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ワシントンの郊外にある大きなシッピングセンターを歩いていると、普通の店と並んで米軍の案内所があるのでちょっとのぞいてみた。受付の親しみやすそうな女性が、陸海空軍に分かれた部屋に案内してくれるのである。明らかに英語の発音からしてもアメリカ人でない外人に積極的に「米軍へのすすめ」を説明してくれた。
これには少し当惑したが、こちらも米軍に興味があったのでとにかく少しだけ時間を割くことにした。あいまいながら5つのことを学んだ。
米軍は世界の平和を維持するために20万人規模で展開されており、イラクやアフガンにおいて勇敢に活躍している。(海外駐留米軍 東アジア10万、ヨーロッパ10万、90年には60万、冷戦終結後ドイツで大幅削減、現在のイラクの13万を入れると25万人規模、予備役・文民170万)、
米軍に入ると大学の奨学金制度を受けることができ将来のキャリアとして役立つ、
アメリカ人でなくても米軍に入るチャンスはあり、アメリカで働くために必要なグリーンカード等のことも考える、とのことであった。(これは確認する必要がありそう)。
心身共に鍛えられる、第5は、失業率の低下に貢献している。日本風にいえばフリーターの対策である。
これらの説明を受け、大学に行く資金もなくアメリカンドリームにあこがれる若者だったら、米軍に入るのも魅力的な選択かなーと思ったりもした。また、世界最強の米軍で最新兵器を使って世界の紛争問題に関わることで世界の英雄になることができるとの錯覚にとらわれた。トップガンの世界や、パイロットへの近道と色々なことが脳裏をよぎった。
毎日のようにイラクで米兵が殺されている。市街戦には米軍の最新兵器も機能せず、フセインが予告した通りのことが起こっており、ボディーブローが次第に効き始めてきたようだ。いくら強い国であっても戦争の悲惨さが浸透してくる。近年になかった米軍にとっての戦争のマイナス面が出てきている。
イラクに送られた米兵の何人かは、たまたま入ったショッピングセンターの米軍の案内所で米軍の光の部分だけ聞かされ犠牲になった若者もいただろう。テレビの映像に映し出される米兵は、正義の味方か、あるいはその逆に映るが、実際の米兵の多くは、身近にいる学生やごく一般的なショッピングセンターで見かける若者だと思うと、改めて戦争とはなんぞやと考えたくなる。
アインシュタインが唱えたように、軍事費が上昇する程、軍事パワーを使用したくなり戦争に発展するということが成り立つよに思う。東西の冷戦中は、米ソの抑止力が機能したが、冷戦に勝利し、米国一国の軍事費が世界の2−15位の総額を上回るという異常な状況においては、アインシュタインのアドバイスが当てはまるような気がする。アメリカと世界の平和のために米軍が存在していると考えられると同時に、アメリカの経済成長と雇用創出のため軍需産業が必要とも考えられる。
悪の枢軸や国際テロという危険因子が存在するから米軍の存在意義がある。北朝鮮がミサイルを発射するかもしれないから何兆円もかけてミサイル防衛システムが必要となる。このように考えると米国のタカ派の一部は、外交の良策や経済協力や文化交流を通じ信頼醸成を構築し、軍事的関与を低下させる考えを否定する傾向にあることがうなずける。
世界の紛争地域で生活した体験からいくと世界の警察官としての軍隊は不可欠だと考える。アメリカ一国が無理をして世界の警察官になろうとしたから、かえって世界が不安定になりつつあると思う。常に世界の紛争地域に展開できる20万人規模の国連軍・多国籍軍が存在することでアメリカの負担を軽減することとアメリカの単独主義に歯止めをかけることができると思われる。
アメリカの経済成長や雇用創出のために軍需産業が必要であるならば、ハイテクを駆使した軍需産業を宇宙産業に結びつけることや、開発援助のための平和部隊を大幅に増やすことで対処できないだろうか。アメリカの軍事費のすべてを教育、医療、環境分野への開発援助に充てれば、世界は遙かに安定するだろう。
こんな夢物語を考えるもショッピングセンターの米軍の案内が、仮に「米軍のすすめ」でなく「宇宙開発のすすめ」や「開発援助のすすめ」だったら、奨学金を得て、キャリアを築き夢は世界に翔るような思いになる。人類は軍事力というハードパワーで平和を勝ち取ることができないことを報復が報復を呼び起こす中東の問題から学ぶべきである。