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大統領が逃亡-先住農民先頭に始まった革命の最初の勝利
ホセ・ロスティエル
解説
米州自由貿易協定(FTAA)への先住民を先頭にした反乱
ボリビア民衆の反乱は米州自由貿易地域(FTAA)協定に反対する闘争の重要な支点である。二〇〇五年に発効すると予測されるこの多角的協定は、アラスカからフエゴ島まで南北アメリカ大陸全域を包含することになる。これは、北米自由貿易協定(NAFTA、一九九四年以降成立したカナダ、アメリカ、メキシコを含む協定)を拡大するものであって、より広範な自由貿易地帯になることを望んでいる。金融資本の流入に対する国境の開放、公共サービスの民営化、生物全体の特許化、国の権利よりも多国籍企業の権利の優先、がその原理である。米州自由貿易地域構想は、IMFと世界銀行が強制する構造調整計画の尊重を口やかましく要求する。それは、貧困国の国民経済に対する死刑宣告である。北米自由貿易協定の経験は、その経験が南北アメリカ大陸全域に拡大する危険を立証している。北米自由貿易協定が発効して以降、メキシコでは、二十万人の雇用が失われ、最低賃金は二五%も下がった。
米州自由貿易地域協定に反対する闘争はラテンアメリカの社会運動にとって優先されるべきものである。この闘いは自由主義路線に反対するすべての大衆動員と結びついている。ボリビアでは、この闘いを最も断固として展開したのが、先住民のケチュア族とアイマラ族であった。この闘いにおける先住民の中心的位置は、エクアドルでもメキシコのチアパスでも見られる。チアパスでは、北米自由貿易協定が発効した一九九四年一月一日にサパティスタが反乱を開始したのだった。
先住民にとって、土地についての集団的所有概念は不可欠なものである。土地は、しばしば共同で管理され、生物界であるとみなされており、その生物学的なまとまりが尊重されなければならない。だから、土地は売るべきものではあり得ないのである。ほとんど生産的ではない農業でしばしば生活している先住民は、農産物貿易の自由化の第一の犠牲者である。
この先鋭な意識があるために、アルチプラノ高原地帯で天然ガスの輸出に反対するアイマラ族農民の大衆的な動員が実現されているのである。それは同時に希望を表わしている。すなわち、従属国の社会運動と最富裕国の反グローバリゼーションとが合流するという希望を。(「ルージュ」、03年10月23日)
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だれが天然資源を管理するのか
ボリビアのサンチェス・デ・ロサダ大統領は逃亡した。一カ月の闘いと八十人近くの死者を出した後、「天然ガス」をめぐる最初の闘いは勝利した。しかしながら、何も終わっていない。支配階級は、弱体化し、圧力を受けているにもかかわらず、自分たちの体制を救うのに成功している。二〇〇〇年、コチャバンバでの水の民営化に反対する闘いの勝利に引き続いて、ボリビア民衆は新自由主義路線を強行しようとする多国籍企業に再び痛烈な打撃を与えた。
アイマラ族のインディオ農民がこの九月にアルチプラノ高原の輸送ルートを閉鎖する運動を開始した時、これらの農民たちは全国に、誰が天然資源を管理すべきか、というひとつの根本的問題を提起したのである。
なぜなら、ボリビアは、ラテンアメリカでも最貧国の部類に属する国であるが、南アメリカではベネズエラに次ぐ大量の天然ガス鉱脈をもっている。それを開発するために、サンチェス・デ・ロサダ大統領はまさに、スペインのレスポル、ブリティッシュ・ガス、アメリカン・エナジーを含むコンソーシアム(企業連合)にその開発を委ねる準備をしていたのであった。
このコンソーシアムが、期待される利益のうちの八二%を確保することになっていた。現地でなぜこの天然ガスを変換してはいけないのか? この天然ガスを住宅や企業のためにどうして使ってはいけないのか? ボリビア農村労働者単一組合連合(CSUTB)が反乱を開始した時に提起したこれらの疑問に対して、政府はこの紛争地域を軍事化することによって応えた。九月二十日、軍隊が民衆に発砲し、五人を殺害した。
