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混迷イラク (中)「「自衛隊カード」世界注目 (朝日新聞); (下)「大義」見つめる自衛隊員
http://www.asyura2.com/0311/war43/msg/1177.html
投稿者 竹中半兵衛 日時 2003 年 12 月 03 日 15:02:48:0iYhrg5rK5QpI

混迷イラク (中)「「自衛隊カード」世界注目 

朝日新聞 12月2日
http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/konmei/031202.html

中:「自衛隊カード」世界注視

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 米政府にとって、「日本の自衛隊派遣」は皮肉なことに、時期がずれ込むにつれて重みを増している。 イラク復興支援特措法が成立したのは、夏も盛りの7月下旬。自衛隊派遣は秋にも実現すると見られていた。ところが派遣は延び延びになり、冬を迎えた今も時期すら見通せない。そこに事件が起きた。

 自衛官を数百人派遣しても、13万人規模の駐留米軍からみれば大した「援軍」にはならない。ウォルフォウィッツ国防副長官が「日本からは多大な貢献は期待していなかった」と語ったのは、米国防当局の本音だろう。


■   ■
 米国は駐留米軍を来年5月をめどに約10万人に減らす計画を立てた。穴を埋めようと各国に派兵を要請したが、すでにトルコ、インドから断られた。米軍の猛烈な掃討作戦を受け、武装勢力は周辺の弱い標的に狙いを広げた。ここで日本が断念すれば、残るパキスタンを含めて総崩れになりかねないという懸念が、米政府に広がっている。

 米国から追加派兵を求められている韓国にとって、日本の動向は「ひとごとではない」(政府関係者)。韓国の民間人2人がティクリート近郊で日本人事件の翌日に殺害され、1日付各紙1面は「イラク」で埋まった。

 「韓米同盟維持」の名分のもと増派を決めたものの、日本と同様、規模や時期などで明確な方向性が出せない。政府関係者は「日本の派遣が遅れれば、韓国も遅れる可能性が高い」と見る。

 残留か、撤退かで世論が割れるイタリア。国営テレビが11月30日未明から「外交官殺害で日本政府に衝撃」と速報するなど、事件に高い関心を示す。有力紙レプブリカは「イラクではもう、だれも安全ではない」と報じた。

 英BBCテレビは「数週間以内に派遣を決めたいという日本政府の日程はもはや現実的でない」とみる東京特派員の分析を伝えた。英国国内では、派遣を巡る小泉政権の苦境は極まったとの報道が目立つ。


■   ■
 「日本人殺害」のニュースが流れた30日夕、バグダッド市民の声は冷ややかだった。

 「米国を助けているから攻撃の的になる」(理髪店主、47歳)「日本もイラクで利権の分け前を得ようとしている」(雑貨店主、42歳)

 自衛隊の派遣候補地、南部サマワの総合病院は、80年代に日本の援助で完成した。部族長の一人は「日本が来て、サマワを美しい街にしてほしい」と話す。人々が民生面で日本にかける期待は確かに大きい。

 だが、自衛隊の話になると多くの市民が「軍隊はいらない」と口をそろえる。米占領への反発が激しくなり、自衛隊はまだ姿も見せていないのに「米軍を助け、イラク人と戦う」軍隊と受け止められている。


■   ■
 「大規模戦闘終結」から7カ月。その間、イラクの「泥沼化」は進んだ。だが、「有志連合」を見渡しても、深刻な犠牲を出しながら、軍を撤収させた国はない。

 一方、イラクに派兵していないドイツは、アフガニスタンでは千人規模の兵士を派遣し、米国の肩代わりをしている。

 ドイツのような選択肢がないなかで、小泉首相は「自衛隊派遣」を繰り返し表明してきた。その実現に手間取る間に、「派遣するか否か」はより重い意味を持つようになった。小泉政権はいま、自らの「派遣カード」に追い詰められている。

(朝日新聞2003年12月02日朝刊紙面)

上:説明なき対米傾斜政策 >>
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下:「大義」見つめる自衛隊員 >>

