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(回答先: マスコミは自衛隊のイラク派遣を責任持って報じて欲しい。(10月28日)[軍事ジャーナリスト神浦氏] 【一部マスコミは自衛隊の死を期待?】 投稿者 なるほど 日時 2003 年 10 月 28 日 12:42:39)
戦争に加担するということ
高成田 享
タカナリタ・トオル
経済部記者、ワシントン特派員、アメリカ総局長などを経て、論説委員。
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イラク戦争を始めた米国と英国の議会やメディアは、いま、その根拠となった大量破壊兵器の情報が正しかったのかどうかについて、政府の判断を厳しく追及している。
大学院生の論文を借用して、「45分以内に使用される状態」と報告した英ブレア政権、ニジェールからイラクに核物質が運ばれようとしたという根拠の薄い情報を大統領の一般教書に盛り込んだブッシュ政権。どちらにとっても、この事件は、政治的な失策というよりも、政治的なスキャンダルとして論議されている。
いい加減な情報に基づいて戦争が始められたという事実だけでなく、連日のように、米英の兵士が襲われ、殺される、というなかで、イラク国民の解放という戦争の最終的な正当性も揺らぎ始めたことが、あらためて、なぜ戦争をはじめたのかの論議を盛んにしている。
与野党間の政争とか、それを大きく取り上げたいというメディア事情もあるだろうが、国民の代表である議員として、国民の知る権利を代行するメディアとして、兵士を戦場に出すことの責任、あるいは戦争を始めることの責任をそれなりに重く考えているということだろう。こうした議論の真剣さは、民主主義のあり方にかかわっているともいえる。
日本では、16日未明に、イラク復興支援特別措置法が自民、公明、保守新の賛成多数で可決・成立した。この法律の名前は、「復興支援」となっていて、その目的も「イラクの国家再建を通じて国際社会の平和と安全の確保に資する」となっている。しかし、小泉首相も、自民党の議員も、公明党の議員も、この法律の使われ方がイラクの「戦後復興」ではなく、戦闘継続中の米軍への「支援」であることを知っている。
それでも、この法律が成立することに、この国の民主主義の質的な弱さを感じてしまう。国会の論議でも、戦争の主目的であった大量破壊兵器が見つからないことについて、小泉首相は「フセインが見つからないからといって、フセインが存在しなかったと言うのと同じ」という論法を繰り返した。
戦争を始めたり、それに加担するという重大な決定の根拠を立証するのは、始めたり加担する側の責任であって、それも示さずに、法的な手続きが進むところに民主主義はない。あいまいな根拠で戦争に入っていくありさまは、かつて、「満州事変」や「日華事変」(日中戦争)という名前で、満州や中国への侵略を進めた日本のありようを想起させてしまう。
こう言うと、以下のような反論が出てくるに違いない。
日本は日米同盟を基軸にするという安保戦略を選択した。米軍の行動に協力するのは同盟国として当然のことだ。復興支援や後方支援といっても、不測の事態が起こるのは当然で、だからこそ武器を携帯する自衛隊を派遣するのだ。日本の正しい行動にケチを付けるのは反日だ。
「反日」の非難については、全体に認めることはできない。自分の意見と異なる相手を「反日」と非難するのは、戦前に、少しでも軍国日本に否定的な発言をしたり、行動をしたりすると、「非国民」というレッテルを貼ったのとまったく同じ発想であり、議論にもならないからだ。それを除けば、上記のような意見があるのは当然だと思う。
しかし、日本がすべての米国の戦争に協力する必要はないし、義務もない。今回のような正当性が乏しい戦争(あるいは首相が正当性を立証できない戦争)には、協力しないという選択もなければ、日本とは米国との関係は対等ではなく、従属関係になってしまう。
また、自衛隊が米軍と共同の軍事・戦闘行動をとることは、少なくとも現段階で、日本の政策として選択されていないのに、今回の自衛隊派遣は、なし崩し的に、それを認めることにつながる。明確な政策的選択がないままに、気が付けば政策は変わっていた、というやり方は、とくに国の根幹を揺るがす安全保障政策でとるべきではないと思う。
もう一度、繰り返すと、今回のイラク戦争は、戦争そのものに疑義がある。その戦争が実際にはまだ終わっていないのに、「戦後復興」のような顔をして、実態は占領軍である米軍の支援をすることは、法律の趣旨にも反する。そんなことは百も承知でだが、「米国に逆らうのはよくない」という心情で、現実にはそぐわない法律を通すことは、民主主義とはいえないし、健全な日米関係ともいえない。
この法律の成立過程を思い返すと、この国を憂う気落ちが強くなり、自分のなかの愛国主義が高まっていく。
http://www.asahi.com/column/aic/Mon/d_drag/20030728.html