武力弾圧を打ち破った闘い
それに対して社会運動が即座に反応した。ボリビア労働者センター(COB)がストライキを呼びかけた。ストライキをという合い言葉は広がり、IMFの要求に従う政府と、サンチェス・デ・ロサダ大統領の辞任、制憲議会、自由主義的経済政策の停止を要求して大々的な攻勢に出た闘争組織との間の対立の深さを示した。
ここで実現が問題になっていたのは、社会共和国であった。ストライキが首都を麻痺させている間、アルチプラノ高原の農民たちは「武装反乱」を宣言した。チェ・ゲバラはかつてこの国で都市と農村の提携を期待した。民衆の真の勝利のためにはこの提携が不可欠であるからである。ゲバラの期待は彼の時代には実現されなかったものの、都市と農村の提携は今ここに形成されたのである。
弾丸には投石で、重火器にはダイナマイトでと、デモ行進はきわめて激烈なものになった。最後まで闘うという民衆の決意を前にして、軍隊の弾圧は残忍になり、約八十人が殺された。十月十六日、五万人以上がラパスの中心街を包囲した。軍隊それ自体の自信が揺らいでいるように思われた。反乱を起こすと反抗した現地出身の兵士たちが前線から引き揚げさせられた。大虐殺に衝撃を受けた中産階級は、デモの側に移行した。政府は分解した。サンチェス・デ・ロサダ大統領が国に対する支配力を失い、辞任し、逃亡しなければならなかった。
反乱の強さは、この国の長い闘争の経験を振りかえることなしには理解できない。ボリビアはすでに一九五二年に革命的情勢を経験している。この時、COBの指導部のもとで、この国は、COBに組織された鉱山労働者とその当時の政府との間の二重権力を経験した。しかも、植民地建設者に対する五世紀にわたる現地住民の抵抗があったために、一九七〇年代から一九八〇年代までの伝統的労働運動の危機の局面においても、農村部門の組織化と政治的意識によって、社会的動員を維持することが可能だったのである。
この三十年間、IMFとアメリカに後押しされたブルジョアジーは、新自由主義的国家を強引に導入してきた。一九八五年、一つの政令が国民経済の混合的性格を終結させた。その後に続いた改革は、二万人の鉱山労働者を失業に叩き込み、公共サービスを解体した。水道料金は六倍に値上がりした。
しかしながら、二〇〇〇年四月、大衆動員の新たなサイクルが勝利とともに始まった。コチャバンバで、住民が水の民営化計画を退けたのである。水防衛共闘会議は、さまざまな闘争当事者を集中したが、これがその後、現在の大衆動員で重要な役割を果たしている天然ガス防衛全国共闘会議に転化したのである。その後、それぞれの社会運動の決意は、よりいっそう堅固になったが、同時に弾圧もより厳しくなった。一番最近の弾圧は、今年の二月で、ストライキ中の警官隊と軍隊との間の正規戦の戦闘が展開されて、三十三人の死者を出した。
帝国主義の意表を突く反乱
社会運動の強まりは体制にも影響を及ぼした。二〇〇二年の大統領選挙では、社会主義運動(MAS)の指導者、エヴォ・モラレスが、選挙でサンセス・デ・ロサダと互角の戦いを展開した。両候補のうちで二者択一を選ぶように迫るアメリカの圧力のもとで、議会ではもちろん新自由主義の候補を支持する投票を行わなければならなかった。
サンチェス・デ・ロサダは今やアメリカに亡命した。しかしながら、彼の没落は半勝利でしかない。ただちに臨時総会に結集したCOBの活動家たちは、「われわれは戦闘には勝利したが、戦争には勝っていない」という点では一致している。大衆的で戦闘的な動員は、すべての組織の期待を大きく上回った。天然ガス防衛共闘会議が闘争の最初の局面で運動を統一する役割を果たしたとしても、その後、MAS、COB、CSUTCBはまだ相互の共闘を実現することにも、運動にリズムと十分に野心的な目的を与えることにもまだ成功していない。要するに、革命的指導部が欠如しているのだ。
