部で二十カ国以上の軍を指揮している。今月に入り、初めての戦死者も出した。すでに市街戦に備えた訓練も行っている。
■小国は寄らば大国の陰
早稲田大の伊東孝之教授(東欧現代史)は「小さな国であるほど、唯一の超大国となった米国のパワーに依存しているためだ」と指摘し、こう解説する。
「ポーランドは、昔から積極的に国際紛争に兵隊を出す国だ。朝鮮戦争にも出兵している。米国への移住者が多く、要請を断れないという理由もあるが、ロシアやドイツという大国に挟まれているという事情もある。旧ソ連は消滅し、ドイツとの関係も良好だが、エリート層の間では、ドイツだけに依存した関係に対する恐れが強い」
ただ、親米派の最右翼と目されるポーランドでさえイラク派遣に反対する世論は高まっている。先月末の調査では「反対」が57%に増えている。
■米の草の根、意外な寛容論も
では、日本が仮にイラク派遣に「NO」を言った場合、米国は日本に対し、どのような態度に出るのか。日米双方の声を集めた。興味深いのは米国側の意見の方が「寛容」な点だ。
米マサチューセッツ工科大のリチャード・サミュエル教授(国際政治)は「日本が『NO』と言ったとしても米国がフランスに対して行った製品ボイコットのような経済的な不利益を被るとは思えない。最近のイラク情勢では、日本が自衛隊派遣を延ばし延ばしにしていることは米国世論も納得できる範囲だろう。さらに、米国内もイラク戦争に対して、政府に反感が強まっている」と解説する。
ミネソタ大のジェフリー・ブロードベント教授も「米国民の中には、この戦争やブッシュ政権に関しての確信を持てなくなってきている人たちも多い。国連ですら、撤退を余儀なくされているところもあるくらいだ。安全がある程度保証された条件の下で日本が復興支援をするといっても、米国政府は文句を言えない」と話した。
国民感情としてどうか。コロラド州在住の四十代男性は「戦争当初は9・11の痛みが強くてフランスやドイツが参戦しないことに腹が立った。でもゲリラ戦で多数の米兵が死んでいる状況で日本がちゅうちょしても無理はない」と話した。
■「金銭支援の方が…」
ネバダ州のアダム・ミラーさん(25)は「仏独軍と違って日本がイラクに派遣されても助けになるとは思えない。金銭的なサポートの方が良いのでは?」。
これに対し、日本の識者では拓殖大学の吉原恒雄教授(国際政治学)が「ドイツが派遣を断ることに比べ、日本の『NO』の方が米国から厳しい反発がある」と指摘する。
「北朝鮮に対して手助けしてくれなくなる。中国は東シナ海の内海化を狙っており、日本にとって大きな脅威になるが、米国の支援は望めない。それに中近東で採掘寿命が一番長いのはイラクの油田。今回派遣しないと、将来石油を回してもらえなくなる」
日商岩井総合研究所の主任エコノミスト吉崎達彦氏も「自衛隊を派遣しないということは『米国の北朝鮮への圧力や国連常任理事国入りをあきらめる』ことにつながり、日本外交を書き直す必要に迫られる」。
一方で、東京家政学院筑波女子大学の浅川公紀教授(国際政治学)は「日本が派遣しなくても米国の大きなしっぺ返しはない。米国が日本に求めることの方が多いからだ」と解説する。「パワーバランスからも中国の強大化を恐れているのは米国の方。安全保障上、極東の基地として日本に依存している側面もある」
それでは、うまく派遣を断る方法はあるのか。浅川氏は「はっきり『NO』と言わないで、延期する。テロで多数の死者が出て派遣をためらう国が出ている現状では、延期は理屈に合わない話ではない」と話す。
■米英を除くイラク派遣国
(カッコ内は派遣規模)
【欧州】イタリア(3000人)、ポーランド(2500人)、ウクライナ(1600人)、スペイン(1200人)、オランダ(1100人)、ルーマニア(800人)、デンマーク(500人)、ブルガリア(480人)、チェコ(300人)、ハンガリー(300人)、以下300人未満=アルバニア、アゼルバイジャン、エストニア、カザフスタン、グルジア、スロバキア、ノルウェー、マケドニア、モルドバ、ラトビア、リトアニア
【中南米】エルサルバドル(380人)、ホンジュラス(370人)、ドミニカ共和国(300人)、300人未満=ニカラグア
【アジア・オセアニア】オーストラリア(800人)、韓国(460人)、タイ(420人)、以下300人未満=ニュージーランド、フィリピン、モンゴル
【中東】いずれも300人未満=アラブ首長国連邦、サウジアラビア、ヨルダン