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イラク駐留米兵の不安 “代弁”する家族ら [東京新聞]【米兵でさえ「誰のための戦争なのか」と言う】
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/395.html
投稿者 マルハナバチ 日時 2003 年 10 月 18 日 12:53:26:WjxaaVdW72Wrk

ブッシュ米大統領が来日、“盟友”小泉純一郎首相はイラク復興支援で十五億ドルの拠出を約束し、自衛隊も年内派遣の状況となりつつある。しかし、テロの不安にさいなまれる、現地の米兵からは「誰のための戦争なのか」との疑問も出ているという。こうした中、米兵の家族や元兵士らも声を上げ始めた。日本にとってもひとごとではない状況とは−。

 「何のために、自分たちは命をかけてイラクに駐屯しているのか」

 戦場の息子たちから、家族に届く“不満”は日に日に大きくなっている。

 昨年十一月に、イラク戦争に反対して、米兵の家族らが結成した「声を上げる軍人家族の会」には、戦場の米兵や家族からメールや電話が続いている。願いはただ一つ、泥沼化するイラクからの帰還だ。

■帰還を延期され非常なストレス

 創始者の一人で、息子がイラクに派遣されていたナンシー・レシンさんは「多くの兵士が、期間を延期され、いつ帰ることができるのかも分からない状態で、非常なストレスにさらされている」と説明する。

 米兵たちから漏れる戦場は生々しい。

 ある米兵の家族は、同会に「息子のいる部隊では、百二十人の兵士が属しているにもかかわらず、わずか三十しか防弾チョッキが与えられていない。すでに三人の米兵が死に、九人が負傷した。気温も五、六〇度にまで上がり、水も不足しているのに、昼夜問わず働いている」と訴えてきた。

 フロリダ州兵の家族たちは「息子たちは市民であって、陸軍の現役兵士ではない。彼らの中隊は、数え切れない攻撃を受けてきた。砂漠の戦闘や都市ゲリラへの対処の訓練など一度も受けたことがないのに、防弾チョッキも着けずに、ゲリラとみなされる家屋をパトロールしている」と憤る。

 戦場からも「この戦争は間違っている」と訴えるメールが相次いでいる。

■「彼らは市民…」常に攻撃の恐怖

 レシンさんは「どこにいても誰が敵かはっきりしないため、常に攻撃される恐れを感じながら仕事をしているようだ。兵士たちの多くはゲリラ戦の訓練を受けていない。屋根の上に人影があると、敵かもしれないし、子供が涼みに上っているだけかもしれないという緊張状態に不安感が募っている」と説明する。

 イラク駐留の憲兵隊員を父にもつペンシルベニア州の少年、ロビン・タマラ・ポントン君(13)は先月初め、米下院あてに手紙を送った。「ブッシュ大統領はイラクが大量破壊兵器をもっていると言い、世界貿易センターを攻撃したテロリストと結びついていると言ったが、何の証拠も見つからなかった。お父さんはウソのために命を落とすかもしれない。お父さんが生きて戻ってこないのではないかと思うと怖い」

 イラクでは十六日、パトロール中の米兵三人が攻撃を受け死亡。すでに戦闘などで二百十六人が死亡、うち百一人(日本時間十七日午後十一時現在)は五月一日の戦闘終結宣言以降に亡くなっている。さらに事故などで百十七人が死亡、うち九十四人が宣言以降だ。

 非戦闘の死者の中には、自殺者も含まれる。米紙USAトゥデーは、イラク戦開始以来、自殺した米兵は十四人に上ると報じた。十四人の内訳は陸軍兵士十一人、海兵隊員三人。この数字から割り出した年間の自殺率は十万人当たり十七人で、昨年の米軍全体の八−九人を上回る。このほか十三人程度に自殺の疑いがあり、事態を重くみた陸軍は先月、兵士のメンタルケアのため、現地に精神医療チームを急派したという。

■自殺対策に精神医療チーム急派

 「軍人家族の会」の元にも、イラクの米兵たちの心的外傷後ストレス障害(PTSD)の深刻さをうかがわせる声も寄せられている。「戦地の兵士たちの間でPTSDがあることや、自殺者、自殺未遂者が増えていることは報道されるよりずっと前から知っていた」

 レシンさんはこう前置きして、帰還兵士の症状を説明する。

 「絶望感にかられたり、怒りっぽくなったり、アルコール依存症になったり。眠れなかったり、悪夢を見続ける人もいる。戦場の体験はあまりに強烈すぎて家族にも話せず、家族の中にあっても孤独感に襲われている人もいる。ただ、帰還兵の数はまだ少なく、兵士たちはトラウマに悩まされながら戦地にいるのです」

 戦闘に携わった兵士が帰還後、PTSDや家庭内暴力、薬物・アルコール依存症に陥り、社会からドロップアウトする事例は、とりわけベトナム戦争以降、問題視されている。

 「イラク駐留の米兵たちは地獄にいるような気持ちだろう。普通の精神状態では耐えられるものではない」。来日中の米退役軍人で平和活動家のフランク・ドリルさん(55)は自殺者急増の背景をこう説明する。

 ベトナム戦争での米軍の戦死者は五万八千人に上るが、ドリルさんは、帰還後、自殺した人はそれを上回るという。実数は不明だが六万−十万人とみられる。

 「兵士たちは国のためにベトナムで戦ったと思っていたのに、帰還すると反戦運動が盛り上がっていたうえ、『子供殺し』などとののしられた。精神に異常を来さない方が難しい」

 ドリルさんは、今回のイラクも同じような状況になりつつあると話す。「兵士たちは『祖国のため』という大義名分を信じてイラクにやって来たが、大量破壊兵器すら発見されず、大統領の言葉がウソだと分かった。『なぜ自分はここにいなければならないのか』と自問し、『祖国に裏切られた』と感じている。国際社会の意思に反して始められ、法的にも道徳的にも間違った戦争を続けざるを得ないことに絶望している」

 兵士や留守家族の抱える問題が深刻さを増す中で、自衛隊がイラクに派遣される。日本は一昨年十二月以来、インド洋に海上自衛隊を派遣している。しかし防衛庁によると、派遣実施前に七十二人の自衛官が「家族事情」を理由に配置換えを申し出、認められた。これは実質的な“出動忌避”を意味する。

■家族会議で進退決める自衛官も

 長崎県佐世保市出身で自衛隊の問題に詳しい社民党の今川正美衆院議員は「派遣予定の自衛官の中には、家族会議を開いて身の振り方を決める人もいるだろう。自衛官を辞めたいと思っても、今、転職するのは難しいことを考えれば、家族事情を理由にした実質的な出動忌避は、インド洋派遣のとき以上に増える可能性が高い」と自衛官の気持ちを代弁する。

 自衛隊派遣について、前出のレシンさんは「とても残念だ。本当に悪い決定だと思う。私たちは、自分たちの国の兵士の命を、他の国の兵士の命と取り換えたくはない」と繰り返した。その上で“戦場”の経験がほとんどない自衛隊員らに同情を寄せた。「ゲリラ戦がいつどこで起こるか分からない状態のイラクで、米兵でも苦戦し、精神的にも肉体的にも疲労困ぱいしているのに…」

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031018/mng_____tokuho__000.shtml

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