しかしながら、まだ何も動いてはいない。軍と議会は自分たちが犯罪を犯したにもかかわらず、何も手がつけられないままであるが、民衆の強大な圧力を受けている。天然ガスについて国民投票の実施、新自由主義の正統路線との決別、制憲議会の招集と新しい選挙の実施。以上が、抗議運動を沈静化するためにカルロス・メサ新大統領がせざるを得なくなっている約束である。この公約をいかに守らずにすませられるか、これが彼の今日の主要な関心事である。
メサ新大統領が前大統領よりもましでないことは明白である。いずれにしても、新大統領によって支配階級が情勢を安定化させられることなどありそうもない。エヴォ・モラレスが新政府に「待機時間を与える」ために平穏を訴えているとしても、他の労働組合組織はよりいっそうの攻勢に出るという立場を表明している。動員体制をそのまま持続し、統一的闘争の場を準備し、今月には欠けていた共同行動の枠組みを建設すること。以上がCOBによって発表された当面の目標である。CSUTCBの指導者、フェリペ・キスペ自身は、今や短期的目標が「権力を握る」ことである、と指摘している。
ラテンアメリカ全体がボリビアの反乱を注意深く見守っている。実際、その結末に、米州自由貿易地域(FTAA)協定を南北アメリカ大陸に押し付けようとしているアメリカはひどく意表を突かれた。その点でホワイトハウスは間違っていないでのあって、自らもその一部を担っている弾圧を全面的に支持している。メキシコのカンクンで、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラの抵抗に直面してWTO閣僚会議が失敗した後では、アメリカに忠実なサンチェス・デ・ロサダの失脚はそれだけでもアメリカにとって重大な打撃である。これがアンデス地域に伝染していく危険があるだけになおさらそうである。近くのエクアドルはすでに社会的緊張を経験していて、石油資源がボリビアの天然ガスの役割を果たす可能性がある。
(「ルージュ」10月23日号)
ボリビア農民労働者単一組合連合(CSUTB)委員長フェリペ・キスペに聞く
われわれは権力を握ろうとする
フェリペ・キスペ(六一歳)は、先住民パチャクチ運動(MIP)として二〇〇二年の選挙において七%の得票率を得て議員に選ばれたが、ボリビア農村労働者単一組合連合(CSUTB)の委員長でもある。アルチプラノ高原でのゲリラ「ツパクカタリ」の創設者(一九九二年に解散)であった彼は、主要指導者とともに投獄されたことがあり、五年後に出獄し、二〇〇一年にMIPを結成した。
――大統領が交替した現在、今後何をなすべきなのか?
第一段階は、殺人者の解任である。現在、われわれは議会での今後の事態を見守っている。今ではメサが大統領なので、われわれは彼との交渉を試みる。彼がわれわれの七十二の要求を実現しなければ、われわれは自分たちのデモと大衆動員を継続するだろう。われわれの要求が受け入れられなければ、その時には、われわれが権力を握るよう試みるだろう。
――それでは、合意が成立しない場合には、目指すべきは、力で政権を取ることであると?
権力につくための手段は革命である。われわれにとって、自分の運命の主人公になるためには政府を統制するだけでは十分ではない。体制の諸機関を通じては、われわれが権力に到達することはないだろう。われわれに属しているものを管理するためには、すべてを、すなわち、アメリカの利益に奉仕する軍隊や警察や経済権力を、解体しなければならないだろう。革命はいつかやって来るだろう。
――政府には先住民がなぜ入っていないのか? 人種差別主義があるのか?
人種差別主義は存在している。そう、エリート集団の中にそれは存在している。われわれは、人口の九〇%(先住民と混血)を占めているが、権力をもっていない。どうしてそうした情況が可能になっているのか。われわれが権力に到達することのないように、すべての仕組みが作られているからである。この情況への出口、これが、われわれにとって、グアテマラとエクアドルとメキシコとペルーの先住民にとって、革命なのである。平和的に、先住民が権力に到達することはない。今や、われわれが自分の運命をわが手に握るべき時である。
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