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下:「大義」見つめる自衛隊員
朝日新聞 12月3日

http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/konmei/031203.html

外交官殺害の数日前、「日の丸」の蛍光シールが札幌市にある陸上自衛隊の駐屯地に届いた。大小約580枚。イラクに派遣する車両に張るために陸自が調達した。

 陸上部隊の制服は、景色に溶け込みやすい色彩にするのが原則だ。しかし、陸自はあえてその原則を曲げる考えだ。

 米軍も採用している砂漠仕様の迷彩服はやめ、緑の迷彩服と無地の作業服とする。作業服には日の丸を胸、袖、背中と、目に付く限り張る。

 「米国と一体と見られればテロの対象にされかねない。日本は人道支援だと一目で分かるようにしたい」(陸幕幹部)との判断からだ。

 しかし、テロの標的はイタリアやスペイン、韓国、日本へと広がったようにみえる。

 「日の丸を張ったら、相手に居場所を教えるようなもの」

 事件の翌日、防衛庁幹部はそう言った。

 1日夕、都内のホテルで、日本に駐在する各国の武官が防衛庁幹部を招くパーティーがあった。石破長官は自衛隊派遣の決意が変わらないことを強調した。が、同席した先崎一・陸上幕僚長は、いつもより口数が少なかったという。


■   ■
 91年、湾岸戦争後のペルシャ湾に海上自衛隊が派遣されて以来、自衛隊は国連平和維持活動(PKO)協力法やテロ対策特別措置法で海外への派遣を続けてきた。

 事故や病気で死亡した隊員はいても、戦闘に巻き込まれたり、攻撃を受けたりして死傷者が出たことはない。同時に、相手に危害を加える武器使用もなかった。

 「単に運が良かっただけかもしれない。みんな何もないのが当たり前だと思っていないか」と、PKOへの派遣経験がある陸自幹部は話す。

 イラク派遣を前に、防衛庁は任務中に死亡したり重い障害を負ったりした隊員に支給する「賞恤(しょうじゅつ)金」を引き上げることを決めた。訓令を改正し、最高額は6000万円から9000万円に。首相からの特別褒賞金1000万円を合わせれば1億円になる。

 任務の危険性に伴う手当も増額する。1日に2万円が最高だったPKO手当を上回る2万5000円となる見通しだ。

 しかし苦々しい思いを抱く隊員もいる。イラク派遣が予定されている40代の幹部自衛官は言う。「ありがたい話ではあるが、自分たちは金のためにイラクに行くのではない。危険への覚悟はできている。問題は国が、国民が支持してくれ、派遣への大義を与えてくれるかだ」


■   ■
 昨年12月、靖国神社に代わる国立追悼施設についての官房長官の懇談会の報告書がまとめられた。追悼の対象を戦没者だけでなく「国際平和のための活動における死没者」にも広げるという内容だった。PKOなどでの殉職者も念頭にある。

 今年5月には小泉首相が、有事関連法案を審議中の参院で「実質的に自衛隊は軍隊。しかるべき名誉と地位を与える時期がくる」と発言した。

 東京・市谷の防衛庁敷地には9月、自衛隊殉職者を追悼する慰霊の場が完成した。それまで木立の中にあった慰霊碑を、国費6億円をかけて整備。提唱者の森喜朗前首相は完成式典で、「国家・国民のために命をかけたことに、国がその霊を慰め感謝する。そういう形を整えることが遺族の誇りになる」と述べた。


■   ■
 外交官殺害事件後、川口外相は「2人の遺志を受け継いでいくために、テロに屈することなく、復興支援に積極的に取り組むという我が国の基本方針が揺らぐことはない」と力説した。

 「2人の死」を掲げ自衛隊派遣へこぎつけようとする発言が、政治家から相次ぐ。だがなぜ危険を冒してでも派遣するのか。国民の合意が得られるような説明はない。(後藤啓文、石橋英昭)

(朝日新聞2003年12月03日朝刊紙面)

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