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リチャード・マーフィー
元駐サウジアラビア米大使 元駐サウジアラビア米大使のリチャード・マーフィーは、イスラエルによる十月五日のシリア空爆は、イスラエルによる一連の攻撃の始まりにすぎないかもしれないと状況を憂慮しつつも、シリア側には、イスラエルと戦争をするつもりはないと分析する。国内テロに悩み、中東で核武装国が出現することを憂慮するイスラエルの今後の行動はどうなるのか。
以下は二〇〇三年十月九日に行われたインタビューの一部。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)
イスラエルのシリア攻撃
イスラエルは十月五日にダマスカスの北西部にあるテロリストの拠点と思われる訓練基地を空爆したが、これが中東の今後の事態に大きな影響を与えるのは間違いないようだ。第四次中東戦争から三十年を経て再開された今回のイスラエル・シリア戦争をアメリカは支持しているのか。
戦争が中断していたのは実際には二十一年間で、それ以前は、空でも陸でもイスラエルとシリアはレバノンで衝突していた。現在のダマスカスはすすんで戦争をしたいとは思っていない。八〇年代とは違って、ソビエトから武器の提供を受けているわけではなく、シリアは戦闘を遂行できるような軍事力を持っていない。しかし、シリアを攻撃して以降のイスラエル側のコメントは、今回の攻撃が一連の攻撃の始まりにすぎないことを示唆しており、私は厄介な事態になったと考えている。
シリアを標的とするイスラエルの攻撃はアラブ世界にどのように受け止められると思うか。イスラエル市民を意識した政治ショー、シリアを恫喝するための力と決意の表明、イスラエル側の苛立ちの高まりなど、アラブ側はどうみなすだろうか。
アラブ世界のメディアは、今回の攻撃のことを、イスラエルの国内向けの政治的示威行為であるとともに、シリアに対する恫喝策だとみなしている。ブッシュ大統領の反対ゆえに、パレスチナのアラファト議長を排除できずにいることに対するシャロン首相の苛立ちの現れともみられている。
ブッシュ政権はイスラエルの行動を支持しているようだ。シリアにさらなる制裁をとることを求める米議会の要請も支持した。何がこうした判断の指針とされているのか。
アメリカの歴代政権はシリアの行動には常々頭を悩まされてきた。シリアは、軍事的禁制品をイラクに横流してきた。今回のイラク戦争前もそうだったし、戦争中も武器を提供していたとする報道もある。これがワシントンの怒りを買っている。
また、パウエル国務長官は昨年二度、そして今年の春にもシリアを訪問し、「国内のパレスチナ過激派を追い出し、レバノンの武装組織ヒズボラを管理下におくように」と要請している(訳注 レバノンには約三万人のシリア軍が国内に駐留しており、外交・内政すべての分野においてシリアの影響力が大きい。国連平和維持軍も駐留している)。ワシントンはかねてよりヒズボラが作り出す問題が、レバノンとイスラエル間の国境紛争を誘発するのではないかと憂慮していた。シリアは、ダマスカスのパレスチナ人「広報事務所」を閉鎖したと伝えられるが、イスラム聖戦のラマダン・シャラのような指導者はいまもシリアにいる。アラブの民衆は、イスラエルのシリアに対する防衛的措置をブッシュ大統領が支持する姿勢をみせたことをもって、アメリカはイスラエルの空爆を認めたと解釈している。
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イスラエルの今後の行動は
イスラエルの空爆は、イラクの大量破壊兵器(WMD)がシリアへと移されているかもしれないことと関係があるのか。そうだとすれば、イスラエルの次の標的は、WMDを開発しているイランなのだろうか。
イラクがシリアにWMDを移動させたという情報を私は得ていない。イラク戦争当時、イスラエルがそうした声明を発表していたのは事実だ。だが私が知る限り、ワシントンはそうしたイスラエルの主張を支持していない。私は、最近のイスラエルのシリア攻撃は、パレスチナの過激派やヒズボラなどを支援し続ければどうなるか、警告を与えようとしたのだと思う。イスラエル、そしてアメリカもイランを攻撃するとは私は思わない。イラクでやり残している任務が非常に大きいからだ。
イスラエルの政策に不満を感じている人は次のように感じている。シリアを攻撃してもそれを追認するのなら、ブッシュ政権は一体イスラエルがどのような行動をとれば、批判し、外交的報復策をとるのだろうか、と。
現在の状況からみて、アメリカがイスラエルに外交的報復策をとるとすれば、イスラエルがアラファトを殺害するか、他の地域へ追放処分とした場合だけだろう。
ブッシュ政権の高官たちは、アメリカのイラクへの路線同様に、イスラエルもシリアを攻撃し、占領する権利を持っていると考えているのだろうか。
イスラエルのシリア攻撃に関する十月六日の声明から判断する限り、大統領は、「危機をエスカレートさせない限り、イスラエルが自衛のために必要と判断するすべての措置を認める」と表明している。私は、イスラエルの指導者たちが、「危機をエスカレートさせない限り」という部分を無視するのではないかと懸念している。
イスラエルが核兵器を使用する可能性はあるだろうか。イランが核武装し、イスラエルがこれを切実な脅威ととらえれば、そのような選択肢も考えるかもしれない。アメリカは状況を管理できるだろうか。
そのような事態は、アメリカの政策決定者にとっての最悪のシナリオ、悪夢である。イラン、その他の国の核攻撃の脅威にさらされているとイスラエルが判断すれば、もはやアメリカが状況を管理するのは不可能だろう。だからこそ、アメリカはイランの核開発計画をなんとしてでも阻止しようとしている。
だが奇妙なことに、アメリカは、中東に非核地域を設けることには関心がないようだ。危機にさらされているものの大きさを考えれば、非核地域という概念を中東にも適用すべきだと思う。困ったことに、アメリカの政治家たちは、非核化構想にはイスラエルの大きな反発が予想されるという理由から、この問題を避けていることだ。・・・
http://www.foreignaffairsj.co.jp/source/CFR-Interview/murphy.htm